久留米市野中町の肝臓内科・血管内科・消化器内科・乳腺内科です。電話:0942-33-5006
最近でも、ダイエットや美肌にいいとかの・・甘い誘いに乗せられて・・高価なココナッツオイルを真面目に飲用・摂取している方が多いようです。
以前もココナッツオイル・オリーブ油・エゴマ油・亜麻仁油(アマニ油)などの植物油が動脈プラーク(動脈硬化そのもの)の進行に関与した記事(動脈硬化の未来塾 48))を掲載。さらにオリーブオイルの毎日摂取で動脈プラークが進行した証拠(動脈硬化の未来塾 54))、を人体にて確認してきました。
今回は、ココナッツオイルの毎日摂取が・・動脈硬化(動脈プラーク)を進行させたと思われる決定的な証拠を掲載致します。 (TIA:一過性脳虚血発作:一時的に意識が薄れる症状)
(2017年1月写真追加)
このような症例は9年間の4982例の8カ所の血管プラーク観察症例で・・極めて偶然に経験される症例です(問題の食品を摂取開始する前に8カ所の血管のプラークの経過を追跡できている症例で、1年以上も、その食品の摂取を放置・観察できる確率は極めて希)。
ある意味、医学の進歩に貢献されたこの患者様に感謝です。
(百聞は一見にしかず)
ココナッツオイルがもし医薬品なら・・副作用情報を厚生労働省へ届けねばなりません。 このケースでは因果関係が明白ですから・・・
48歳女性
現病歴:
(その後 2年間・・自覚症状も無く・・健康に過ごしていた・・・)
コメント:右頸動脈分岐部のプラークが2年間で急速に肥厚し、ココナッツオイルを中止後、プラークは3カ月で0.39mmも退縮した。
今回のプラークの急激な堆積はココナッツオイルの毎日摂取以外は考えられない。
考察:
<階段から転落したのはなぜ?>
食習慣の経過および動脈プラークの状況
1)2010年10月から2014年8月までは当院の食生活指導とEPA製剤にて大腿動脈のプラークは改善。
2)2010年以前から油炒め(週に1〜2回)には、サラダ油使用。2012年4月頃から油炒め(週に1〜2回)には、オリーブ油やゴマ油を使用して現在に至る。
3)2015年9月頃からはココナッツオイルの大さじ1杯を、毎日トーストに付けたり、コーヒーに入れたりして摂取。
4)階段から転落した2016年9月頃は時々残り物のEPA製剤を服用する程度。
5)夫も当院通院中でプラークは継続して改善中ですが、夫はココナッツオイルを嫌いなので摂取なし。週に1〜2回の家庭料理の油炒めに使用したオリーブ油やゴマ油はプラークの進行に関与していないことは明白。
6)上図の右頸動脈のプラークの経過をみれば2014年2月から2016年10月の間で・・摂取した食品が今回のプラーク肥厚の犯人である事は明白。
7)本人は現在まで、特別なサプリなどの服用歴もなし。
8)ココナッツオイル摂取を中止して3カ月で、プラークが0.39mmも退縮した。
以上から・・今回の急激な頸動脈プラークの肥厚はココナッツオイル以外に考えられず、急速にプラークが肥厚するような状況が脳動脈でも生じ、EPA製剤(抗血小板剤:血液サラサラ薬)の服用も疎かになっていた時期と重なり・・脳梗塞に直接移行しかねない一過性脳虚血発作(TIA)を発症したものと考えられます。
結論:
1)ココナッツオイルを・・6ヶ月以上・・毎日摂取している人は・・至急・・頸動脈エコーを受けるようにしましょう。<8カ所の血管エコーがベストですが>
2)オリーブオイル、エゴマ油、アマニ油、米油、ゴマ油、菜種油などの植物由来の油を毎日1年以上摂取(料理に添加を含む)している人も頸動脈エコーを受けましょう。・・LDL下がった・・LDL低い・・で、油断してはダメです。
でも、動脈硬化の診断は頸動脈エコーだけで安心してはいけません(動脈硬化の未来塾 44))。
事実、この方の右鎖骨下動脈や左頸動脈の観察部位には・・ココナッツオイルの残骸によるプラーク肥厚は全く認められませんでした。不思議です・・・・理由は未知の領域。
あとがき:
今回のことで・・食品をバランスよく食べることの重要性に気付かされました。それは、何も身体に必要な成分を・・(ビタミン、抗酸化物質、ミネラル、アミノ酸、蛋白質、糖質、コレステロール、他)・・・バランスよく・・という意味だけではなく・・もし、体に悪い成分(未知の成分)摂取でも・・偏ることなく・・バランスよく摂取していれば・・脳動脈や心臓:冠動脈のある1カ所にドサッとプラークが溜まらない可能性もあるかも・・と、考えた次第。
でも、体に悪い成分をバランスよく摂取したら、ある1カ所の動脈が狭窄して生じる脳梗塞や心筋梗塞というは先送りできるとしても・・脳動脈壁にまんべんなくプラークが溜まることになり・・むしろ・・認知症にはなりやすいかも。
教訓:巷の健康情報を試すのは・・三日坊主であるべし。
2016年11月1日記載
2017年1月14日追加修正