久留米市野中町の肝臓内科・血管内科・消化器内科・乳腺内科です。電話:0942-33-5006
現代医学の常識では、動脈硬化の原因はLDLであり、LDLを薬で下げることは脳・心血管イベントを予防するのに・・善いことだと信じられています。
でも、映像での証拠が極めて乏しいのですが、それは事実でしょうか?
昔の私も・・・戦時中の大本営発表的な動脈硬化の学説を信じていました。
しかし、現実には・・スタチンの内服で・・・動脈プラークが減ることはありません・・このことは・・スタチンを多くの患者さんに処方し、日頃診療に当たっておられるDrが自ら認めておられます。
今回、10年間もスタチンを服用し続けたにも関わらず、10年目に右頸動脈にプラーク2.3mmが出現した症例に遭遇しました。
薬の効果は全く無効、あるいは逆効果と判断してスタチンを中止。
それ以降、RAP食&EPA製剤などで加療したところ、7ヶ月でプラークが退縮し、4年4ヶ月後にはプラークが0.93 mmまで退縮した症例を経験したので報告します。
「今回の症例呈示に関連して、開示すべき「利益相反」関係にある企業はありません」
『症例提示』
症例 61歳 男性 (血管エコーで、プラーク急増悪を認めた時点:2017年9月)
症状:特になし
主訴:「薬でLDLを下げてたのに・・プラーク(動脈硬化)が進行」
現病歴:
1995年5月 当院初診
2007年9月下旬 LDL=194 TG=206 HDL=42 健診でLDL高値指摘あり
2007年11月中旬 スタチン薬であるリバロ(1)1T,1x開始(近医)となる。
2007年12月中旬 当院6カ所の初めての血管エコー 右頸動脈分岐部にプラークを認めず。
(左右の頸動脈max-IMT=<1.0mm、右鎖骨下動脈プラーク=1.4mm)
2010年2月中旬 当院8カ所の血管エコー 右頸動脈にプラークを認めず。
腹部大動脈IMT =1.0 mm(A-max)
右頸動脈分岐部〜内・外頸動脈IMT=0.7mm (図1)
左頸動脈分岐部〜内・外頸動脈IMT=0.9mm (C-max)
右総頸動脈IMT=0.4 mm 左総頸動脈IMT=0.4 mm
右大腿動脈IMT=0.8 mm
左大腿動脈IMT=1.2 mm(F-max)
治療薬:リバロ(1)1T,1x服用中---(近医)
2017年9月上旬 当院血管エコー 右頸動脈にmax-IMT=2.3mm プラークを認める。
右鎖骨下動脈IMT=0.89 mm
右頸動脈分岐部IMT=2.30 mm (図1)--7年間でプラーク高度堆積状態
左頸動脈分岐部IMT=0.52 mm
<プラーク治療開始>
1) リバロ(1)1T,1x 中止 (経過により、プラーク治療には逆効果と判断)
2) エパデールS(900)2,2x+ラックビー微粒N,2g,2x 開始
3) RAP食開始 血管エコー実例・研究--29)
<結果>
2018年4月中旬 当院血管エコー
右頸動脈分岐部IMT=1.94 mmプラーク退縮(図1)
2022年2月中旬 当院血管エコー
右頸動脈分岐部IMT=0.93 mmプラーク退縮(図1)
<考察>
図2に2017年に頸動脈プラークの進行(悪化)が確認されるまでの、コレステロール低下治療の結果を図示しました。
1)61歳の日本男子の頸動脈プラークの平均値は、書籍「脳梗塞・心筋梗塞・高血圧は油が原因」P161)によれば約1.7mm、同じく85歳の日本男子のプラークの平均が2.39mmです。
つまり、51歳から10年間も「動脈硬化の進行を阻止するために・・」との説明を受けて、スタチン剤(リバロ)を飲んでいながら・・現実は、10年間のスタチン服用で、血管汚れ年齢が85-61=24年も増したことになります。
これは、当院での研究結果では「スタチンを服用していた群のプラーク堆積が、スタチンを服用していなかった群よりも有意に多かった」 動脈硬化の未来塾-68)ので、納得できる結果です。
2)スタチン剤を中止することでプラーク退縮のスピードがアップすることは稀ではなく、多くの症例で経験されています。 動脈硬化の未来塾-129) 動脈硬化の未来塾-128) 動脈硬化の未来塾-125) 動脈硬化の未来塾-52)
また、スタチン剤を服用中に、LDLが70前後で経過しているのに・・急速にプラークが進行した症例 動脈硬化の未来塾-77) なども存在します。
3)IMT(プラークの厚さ)が2.0mm以上の場合でも、RAP食などによる治療によって、IMTを1.0mm以下に改善させる動脈硬化の未来塾-84) ことが稀ではないことを視覚的に証明できた意義は大きい。
4)そもそも、『LDLの値を基に生活習慣病の指導を行うことは非科学的である』ということは、動脈硬化の未来塾-122) で証明済みです。
つまり、8カ所の血管エコーで脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル(0〜4)が3以上であった275人の調査では、LDL が140以上の人は108名(39.3%)いましたが、LDLが140以下の人は158人(57.4%)もいたのです。
生活習慣病の健診を、セレモニーではなく、本気で行うなら、血管エコーをしなければ意味がありません。
いや、「国税を使ってのLDLによる健診」は、LDLが低い人への安心感を与え、「血管エコーを受けないでも・・正常だから・・安心・・」という、危険なメッセージを与えることになり、
「LDLが正常の方にとっては・・無意味どころか・・不利益になる指導」である可能性も否定できません。
5)本例は、2010年:頸動脈プラークが<1.0mmの時は診察室での血圧が118/64でしたが、2017年:プラークが2.3mmへと肥厚していた時点での血圧は136/96(図2)と・・血圧が130を超えていました・・。
つまり、血圧が130以上なら・・“胡麻麦茶”を飲んでも・・飲まなくても・・血管エコーを受けるべきです。 LDLが正常でもです。
<プラーク退縮過程の詳細>
<まとめ>
1)51歳から10年間も、時間とコストをかけてスタチン剤を真面目に服用し、LDLを下げていたのに、10年目には頸動脈プラークが同世代の頸動脈プラークの平均値を大きく上回るプラーク2.3mmで発見されました。
2)スタチン剤が無効あるいはプラーク肥厚を進行させた疑念の元に、スタチン剤を中止し、EPA製剤1800mg/d、ビフィズス菌製剤2g/d、RAP食で治療開始したところ、7ヶ月後にはプラークが1.94mmへと退縮、4年4ヶ月後にはプラークが0.93mm(正常レベル)までにプラークが退縮した。
3)LDLはスタチン中止後にプラークがかなり退縮した後も、150以上で推移していた。
つまり、スタチン中止後に、血管プラークの観察をせずに・・LDL 上昇を指摘して、患者さんの不安をつのらせるなどの説明は・・行われるべきではありません。
例え話となりますが・・もし裁判所が存在するなら・・警察の捜査では「LDL」が動脈硬化犯罪の容疑者として疑われていますが・・動脈硬化の未来塾-128)の1例だけでも「LDL」が犯人ではないと証明できます・・
つまり・・「LDL」が200以上に急上昇しても・・・逆に・・プラークは顕著に減少しています・・つまり・・「LDL」がプラーク増加の犯人ではないという・・完全なアリバイが成立します。
よって・・LDL は犯人ではありません。
「塩」が動脈硬化の犯人であるとする確たる証拠は存在しないということは、書籍「脳梗塞・心筋梗塞・高血圧は脂が原因」で既に弁論済です。動脈硬化の未来塾-8)
「塩」も・・「LDL」・・も、動脈硬化事件における冤罪被害者と言えるでしょう。
<つぶやき>
もし、映像・写真などがなければ・・このような事実も・・誰も信じようとしないでしょう・・国営放送しか見られない・・どこかの国の人たちと同様かと思われ・・不幸で・悲しいことだと思います。
血管エコーが普及すればですが・・必ず、いつの日か・・LDL犯人主義は・・崩壊します。
ただし、血管エコーが普及するには、国民が賢くなり、人間ドックや健診で・・「血管エコー検査」を希望しなくてはいけません・・が・・現在の・・LDL犯人主義の体制側からの・・そのような働きかけは・・おそらく今後も期待できません。 自分で行動しなければいけません。
体制側(脂質栄養学会以外の医学会)は・・国民の健康被害の・・動脈硬化の原因を・・LDL高値・高血圧や脂質異常症・糖尿病などに求めていますので、頸動脈プラークがあってもステントの必要がなければ薬でLDLを下げ、薬で血圧を下げ、薬で血糖を下げようという作戦が一般的です。
まだまだ、私の考えは反体制派扱いですので、動脈硬化関連ワードでのWeb検索では見つけにくい状態になった・・ままです。 この記事を読めた方は・・何かの縁で・・きっと幸運なのでしょう。
痛ましいバス事故・突然死なども、多くの場合は、未病の内に治せるチャンスはあるはずです。
「未病を治す」・・・2000年以上も前に・・中国の書物『黄帝内経素問』で唱えられた予防医学の真髄ですが・・・
2000年以上もの長い間・・・「未病を治す」・・・それは・・・「言うは易く・・行うは難し」・・・でした。
レオナルド・ダ・ビンチの言葉
『ちっぽけな確実さは大きな嘘に勝る。』
2022年3月28日記載
真島消化器クリニック
真島康雄