脳梗塞・心筋梗塞の予防法

1年半も悩み続けた動悸が、RAP食とEPA製剤にて2週間でほぼ完治した1例。

“動悸”の原因は・・「自律神経・甲状腺・心臓の病気」・・と、決めつけていませんか?

原因不明で・・、専門医で治らない場合は・・血管プラークが根本原因かもしれません。

今回は、1年半も難治性であった“動悸”が、RAP食とEPA製剤服用後の1週間で軽快し、2週間で完治状態になった症例を経験したので報告します。

「今回の症例呈示に関連して、開示すべき「利益相反」関係にある企業はありません」

『症例提示』
症例 57歳 女性  主訴「1年半続く動悸」
現病歴を表1に記載しました。

表1

2019年9月中旬の突然の“動悸”出現以来・・1年半もの間、循環器科を2カ所受診するも、“動悸”が治らず、ロスバスタチン(スタチン剤)の副作用も1年後に出現するなど、複雑な臨床経過をたどり、当院への受診(2021年4月中旬)直前には連日の“動悸”に加え、夜間のパニック障害まで出現し、症状は悪化の一途を辿っていました。

2021年4月中旬 当院初診    BMI=23.2

<8カ所の血管エコー所見>

腹部大動脈IMT =1.75 mm(A-max)
右鎖骨下動脈IMT =2.81 mm(S-max)(写真1)
右頸動脈分岐部〜内・外頸動脈IMT=0.61mm
左頸動脈分岐部〜内・外頸動脈IMT=1.35mm
右総頸動脈IMT=2.09 mm(C-max) (写真2) 左総頸動脈IMT=0.87 mm
右大腿動脈IMT=1.75 mm(F-max)
右大腿動脈IMT=1.64 mm(別の部位)(写真1)
左大腿動脈IMT=1.68 mm(写真2)
******脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=3(0〜4)****** T-max=8.00 mm

<食の好み>

  • 甘いもの:好き、肉:大好き、野菜:好き、魚:好き、揚げ物:大好き
  • 食習慣点数=500点(かなり高得点:得点は2018年4月出版の書籍を参照ください)


<食歴の特徴>

1)40代から・毎日・・オリーブオイル:大さじ1.5杯サラダにつけて摂取
2)動悸が生じるまでの15年間、毎朝トースト&バターの食生活

<治療>
治療:1) RAP食 開始
   2)イコサペント酸エチル粒状カプセル(900)2,2x 開始
   3)ラックビー微粒N,2g,2x 開始

<治療による血管プラークの退縮>

  1. 右鎖骨下動脈プラーク 2.81→2.57mmへ退縮(写真1)
  2. 右大腿動脈プラーク  1.64→1.53 mmへ退縮(写真1)
  3. 右総頸動脈プラーク 2.09→2.00 mmへ退縮(写真2)
  4. 左大腿動脈プラーク 1.68→1.64 mmへ退縮傾向(写真2)

写真1

写真2

<治療後の経過・結果>
8カ所の血管エコー所見や食歴から、動悸の原因がプラークであると確信し、「RAP食を守れれば、1週間で症状が軽くなり、2週間ではほとんど良くなるでしょう」と説明。

実際には・・
2021年 4月中旬(1週間後) 動悸を感じることが少なくなり・・・ (表2)
2021年 4月下旬(2週間後) ほとんど動悸を感じなくなり・・・(表2)
以降 動悸出現なし。
2021年8月中旬(4ヶ月後) 観察ポイント全てのプラークが退縮していた。(写真1&2)
              この3ヶ月半の間、“動悸”なし、“こむら返り“なし

表2

<考察>
1)“動悸”の根本原因がプラークであれば、今回の症例のごとく、RAP食&EPA製剤で短期間に動悸は消失するでしょう。

この症例から、心臓は末梢動脈のわずかなプラークの増加による血管抵抗の増大で、頻拍や不整脈になったりする。

逆に、プラークがわずかに退縮するだけで、心臓にかかるストレスは大幅に減少し、その結果、“動悸”が消失したものと考えられます。

初診直前に生じたパニック障害(パニック発作)は、普通なら精神科・神経内科の病気と考えられますが、プラークの退縮に伴って完治した症例もあります。(動脈硬化の未来塾 92))

2)教科書的な、「“動悸”を感じる疾患」を図に記載しましたが、その多くが、原因としてプラークが考えられます。(図1)


長年のプラーク測定によるデータ(動脈硬化の未来塾 40))で見る限り、
期外収縮から普通の不整脈・・さらに進行すれば心房細動へと進行し、プラークが溜まる食習慣を続ければ・・慢性心不全に至る・・そんな筋書きが描けます。(図2)

食事指導によるプラークの治療がなされないまま・・だとしたら・・非常に多くの方が・・上記のいずれかの状況で・・薬物治療のお世話になっておられるに違いありません。

高血圧や、狭心症、心筋梗塞、心臓弁膜症(心臓の弁にプラークが厚く付着するのが根本原因)は、プラークが進行(肥厚)する過程で生じる・・約束された結果にすぎません。

したがって、ヘトヘトになっている心臓を、薬で「押さえつけたり」「鞭打ったり」して、なんとかしようとしても・・一定の症状の軽減はあるにせよ・・心臓にとってみれば・・心臓君が、良かれと思ってやっていることなので・・大変困惑する話かもしれません。

心臓の気持ちになれば、
「それよりも・・血管のプラーク汚れをなんとかしてくれ〜、そしたらあとは頑張れるし〜、もとの元気な僕に戻れるから〜。」・・これが心臓君の本音でしょう。

プラークを減らす治療は、多くの心臓・血管疾患を減らすことが可能なのです。

ところが、実際の専門外来では、薬理学で「ミトコンドリア毒」とされ・・心臓毒と考えられているスタチンを多くの場合使用されています。

でも・・スタチン剤では、狭小化した末梢動脈のプラークを減らすことはできませんから・スタチン剤が心臓の負担を減らすことはなく・・・・

・・徐々に心臓は弱り・・プラークの進行とともに・・慢性心不全へ・・移行します。・・これが現代の一般的な状況です。

3)心筋梗塞後などに、心不全の予防・治療目的で、心臓リハビリなどが行われていますが、RAP食を取り入れていただければ・・・各患者さんの心臓には・・大変喜ばれることでしょう。

心臓リハビリの食事療法においても、脂肪(脂質)を控えるような指導がなされてはいますが、目的は肥満を治す・防ぐ意味合いからのように受け取れます。
でも、肥満とプラークはあまり関係ありません。

(動脈硬化の未来塾 6)) 

運動などは、筋力保全にはプラスですが・・心不全の・・心臓が置かれた境遇を考えれば・・歩き回る運動をしても・・血管プラークは減ることはなく・・心臓の負担が有効に減る道理はありません(血管エコー実例・研究 25)) 

備考:心臓リハビリとは・・「心臓病の患者さんが、体力を回復し自信を取り戻し、快適な家庭生活や社会生活に復帰するとともに、再発や再入院を防止することをめざして行う総合的活動プログラムのことです。内容として、運動療法と学習活動・生活指導・相談(カウンセリング)などを含みます。(日本心臓リハビリテーション学会より)

<まとめ>
今回の症例は、血管プラーク退縮を目的とした治療により、おそらくプラーク退縮が受診直後から始まり、全身の末梢動脈の内径がわずかに広がり、心臓が受ける末梢動脈抵抗が低下し、急速に心臓の負担が軽くなり、 “動悸”の症状が消失に向かったものと考えられます。
事実、4ヶ月後には・全身各動脈のプラークが明らかに退縮していました。

注意:)動悸の全ての原因がプラークではありません。また、急を要する動悸「心房細動」「心筋梗塞」の場合もありますので、まずは循環器専門医の診察をお受けください。

<つぶやき>
私が56歳の時、初めて自分の血管プラークを見て衝撃を受けた頃・・たまに期外収縮が出るようになっていました。心臓が一瞬・・冷たく“ヒヤッ”・・と、していましたが、たまにですから・・心電図では正常でした。
プラークが退縮してから期外収縮は一度も起こらなくなりました。

運命は変えられます。

レオナルド・ダ・ビンチの言葉
『あらゆるものは、他のあらゆるものと関連する。』

ご縁につながれば幸いです。

2021年8月16日 記載
真島消化器クリニック
真島康雄

 


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