脳梗塞・心筋梗塞の予防法

睡眠時パニック発作が、RAP食による頸動脈プラークの退縮に伴って完治したと思われる1症例。

「この研究に関して、著者が開示すべき利益相反関係にある企業などはありません」

パニック障害の患者さんの4割程度に、睡眠時パニック発作の症状がみられる、とされています(精神科治療学24(2):201-206、2009)。 その原因の一つに「脳血流の低下」も考えられます。現代における物理的な脳血流量の低下を来す最も主な原因は、脳動脈のアテローム性動脈硬化による「脳動脈の狭小化」でしょう。

しかしながら、そのアテローム性の動脈硬化(プラークとほぼ同じ意味)を改善させる標準的な医療は、現代ではまだ存在しません。

今回、EPA製剤+ビフィズス菌製剤および当院のRAP食によって、大腿動脈や頸動脈などのプラークなどが退縮し、それに伴って、長年の悩みであった睡眠時のパニック発作が完治したと思われる症例を経験した。

<症例1> 64歳 女性

<現症>

2017年4月初旬:当院初診:8カ所の血管エコーでは
1. 腹部大動脈max-IMT=1.38mm
2. 右大腿動脈max-IMT=1.94mm(上写真)
3. 左大腿動脈max-IMT=0.61mm
4. 右鎖骨下動脈max-IMT=2.69mm
5. 右頸動脈分岐部max-IMT=1.02mm
6. 左頸動脈分岐部max-IMT=1.74mm(上写真)
7. 右総頸動脈max-IMT=0.46mm
8. 左総頸動脈max-IMT=0.51mm

血管エコーでのリスク判定では、脳梗塞・心筋梗塞のリスクレベル=3(0〜4) です。
2017年2月下旬 LDL=134 TG=229 HDL=51

<日常の食生活>

オリーブオイルやアマニ油などの大さじ1杯を、毎日サラダにつけて摂取(長年の習慣)。
海外生活長く、週に2回は朝サンドイッチなどのパン食。

<現病歴>

  • 1995年5月頃から仕事関係で海外暮らしが多い。中性脂肪:TGはこの頃から高め。
  • 2008年8月 睡眠時に呼吸が止まり、息苦しくなってハッと目覚める。医大の心療内科で無呼吸ではないかと言われ・・安定剤を処方受けるも・・その後も月に4-5回・・同様のことあり。
  • 2010年  帰国して同医大で無呼吸の検査受けるも・・軽度だから問題なしの診断。マウスピースを使用しても改善せず。呼吸器・心臓内科でも問題なし。この頃はひどくて睡眠時パニック発作が毎日起こることもあり、精神的に疲弊。 体重=56.0Kg
  • 2013年 心療内科:うつ病専門医を受診するも「うつ病ではありません」と診断。
    この頃からは、さらにひどくなり薬も効かないし・・と困り果てていました。
  • 2014年7月 脳MRI:異常なし。
  • 2015年 母が一人暮らしになったので、娘夫婦と4世代同居生活に。
  • 2015年末 引っ越しあり。近医ではパニック発作をストレス性と判断され、安定剤を処方されて服用開始。
    でも、睡眠時パニック発作は度々ありました。(同居の前から発作あり)
  • 2016年7月 体重51.1Kgに減量後も発作の頻度や息苦しさの程度(息が止まって目が覚める。苦しくて・苦しくて胸を叩いて、息が戻って寝付ける状況で、発作が毎晩起こることもあり)は変わらず。
  • 2017年4月 娘の勧めで当院受診。現在体重は53.0Kg

<治療>

「RAP食:オリーブオイルやアマニ油を毎日サラダにかける習慣を止める、他。」+EPA製剤1800mg/日(朝900mg、夕900mg)+ビフィズス菌製剤2g(朝1g、夕1g)

<経過>

  • 2017年4月 当院受診後にRAP食を指導し(血管エコー実例 29)、8カ所の血管エコー所見は以下のように変化。
    1. 腹部大動脈max-IMT=1.38mm
    2. 右大腿動脈max-IMT=1.94-→1.79→1.59 mm(2018年12月)(上写真)
    3. 左大腿動脈max-IMT=0.61mm
    4. 右鎖骨下動脈max-IMT=2.69→2.50→2.26 mm
    5. 右頸動脈分岐部max-IMT=1.02mm
    6. 左頸動脈分岐部max-IMT=1.74→1.44→0.96 mm(2018年12月)(上写真)
    7. 右総頸動脈max-IMT=0.46mm
    8. 左総頸動脈max-IMT=0.51mm
  • 2017年8月頃から・・・睡眠時の発作:息苦しくなる回数が減り、
  • 2017年12月頃には・・あっても月に1〜2回に減り、安定剤の服用は不要になる。
  • 2018年8月以降は12月末まで一度も発作が起こっていない。「完治状態」
    体重も53.0→48.9Kgへ減る

<考察>

1)睡眠時無呼吸症候群(SAS)が動脈硬化と密接に関係し(動脈硬化の未来塾 37)、多くの症例において、プラークの改善に伴って“いびき”が軽くなり、SASが完治することは普通に経験されます。本例は、SASにより自己覚醒し、その際の息苦しさの経験が引き金となり、不安神経症や昼間のパニック障害へ移行しかねない状況であっただろうと思われた。

2)「うつ病」の症例に関しても、プラークの改善がRAP食で普通に期待できる(動脈硬化の未来塾 69)ことから、50歳以上で食習慣点数が高値の場合は、脳血流改善目的で「RAP食」を最低4週間続けてみるのも自己改善方法としては推奨できる。書籍「脳梗塞・心筋梗塞・高血圧の原因は油」(幻冬舎)に食習慣点数表を掲載。

3)RAP食でプラークが退縮すると、全身の各部位の動脈プラークも改善すると考えられるので、予期せぬ嬉しい効果が現れます。
大動脈の石灰化が退縮し、糖尿病も改善した方で、変形性膝関節症で杖なしでは歩けなかった人がおられましたが、プラーク改善に伴い、杖なしで遠くまでスタスタ歩けるようになった方がおられます(雑誌「壮快」2019年2月号:P46-47)。
軟骨膜や骨の細動脈や毛細血管のプラークが退縮し、血管の再開通が生じ、自然治癒力(免疫細胞等による修復作業)が進んだものと考えられます。

4)RAP食とは、コレステロール低下薬(スタチン剤)を基本的に使用しない食事療法ですから、スタチン剤を服用中の方は中止していただいています。特に、副作用の面からも、うつ病やパニック障害・糖尿病などへのスタチン剤服用は極めて慎重な対応が望まれます。
そして、動脈硬化はスタチン剤では治りません。
(動脈硬化の未来塾 68)やENHANCE試験(N Engl Med 2008;359:529-533)を参照。

<結果>

動脈硬化(プラーク)治療目的の通院(RAP指導)を行い、11年間もの長きにわたり頻繁に生じていた「睡眠時パニック発作」が、プラークの退縮に伴って4ヶ月後にはかなり軽快し、1年4ヶ月後には完治に至ったと思われる症例を経験した。

<まとめ>

最近の食習慣の洋風化&グルメブームに伴って、動脈硬化をきたす年齢の若年化が危惧されています。50歳以上で「睡眠時パニック発作」を認める場合や「うつ病」の場合など、脳血流が改善する可能性が高い「RAP食」をまずは4ヶ月でも試すことは有意義だと思われる。

『コラム』
「私は上り坂の約400mを、たびたびランニングしていますが、最近は、ほとんど息切れしなくなりました。12年ほど前は愛犬と20m走るだけで息切れしていたのが嘘のようです。 2018年6月に初診の患者さんが6ヶ月後に受診され、プラークが改善していましたが、「半年前は7000歩を歩いて休憩が必要だったが、今は連続10000歩でも疲れを感じなくなり、歩く速さも格段に早くなった(足の運びがとても楽)」とおっしゃっていました。

正月の駅伝やオリンピックのマラソンを見るたびに・・試合の4ヶ月前から秘密裏に「RAP食」に変更すれば・・疲れ知らずのランナーを・・必ず作れるのではと・・。

駅伝部のレギュラーになれない人や、無名のランナーなど・・・・RAP食を信じて試してみてはいかがでしょう。・・この記事をご覧の持久力が必要なアスリートの方・・是非お試しください・・。

これは先進科学的な裏付けがある、筋肉・肺の血流量を増加させる(皮膚や脳その他の全ての器官ですが・・)、過去には存在しなかった食事療法です。
従来の栄養バランス重視の食事療法の概念には無かった全く新しい考えですので、勝つチャンスは誰にでもあります。・・秘密で実行しましょう。過剰な脂質摂取を減らすので、炭水化物(糖質)・タンパク質・トコロテン・無脂肪ヨーグルトは十分に摂取する必要があります。


2019年1月11日 記載
真島消化器クリニック

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