脳梗塞・心筋梗塞の予防法

頸動脈のプラーク治療に、LDLを下げるスタチン剤の必要はありません。

今まで、LDLが高いまま(LDLを下げない)でも、プラークが改善することや、体重が肥満ぎみのままでも(体重が増加しても)プラークが改善することを実例で証明し、サイトに掲載してきました。

今回はスタチン剤を中止し、LDL値を高くしたのに、プラークと症状が改善した症例を呈示します。

あいにくこのケースは、頸動脈にプラークがなく(IMT=1.0mm)、大腿動脈と右鎖骨下動脈のプラークを改善できました。頸動脈のプラーク例でも同様と思われます。

臨床経過

1)2002年2月頃から、初診時まで・・・1/月・の頭痛有り。

2)2008年8月頃から、コレステロール高値でクレストール(2.5)1錠開始。
同時に痛風の痛みで痛風薬開始。

3)2010年10月に、頭痛で頭部のMRI検査施行・・結果:異常なし。

4)2012年3月採血LDL=109TG=107HDL=53(クレストール中)

5)2012年6月当院初診
左大腿動脈プラーク=2.0mm右鎖骨下動脈プラーク=1.8mm

症状:肩こり+++(ビールビンで叩いたりしていた)1/月の頭痛
朝のふらつき+(たまに)、いびき++。LDL=97と低値。
本人希望もあり:クレストール中止し、エパデールS(900)2.2x-開始
具体的に食事指導(サイト参照)するも、塩分制限(減塩)はしないで、主食の炭水化物(ご飯)も制限しませんでした。

6)2012年12月
左大腿動脈プラーク=1.9mm右鎖骨下動脈プラーク=1.6mm・・改善傾向+
LDL=159と上昇

症状改善:肩こり:消失頭痛なし朝のふらつき:消失。

7)2013年7月
左大腿動脈プラーク=1.8mm右鎖骨下動脈プラーク=1.5mm・・改善
LDL=153 ---上昇持続

症状

いびき改善、肩こり(-)頭痛(-)朝のふらつき(-)諸症状消失中。
痛風薬終了。現在:食事療法継続でエパデールS(900)2.2x-のみ服用中

結果

1)スタチン剤を止めてプラークが改善した。

考察

1) 症状の経過と、プラークの改善から、当院初診時までの4年間も服用したクレストールは動脈硬化に何ら効果がなかった事になります。

2) エパデールS(900)2.2xの開始はプラーク改善にプラスに作用したと考えられます。

3) プラーク改善に最も寄与したのは食習慣(食生活)の変更ですが、そのように患者さんが意識改革できたのは、血管エコーでプラークの動画をリアルに見ていただいたからです。

4) [LDLが低下するとプラークが減少すると・・](LDL神話)と、一般に思い込ませている医療側の罪は大きい。つまり、揚げ物大好きでも、肉大好きでも、お菓子・ケーキ大好きでも、お酒大好きでも、その好きなものを多く飲食してもLDLの値は上昇しませんし(参照1)、スタチン剤を服用することでLDL値は下がり、安心して好きなものを多食・多飲することになり、かえってプラークが悪化する結果になる。

5) 当院では2013年7月の時点で260名のプラーク改善例を経験していますが、スタチン剤の使用がプラークの治療に貢献した例は皆無に等しいのです
むしろ、スタチン剤の使用を全面的に止めて(中止して)、プラーク改善例が増加した感があります。今回の症例はその極一部なのです。

6) 心血管イベントを経験していない人は、本人も担当医も食生活にそれ程気を使っていないのが日本の医療現場の実状です。

そこで、食生活にはあまりこだわっていない冠動脈疾患の1次予防をめざしたJART試験(Circ J .2012;76:221-9)を紹介します。
これは、日本人患者群を対象にして、強化療法群(ロスバスタチン:商品名クレストール5mg/日)と標準療法群(プラバスタチン:商品名メバロチン10mg/日)の動脈硬化進展に関する影響を頸動脈の内膜中膜肥厚(IMT)で2年間観察するという内容です。

JART試験の結果

強化療法群では1年間もクレストールを飲んでいるのにIMTがプラス1.91±10.9%進展。一方、メバロチン群はプラス5.8±12.0%IMTが進展した。

要するに、強力にLDLを下げられるスタチン製剤を服用しても、プラークを退縮(改善・治療)させることは出来ないわけで、このためかこの試験は1年で中止された。実際には両群の違いが明確になったので・・とのことです。

しかし、薬の費用対効果を考えれば、副作用も少なからず存在するスタチン製剤は当院では必要のないお薬です。

前述の「LDL神話」に関しては、日本脂質栄養学会のホームページ(日本動脈硬化学会への公開質問状)をご覧いただければ納得いただける筈です。

動脈硬化改善=プラークを退縮(改善・減少)させるための、まず一歩は頸動脈エコーなどの血管エコーで、動脈の脂汚れ(プラーク)を検査していただく事ですが、

本例のごとく動脈硬化が進行しても頸動脈にプラークが存在しない例も多くみられますので、心配な方は当院オリジナルの8ヶ所の血管エコーをお受け下さい。

(追記)2015/3/8

追加症例1

症例の説明

69歳の男性:初診時:血管エコー
A-max=3.6mm S-max=3.8mm F-max=2.2mm C-max=1.8mm
( 脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=4 (0〜4までのリスクで最高レベル )
0〜4までのリスクで最高レベル 頸動脈プラーク指摘+されて、
クレストール(2.5)1T,1x-のみ開始になる

治療法

クレストール中止して、エパデールS(900)2,2xに変更し、食習慣改善指導を行う。

結果

LDLは90以上に上昇するも、プラークは順調に改善中。

考察

プラーク改善の為には、食習慣を論じることなく「LDLを70以下に下げるべき」との論説があり、それを信じたDr(当時は私も信じました)による治療で・・クレストールが処方されたと思われますが、今日のプラーク観察の研究からは、その説は全く信じがたい論説と言わざるをえません。

追加症例2

症例の説明

57歳の女性:初診時:血管エコー
A-max=2.02mm S-max=1.17mm F-max=2.02mm C-max=1.37mm
( 脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=2 (0〜4までのリスクで中等度レベル )

10年前から・・直径4mmの脳動脈瘤があり・・サイズは現在も不変とのこと。

念のためにエパデールSなどのEPAは血液サラサラ効果があるので使用を控えて、食事療法と乳酸菌製剤のラックビー微粒N:2.0、2xで経過をフォローしました。(ラックビー微粒、ビオフェルミンは整腸剤として薬局で店頭購入出来ますが、錠剤ではなく・・細粒や微粒をお求めください)

治療結果

LDLは200以上に上昇しましたが・・プラークは明らかに改善中です。大腿動脈の直径も小さくなり・・つまり・・脳動脈瘤の場所のプラークが改善すれば・・当然ですが・・・脳動脈瘤の直径の縮小も望めます。

考察

初診時のプラークの密度からは、現在進行形でプラークが堆積中であることがうかがえます。・・今までの6年間のクレストール服用による治療は・・何だったのでしょうか?・・臨床現場では・・食医としての役割を再認識していただき・・このサイトに登場された・・患者さん方の貴重な体験を・・決して無駄にしないでいただきたいと願います。

体質により、LDL高値例、TG高値例もおられます。本例のように・・当院お勧めの食事療法を・・キチンと真面目に守れれば・・LDLが200以上でも・・TGが200以上でもプラークの改善は約束されるでしょう。

EPA製剤が飲めない体質の方でも、努力すれば報われますのでご安心ください。

LDLと動脈硬化の関係の復習です

LDLと血管プラークの肥厚とは、ほとんど関係がないことを多数例で証明しています(参照2)

また、LDL高値のままでもプラークが改善する多くの症例を「プラーク改善の写真集」(参照3)の中で既に掲載済みです。

LDL高値はプラークを溜める食習慣(動脈硬化を来す悪い飲・食習慣)の"ほんの一部の結果"であって、動脈硬化の原因ではありません。動脈硬化の原因は悪い飲・食習慣なのです。

その悪い飲・食習慣をしてもLDLは正常あるいは正常値以下で、動脈硬化がかなり進んでいる(脳梗塞・心筋梗塞になる)事が多い(60〜70%)のも、周知の事実です。

スタチン剤はむしろ中止して・・食事療法に専念した方が治療医学的に・・予防医学的にも・・・国益にとっても得策です。

スタチン剤は止めていただき、改善するのを信じて真面目に飲・食習慣改善に努めましょう。

47歳で冠動脈ステント1本入れて退院した人の「医療費請求書明細」を拝見すると・・なんと440万円でした。・・もし再狭窄で再入院治療したら・・納税者としては冷や汗が出ます。 脳梗塞なら・・リハビリを含めると・・もっとお金がかかります・・再発されたら大変です。

8カ所の血管プラークの程度を正しく判定していただければベストですが・・現状でさえも・・

1人1人が・・スタチン剤を飲まないで食養生すれば・・その浮いた薬代で・・少なくとも・・毎年・・温泉旅行ができるのです。1年に一度くらいは悪い食べ物を食べても構わないでしょう。しかも、子供や孫の足を引っ張らなくて済みます。

ただし、当院へ受診される方々で・・クレストール(ロスパスタチン・・)、リピトール(アトルバスタチン・・)、リバロ(ピタバスタチン)、リポバス(シンバスタチン)、ローコール(フルバスタチン・・)、メバロチン(ブラバスタチン・・)・・
などのスタチン系薬剤を服用されておられる方で、血管プラークが危険レベルに堆積している場合が多々あります(追加症例1のごとくです)ので、そのような場合も考慮して・・・単にスタチン剤を止めていただくのではなく、エパデールSなどのEPA製剤への変更が望ましいのです。主治医へ熱意を持って・・ご相談ください。

また、すでにバイアスピリンまたはプラビックス(クロピドグレル)、パナルジン(チクロピジン)、プレタール(シロスタゾール)などの血液サラサラ薬を服用中であれば、EPAによる血液サラサラ効果は少量で済みますので、スタチン剤をロトリガ(2g)1P(EPA900mg+DHA900mg)への変更も選択肢になります。主治医にご相談ください。

スタチン剤にEPAを併用するとイベントを抑制するとの研究があるのですが、スタチン剤がEPAの効果を増幅するなどとは・・プラーク観察の経緯から・・思えません。

EPA単独でも、そのサラサラ効果だけで・・イベントは抑制されるに違いありませんし、スタチン剤より私の食事療法が遙かに効果的である事は今までの症例で充分にお判りいただけると思います。食医になればスタチン剤は全く不要と言っても過言ではありません。

研修医や一般臨床医の方々に是非とも知っていただきたい新たな事実があります・・まさか今まで教わった・・「世界共通の学問であるはずの・・動脈硬化の病態の基礎知識の部分」・・そこに・・学問としての致命的な欠陥が存在するとは・・・「血管プラークを観察することなく・・LDLを薬で下げれば動脈硬化進展の回避が出来る・・等々・・医学の間違いの数々」--(参照4)をご覧下さい。

私も2009年までは、講演会・論文や学会に強く影響されて・・LDL高値の多くの方々にスタチン剤を処方していました。ただLDLが下がって喜んだだけで・・プラークの改善には寄与していないことを・・食とプラークの研究過程で悟りました。

孔子の論語から・・・「過則勿憚改」
過(あやま)てば則(すなわ)ち改(あらた)むるに憚(はばか)ることなかれ

医療現場ではスタチン使用を改めていただき・・

薬(内科)より・・遙かに効果がある・・・食医に心がけましょう・・
古来中国では ・・・・食医・疾医(内科)・傷医(外科)・獣医の4種の医師に分類されて、最高位は食医とされているそうです。食医とは、皇帝が病気しないように食べ物を指導する・・・食事による予防医学の専門医とのことです。

中国古来では「薬食同源」 日本では「医食同源」
一般の方は若くても、高齢者でも飲・食習慣を改めましょう。 ただし、闇雲に改めても効果ありません。改めるなら・・(参照5)をご覧下さい。テレビでは、食品とプラークの関係には全く無頓着に放映されていますので・・その内容をそのまま信じてはいけません。
具体的な食品と血管プラークについて研究されているDrは、私の知る限り・・まだ日本にはおられないようです。

(追記)2015年7月1日

家族性高コレステロール血症(高LDL)でも心配無用。

LDL高値なのにRAP食のみでプラーク退縮!(以下の症例)

リバロを中止して・・LDL上昇したのに・・プラーク退縮例。(下症例)

・LDLが高値で即・・クレストールやリバロ、リピトールなどのスタチン剤を勧められて・・テレビで脅されて・・受診される方が多くいらっしゃいます。・・それはそれで・・LDL高値の方が助かることにつながりますが・・LDL低値でプラークが溜まっている方々は・・安心させられ・・突然の身に覚えのない不幸に見舞われることになります。

確かに・・プラークを低下させる私の「RAP食」を行うと多くの方のLDLが低下します・・が・・そのような方々のLDL高値の原因は・・悪い食習慣であって・・LDL高値は結果に過ぎません。

小手先で・・薬:スタチン剤で・・LDLを低下させても・・アルコール多飲や食習慣という本当の「原因」は決して改善することはないのですから・・プラークは決して改善する訳はありません・・つまり・・薬代金の無駄遣いなのです。

脳梗塞・心筋梗塞などの不幸の原因は・・アルコール多飲と食習慣であって・・それが原因で・・プラーク堆積=結果・・が生じ・・その結果・・血管の炎症=結果・・や・・高血圧=結果・・LDLやTGの上昇=結果・・などなどが起こるのです。

だから・・薬で血圧を下げたり・・・薬でLDLやTGを下げたり・・薬でA1cを下げたりしても・・なかなか脳梗塞・心筋梗塞などは防げないのです。

つまり・・プラークを減らせれば・・幸せになれるのです。

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