脳梗塞・心筋梗塞の予防法

難治のプラークが、2021年3月以降に急速に退縮し、RAP食の進化を物語る1例。

<はじめに>
RAP食は、試行と検証を繰り返し、より有効なRAP食へと進化を続けています。

2019年5月から2021年3月までの期間を、難治例としてフォローしていた症例で、最近の8ヶ月で急速にプラークが退縮した症例を経験しました。

今回は、その著効の理由が、「進化したRAP 食」による効果と考えられたので症例を供覧いたします

「今回の症例呈示に関連して、開示すべき「利益相反」関係にある企業はありません」

『症例提示』
症例 69歳 女性 主訴:一過性脳虚血発作
まず、図1で症例のサマリーを供覧いただきます。

本例においては、2〜3カ所のプラークを経時的に測定していますが、主な1カ所を提示しています(写真1〜2)。

<家族歴>
兄:59歳 心筋梗塞で他界
弟:61歳で他界(腹部大動脈瘤手術2回受けた後)
夫:夫67歳時、脊髄梗塞になるも 健在

<現病歴>
1985年3月頃  胸痛が時々あり、狭心症と診断。
2003年3月中旬 LDL=187 TG=101 HDL 56 血小板=22.3万
2013年2月中旬 “歩行でふらつき、思うように歩けない“”気分不良“にて救急搬送され、MRI&CT 撮影後にTIA(一過性脳虚血発作)と診断を受けた。
入院中に左頸動脈狭窄60〜70%の指摘を受ける。 
スタチン剤&抗血小板剤、降圧剤開始となる。心カテ勧められて、退院。
(4月中旬に心カテ受けて、冠動脈狭窄は軽度にてステント治療なし)
2013年3月中旬 LDL=85 TG=147 HDL 45

2013年4月初旬 当院初診   BMI=22.2(BW=56.8Kg)
現処方:
1)クレストール(5)1 /日,1x-(コレステロール低下剤:スタチン剤)
2)クロピドグレル(75)1/日,1x --(血液サラサラ薬)
3)バイアスピリン(100)1/日,1x --(血液サラサラ薬)
4)コニール(40)0.5T,1x--(血圧の薬)

当院からの追加薬:なし

食習慣点数=313点 
食の好み:揚げ物:普通、甘いもの:大好き、魚:普通、肉:好き、野菜:好き。

<8カ所の血管エコー>
腹部大動脈IMT =1.8 mm(A-max)
右鎖骨下動脈IMT =5.2 mm(縦断で)(S-max)
右鎖骨下動脈IMT =5.0 mm(横断で)(図1)(写真1)
右頸動脈分岐部〜内・外頸動脈IMT=2.2 mm(C-max)(40%狭窄)
左頸動脈分岐部〜内・外頸動脈IMT=2.0mm (約35%狭窄)
右総頸動脈IMT=1.0 mm 左総頸動脈IMT=0.8 mm
右大腿動脈IMT=2.3 mm(F-max)
左大腿動脈IMT=2.2 mm
******脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=4(0〜4)****** T-max=11.5 mm

<治療>

  • 当時のRAP 食で指導
  • 追加の薬なし。 
  • 本人ご希望で、かかりつけDrへの8カ所のエコー所見の報告や、スタチン剤中止のお願いなど、診療情報提供書での報告は控える。

その後の服薬等に関する経過。

  • 2013年4月中旬 心カテ・・・冠動脈は軽度狭窄のみ。
  • 2013年6月中旬・・・手の内側の内出血にて—バイアスピリン中止。
  • 2013年10月中旬頃から湿疹増悪し、10月下旬にはクレストール中止。
     (2015年1月中旬に、LDL高値でクレストール再開するも、頭皮に湿疹出現のため、クレストール中止)

 

<結果>
1)RAP 食の開始から10ヶ月後にはプラークがやや肥厚し、悪化傾向(写真1)と判断。
その後、スタチンが副作用で中止になっており、徐々にプラークは退縮。

しかし2019年5月〜2021年3月までは、退縮のスピードが非常に緩徐で、治療に難渋していた。(写真1)

初診時以降のリアルな血管エコーデータを供覧します。



2)2019年5月から2021年3月までの22ヶ月間で、わずか0.11mmのプラーク退縮だったのが、2021年3月以降の8ヶ月間でプラーク退縮が0.58mm(3.14→2.56mm)となり、退縮のスピードが明らかにアップした。

<考察>
1)プラークに関して・・・経過の途中でプラーク退縮治療に難渋(写真2)していたのに、最近の8ヶ月間では、脂質摂取量は同じにも関わらず、プラーク退縮スピードがアップしたという事実を提示いたします。

「プラークが退縮する」のも、「ガン結節が小さくなる」のも、直接的な働きは主に免疫細胞の貪食や攻撃のおかげです。

進化したRAP食(血管エコー実例・研究 29)で、1日の脂質摂取量を変えることなくプラークの退縮スピードが著しくアップするということは、進化したRAP食なら、リンパ球などの免疫細胞がガンを退治する攻撃力もアップするかもしれません。

繰り返し述べますが、2019年5月から2021年11月中旬まで1日の脂質摂取量はほとんど変化がありません。
したがって、脂質摂取量の因子だけでは、2021年3月から11月にかけてのプラークの著減を説明できません。

つまり、
M-line以下に脂質摂取を制限すれば・・それだけでプラークが改善すると考えていた過去の「M-line理論」(血管エコー実例・研究 29)は、完全に誤りでした。
“腸内環境が悪化すれば、M-lineは消滅する”と考えるべきでしょう。
そして、その証拠の代表的な実例も存在します
(動脈硬化の未来塾 122)

2)スタチンに関して・・・本例においてもスタチン剤を中止したことが、プラーク改善にプラスだったと思われます。10年以上にわたり、スタチンなしでプラーク退縮治療に立ち向かってきた経験から、スタチンは動脈硬化治療において、残念ながら決して利益になるお薬とは言えず、むしろ動脈硬化を悪化させている可能性が高いと言わざるを得ません。(動脈硬化の未来塾 128)

思い起こして考えると、青魚の頻回食でみるみるプラークの肥厚が進行した症例で、青魚の頻回食を止めたらプラークが著明に改善した症例を提示しています(動脈硬化の未来塾 86)。でも、実はこの症例は、記事にも記載していますが、青魚の頻回食を止めたのと時期を同じくして、スタチン剤を中止していただいていました。スタチンの何気ない服用が、私の想像を超えてマクロファージのプラーク貪食能を低下させているのかもしれません。

3)不整脈に関して・・・プラークが退縮すると心臓の負荷が減少し、不整脈(動脈硬化の未来塾 40)や動悸が消失(動脈硬化の未来塾 126)することを経験しています。

本例も同様に、30年前から“脈が飛ぶ”を自覚され、健診で指摘されていた不整脈(1分間に6回程度の心室性期外収縮)が、2015年末には完治しました(図1)。不整脈完治時点のプラークは3.62 mmであり、初診時5.0mmと比べるとかなり退縮していましたので、プラーク退縮による抹消血管抵抗が減弱し、心臓の負荷が軽減したことが理由と思われます。

4)高血圧に関して・・・初診時から、しばらくはプラークが漸増傾向にあり、降圧剤の増量が必要でしたが、最近はプラーク退縮のために抹消の血管抵抗が減弱し、血圧が低下し、降圧剤も減量されています。(図1)

高血圧の根本的な治療は、血管内のプラークを減らし、血管内腔を物理的に広げることです。 (動脈硬化の未来塾 96)

5)体力に関して・・・初診時の体重は56.8Kg(BMI=22.2),現在:2021年11月は体重54.0Kg(BMI=21.1)と痩せ過ぎではありません。なお、2004年頃から“坂道での息切れ”を当院初診時には自覚されていましたが、2021年11月にはそのような自覚症はなく、体調はすこぶる良好とのことです。

<まとめ>
RAP食は、年々進化を遂げ、2020年夏頃までの指導内容でも、今まで治らないとされていた血管プラークを少しずつであっても・・多くのケースで退縮させることができていました。

でも、2020年の後半からのRAP食のマイナーチェンジ(2021年度版)によって、プラーク退縮スピードがアップしたように感じます。(動脈硬化の未来塾 124) (動脈硬化の未来塾 125) (動脈硬化の未来塾 126) (動脈硬化の未来塾 127) (動脈硬化の未来塾 128)

備考:2020年8月頃から、既に2021年度版のRAP食を当院では実践いただいています。

<つぶやき>
進化したRAP食には、今までの健康常識とは真反対の事柄や・・「え〜、そんなことが・・」や「え〜、そんなことで・・」など、など・・にわかに信じ難いかもしれない事柄が多くあります。

今までの健康常識を受け止め、事実と照らし合わせ、それらの常識の壁を乗り越えて進化してきたのが2021年度版のRAP食です。

乗り越えるためには、多くの偶然の重なりが必要でした。

今までの・・食に関する・・健康常識は・・科学が発達する以前の常識であって・・・残念ながら・・その多くが・・摂取の仕方によって・・健康のブレーキにもなっているという事実を確認できました。

健康のために!・・と、願って・・・頑張って・・アクセルと思って踏めば踏むほど・・ブレーキどころか・・バックしてしまう・・・・車社会の世相とは真逆の現実が・・食と健康の世界にも・・確かに存在します。

2021年11月25日 記載
真島消化器クリニック
真島康雄

 


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