久留米市野中町の肝臓内科・血管内科・消化器内科・乳腺内科です。電話:0942-33-5006
現在の医療現場では、「悪玉のLDLが高いから」「L/H比が2.2以上だから」とか・・そんな理由で、多くの担当医が、コレステロールを下げるスタチン剤の服用を勧めています。
でも、それは正しいのでしょうか?
当院受診時に、LDLが200程度以上であり、RAP食を守れた症例を中心に検討しました。
今回は、事実関係にスポットを当てて、「講演会での情報などを元にスタチン剤を処方しているが、その後の臨床経過において、何か腑に落ちない・・」などという感じをお持ちの先生が、きっとおられるはずです。そんな時・・「医療を見つめなおす一助」になればという思いもあり、症例提示させていただきます。
「今回の症例呈示に関連して、開示すべき「利益相反」関係にある企業はありません」
<症例1. 55歳 女性>
図1
<症例の要約>
<治療>:RAP 食指導+α:『エパデールS(900)2,2x & ラックビー微粒N,2g,2x 、当院推奨トコロテン260g/d(130gx2/d) ,ブルガリア脂肪0ヨーグルト80g/d (5月以降は50g/d)』開始。
<結果>:表1に記載。
表1
RAP食 +α |
日付 | LDL | TG | HDL | L/H比 | 左頸動脈分岐部 プラーク(mm) |
右鎖骨下動脈 プラーク(mm) |
ビフォー | 2020年1月 | 229 | 75 | 65 | 3.8 | 1.78(図1上左) | 2.61(図1下左) |
アフター | 2020年7月 | 217 | 109 | 42 | 5.2 | 1.28(図1上右) | 2.36(図1下右) |
RAP 食以前の食習慣の特徴:
コメント):
本人の兄は内科・脳神経外科専門の開業医です。再診時に、当院受診直後のお兄様の感想をお尋ねしたら 「コレステロールを下げる薬を飲まないなんて・・・と、“けちょんけちょん”に叱られた・・」・・・そうです。多分・・私に対しても・・“けちょんけちょん”に思われたのでしょう。現代医学の常識に従っていないのですから、無理もありません。
<症例2. 53歳 女性>
図2
<症例の要約>
<治療>:RAP 食指導+α:『EPA製剤(900)2,2x & ラックビー微粒N,2g,2x 、推奨トコロテン130g/d ,ブルガリア脂肪0ヨーグルト60g/d』開始。
<結果>:表2に記載。
表2
RAP食 +α |
日付 | LDL | TG | HDL | L/H比 | 右鎖骨下動脈 プラーク(mm) |
腹部大動脈 プラーク(mm) |
ビフォー | 2019年12月 | 206 | 129 | 66 | 3.1 | 3.52(図2上左) | 2.23(図2下左) |
アフター | 2020年5月 | 178 | 112 | 46 | 3.9 | 2.91(図2上右) | 2.08(図2下右) |
RAP 食以前の食習慣の特徴:
コメント):
<症例3. 59歳 男性>
図3
<症例の要約>
<治療>:RAP 食指導+α:『エパデールS(900)2,2x & ラックビー微粒N,2g,2x 、トコロテン400g/d ,ブ脂肪0ヨーグルト100g/d』開始。
<結果>:表3に記載。
表3
RAP食 +α |
日付 | LDL | TG | HDL | L/H比 | 腹部大動脈 プラーク(mm) |
左頸動脈分岐部 プラーク(mm) |
ビフォー | 2019年7月 | 253 | 177 | 54 | 4.7 | 2.65(図3上左) | 2.75(図3下左) |
アフター | 2019年12月 | 190 | 89 | 56 | 3.8 | 2.45(図3上右) | 2.59(図3下右) |
RAP 食以前の食習慣の特徴:
コメント):
<症例4. 60歳 男性>
図4
<症例の要約>
<結果>:表4に記載。
表4
RAP食 +α |
日付 | LDL | TG | HDL | L/H比 | 右鎖骨下動脈 プラーク(mm) |
左大腿動脈 プラーク(mm) |
ビフォー | 2018年11月 | 211 | 88 | 76 | 2.8 | 2.70(図4上左) | 2.30(図4下左) |
アフター | 2020年6月 | 205 | 79 | 63 | 3.3 | 1.95(図4上右) | 1.79(図4下右) |
RAP 食以前の食習慣の特徴:
コメント):
<症例5. 62歳 女性>
図5
<症例の要約>
父:45歳時に狭心症、脊柱管狭窄症あるも90歳で健在。
母:81歳で認知症・・86歳:健在
<治療>:RAP 食+:『エパデールS(900)2,2x & ラックビー微粒N,2g,2x 』で治療開始。クレストール:中止。
<結果>:図5&表に記載。
<結果>:図5&表に記載。
表5
RAP食 +α |
日付 | LDL | TG | HDL | L/H比 | 右内頸動脈 プラーク(mm) |
ビフォー | 2016年11月 | 155 | 100 | 72 | 2.2 | 1.71(図5上) |
アフター | 2017年5月 | 202 | 138 | 67 | 3.0 | 1.42(図5中) |
2017年11月 | 209 | 86 | 72 | |||
アフター | 2018年11月 | 170 | 131 | 65 | 2.6 | 0.62(図5下) |
注)2016年6月のLDLは、クレストールを止めて8日目の採血。LDLが低いのは,クレストールの影響が残っているため。
RAP 食以前の食習慣の特徴:
コメント):
<おわりに>:
スタチン剤(コレステロール低下薬)に関して、
脂質栄養学会のホームページや今回のケースをご覧いただくと、お判りかと思いますが、
健診データで、「LDLが高いから」と、どんなに脅されても・・・すぐに承諾してはいけません。
“食事で頑張ってみます”と、お願いしましょう。
さらに担当医は・・「食事でLDLは下がりませんよ・・」とおっしゃるでしょう。
そんな時は、
「“薬”にあまり頼りたくないので・・」とか、
「“薬”にあまり頼りたくないので・・“(原料が食品)EPA製剤”なら飲んでもいいかな・・」と返答ください。
(頸動脈エコーでプラークを指摘されていれば、EPA製剤が必要な場合も多いです)
この返答で、担当医の心理は・・「こだわりを持つ患者さんに、薬を無理に勧めると、次回から他の所へ受診なさるかも・・」という思いへ傾き、患者様の意向を尊重してくれます。
つまり、
スタチン剤とは・・その程度の薬なのですが(脂質栄養学会の意見を参照)、依然として、多くの臨床の先生がスタチン剤を“神聖な薬”かのような推奨をされています。
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“好きなものを食べ、好きなものを飲みたい” それが望みの方は、薬でLDLを下げてくださる担当医のお考えを信じて・・楽しくお過ごし下さい。
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{ これらの症例が不思議に思われる方は、さらなる情報を閲覧ください。 }
1)プラークとは、何ですか?
(動脈硬化の未来塾 31))
2)スタチン剤を飲まないで・・本当に治るの? LDL が200以上でも大丈夫?
(動脈硬化の未来塾 52))、(動脈硬化の未来塾 68))、
(動脈硬化の未来塾 75))、(動脈硬化の未来塾 1))、
(動脈硬化の未来塾 103))、(動脈硬化の未来塾 33))
3)動脈の石灰化は治らないと聞きますが、治るのですか?
(動脈硬化の未来塾 11))、(動脈硬化の未来塾 82))
4)青魚の油は健康にいいと、聞きますが、間違いですか? 白身魚は?
(動脈硬化の未来塾 86))、(動脈硬化の未来塾 90))、
(動脈硬化の未来塾 94))、(動脈硬化の未来塾 53))、
(動脈硬化の未来塾 45)
5)オリーブ油やエゴマ油などの植物油は、健康にいいと聞きましたが、間違いですか?
(動脈硬化の未来塾 54))、(動脈硬化の未来塾 48))、
(動脈硬化の未来塾 63))、(動脈硬化の未来塾 66))、
(動脈硬化の未来塾 76))、(動脈硬化の未来塾 78))
6)大豆食品は健康にいいと聞きますが、間違いですか?
(動脈硬化の未来塾 87))、(血管エコー実例・研究 29))
7)脂肪0の牛乳由来のヨーグルトは、多く食べても問題なさそうですが、間違いですか?
(血管エコー実例・研究 29))
8)マクロファージの貪食能を高めると思われる食品は?
(血管エコー実例・研究 29))
9)腎機能が悪くなる原因は? RAP 食で腎機能は改善しますか?
(動脈硬化の未来塾 36))、(動脈硬化の未来塾 34))
10)チョコ・ナッツ・アボカドなどは、動脈硬化を防ぐ食べ物ですか?
(動脈硬化の未来塾 88))、(動脈硬化の未来塾 95))
(つぶやき)
2020年7月23日のテレビで、感染症の歴史の物語の放映がありました。
初めて知る医学の悲しい歴史でした。
感染制御の父:“イグナッツ・ゼンメルワイス(1818―1865)” の偉業に関する内容でした。
「手洗いと消毒で、産褥熱で死亡する妊婦を劇的に減らせた功績(緻密な観察と統計学で実証)」を挙げたにも関わらず、当時の医学界の権威により否定され・・当時の人々からも賞賛されませんでした。医学の正しい発展が遅れたのは、いうまでもありません。
顕微鏡が発明され(1550)、細菌の存在を人類が知り(1683)、顕微鏡が高性能になり、コッホが結核菌を発見(1882)・コレラ菌を発見(1883)するまで、感染症の原因は“瘴気”が原因とされていたのです。
その後、コッホの元で研究した北里柴三郎がペスト菌を発見(1894)しました。志賀 潔が赤痢菌を発見(1897)するなどしています。
さて、
現在の医学界では、動脈硬化(プラーク)の原因が、まだ“LDL”と信じられています。
血管エコーでプラークを緻密に観察していれば、LDLが原因ではないことは明白なのですが・・。
「コッホの3原則」的な論理性で考えれば
もしLDLがプラークの原因であれば、
もし、食習慣による過剰な脂質摂取がプラーク(動脈硬化)の原因の一つと考えるならば、
もし、マクロファージの貪食能・脂肪分解能が、プラーク改善に関係していると考えるならば、
2020年7月28日記載
真島消化器クリニック
真島康雄