脳梗塞・心筋梗塞の予防法

魚の過食は動脈硬化を進行させるか? 血管プラークで見える真実

8年間でやっと見えてきた真実があります・・今まで魚大好きの人達が不思議にも・・プラークが沢山溜まっていたのに・・肉好きの食習慣の人が魚も好きなのだろう・・と・・勝手に思い込んでいました。

でも、プラークが改善しない理由を一つずつ解決しても・・どうしてもプラークが改善しなかったり・・悪化したりする人がいるという事実・・これは・・血管プラークを0.01mmの精度で測定しなければ気付けない真実でしたが・・

魚の過食を・・プラーク改善の悪い患者さん方に注意しだして4ヶ月・・いままで改善しなかった人達のプラークが・・明らかに改善しだしました。

個々の症例では確信しました・・酸化した魚の過食はプラークを悪化させる!

科学的な証明をしたくなりますね。

A:研究目的: 魚の過食は動脈硬化を進行させるか?

対象:最近の8年間で、8カ所の血管プラークを測定でき、かつ肉と魚についての食習慣アンケート」を行えた・・50歳以上の・・3069名の内・・肉食の影響を無視するために、肉を好きでも嫌いでもない人の・・907人を研究対象とした。

方法:魚の好みを、大好き、好き、普通、嫌い、に分類して、魚大好きの人は・・魚を過食していたと判断して集計した。それぞれの群のT-max,C-max,S-max,F-max,A-maxを測定し、食の好みと比較検討した。

**@:魚大好き群の平均年齢を、魚普通群の平均年齢に同じくして検討した。

結果:(上図)
1)魚大好き群は、魚普通群よりも、明らかに動脈硬化が進行していた。
2)魚大好き群は、魚好き群よりも、明らかに動脈硬化が進行していた。
3)魚好き群と魚普通群の動脈硬化の程度はほぼ同じであった。
4)魚大好き群は、魚普通群よりも、明らかに腹部大動脈プラークが進行していたが、その他の部位では明らかな差を認めなかった。

考察:
1)今回は、魚の好みでも・・刺身、煮魚、焼き魚の区別は出来ていない。

でも、個々の症例から焼き魚の影響が大きいように感じる。特に魚大好きの人達が好むのは・・脂の乗った魚や・・脂の乗った部分でした。

2)魚油もプラークと関係する! と認識したあとに・・・
東北のあるDrに教えていただいたのですが・・元東北大学教授 近藤正二先生(故人)の著書「日本の長寿村・短命村」の研究では・・・
*「畑を持たない北海道の漁村のように・・魚ばかり大食してきた人は・・40歳を過ぎると狭心症・心筋梗塞・心臓麻痺などの心臓の病で亡くなっているのです」・
*「伊豆半島の・・は鰹節の産地で・・鰹節にならない脂身の多い腹肉ばかり食べて、野菜をぜんぜん食べない。その結果、心臓が冒され、40歳、50歳で倒れる」
*「魚でも切り身を食べるところと、小魚を食べるところでは、小魚の方が長生きする」

これらの内容は先生の著書の中の・・ごく一部に過ぎませんが・・自分の足で情報を得て、それを読み解く力・・このような心筋梗塞の真の原因に迫る研究が埋もれて・・現代の医学教育に全く生かされていません。・・・近藤先生が実際に体験された内容を・・科学的に証明するには大規模な・・お金のかかる疫学調査が必要だったのでしょう・・・

そして、魚食が日本人の長寿の一つの秘訣と考えられていた・・当時・現在も・・だれもこの書籍にかかれている真実を・・私を含めて・・頭では・・理解できなかったに違いありません。

しかし・・血管プラークの T-max という・・実地の症例から得られた・・正確な計測に基づいた・・科学的な尺度を用いて・・近藤先生がおっしゃったことを・・疫学調査なしに・・科学的に証明できました。

近藤先生の言葉「物事は机上で考えて結論を出してはなりません。実地に、実例を集めてみなければ結論をだしてはいけない」

食習慣とプラークの総和:T-maxの立体データがあれば・・動脈硬化を来す・・あらゆる食品が・・本当に健康に貢献するかどうかの・・真実が浮かび上がります。

3)「古代人のミイラの動脈硬化調査(全身CTにて)の研究でも・・・・アリューシャン列島のミイラの動脈硬化率が一番高かった」(糖質制限食で脳梗塞・・のページの最後で紹介済み)という発表がありましたが、

・・・アリューシャン列島は北海道の漁村と同様の環境ですので、古代人のミイラのCT所見や、私の超音波装置を用いたプラークの研究は・・いずれも近藤先生の書籍の記述を支持する結果なのです・・・

穀物、野菜不足の食習慣で・・肉や魚肉に偏ると・・短命になる・・のです。

糖質制限食を・・健康のために・・良かれと・・なさっておられる方・・一度・・近藤正二先生の著書「日本の長寿村・短命村」をお読み下さい。

決して、「白ごはん」がいけないと述べられてますが、イモや麦、雑穀はいいと書かれてあり、それらは糖質なのです。
ただし、「白ごはん」を食べる人達は裕福または質素倹約家なので、高価な動物性蛋白質である肉や魚を多く食べられていないはず。「白ごはん」が悪くて、「イモや麦など雑穀」が良いと・・単純に解釈しないようにしましょう。

また、牛乳の記載など・・当時と食の事情が異なりますので・・真実を読み解くカンも必要です。アルコール多飲でもプラークが溜まっていない場合もありますので・・そのような場合は長寿になります。たばこを飲んでも長寿の方がおられるのと同じです。

更に調べると、2006年3月24日のthe British Medical Journal電子版に、魚油での健康神話の根拠が見つからないとする研究報告などもあります。・・

結論:
1)意識的・無意識に魚を食べ過ぎないこと・・特に・・脂の乗った魚。
(魚油も万能の良い油ではありません。悪い側面を証明できました)
2)魚を普通に・・または好んで食べる程度なら全く問題なし・

B:研究目的: 魚の過食でも野菜多食なら、長生き可能?

近藤先生の著書の一節「魚、肉を大食することが心臓疾患を引き起こす大きな原因となっているが、島の海女のように、たとえ魚を食べていても野菜多食の習慣があれば長生きは可能なのです」

・・この一節でプラークを集計したくなりました。

対象:50歳以上で、肉の好みは普通、魚の好みは大好き・・の人達の206人

方法: 野菜は好きですか?・・・・8年間における実地のプラーク測定と細かなアンケートによるデータを集計。

下図が結果ですが・・・集計途中で・・鳥肌が立ってきました・・恐ろしいまでに・・野菜(含む海藻)の影響が大きい!!・・・想像以上でした。

結果:
1)魚大好きでも、野菜大好きな人のプラークは、野菜普通の人よりも、明らかにプラークの進行が遅い・・野菜の多食は・・明らかに動脈硬化の進行を遅くする・・改善させる可能性もある

2)魚大好きで、野菜の摂取が普通の人は、腹部大動脈にプラークが溜まりやすい・・・野菜不足で魚の過食では・・脳梗塞・心筋梗塞のみならず・・腹部大動脈瘤になりやすい

考察:
野菜がこれ程動脈硬化(血管プラーク)の進行を遅らせるとは、想像もしていませんでした。

腹部大動脈のプラークが多い場合は、男女共にアルコール多飲、甘い物多食を疑います。この場所は最も血流の流圧が血管内壁にかかる部位であり、内皮細胞が障害を受けやすい部位です。この部位での野菜多食の効果(プラーク堆積が極めて強く抑えられた)は、内皮細胞障害の修復または、内皮細胞障害を予防する働きが野菜の成分にあるとしか・・考えられません。

魚多食なのにプラークの堆積に違いがでるのは1)マクロファージのプラーク貪食能がアップする・・・2)内皮細胞間隙をすり抜けて血管壁に沈着する脂が減った・・のどちらかですから・・

野菜による、血管壁の抗炎症作用・内皮細胞障害修復作用などが強いのかもしれません。・・いずれ・・アルコール多飲者で野菜多食の影響を調べてみます・・

ただし、右鎖骨下動脈のプラーク改善にはあまり関与していないのが不思議です。

やはり、加熱調理した魚の過食を控え、野菜はたっぷり、毎日摂取すべきです。
ウーロン茶を水代わりに飲むくらいなら・・野菜ジュースをお勧め致します。

野菜ジュースを毎日飲むと・・多少の手足の黄ばみは出ますが・・健康には問題ありません。・

あとがき:

「長生き村になったのも、短命村になったのも、一番の決め手になる原因は、若いころから、長い間、何十年という間、毎日続けてきた食生活にあります。一言で言うならばそういう結論です。これは私自身、食生活は関係ないとは思いませんでしたが、まさか決め手になる原因とは、私自身も予想していませんでした」・・・・

これは、近藤先生の言葉ですが・・・血管プラークと食生活の研究をしている・・私の結論と全く同じです。

血管プラークと食習慣やアルコール摂取量を比較検討すると・・・動脈硬化と一部の癌発生の・・真の原因は・・若い頃からの「アルコール多飲と食習慣」であると断言できます。
(2015年7月6日掲載)

 

 

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