脳梗塞・心筋梗塞の予防法

冠動脈ステント留置後に、スタチン剤を中止し、良好なプラーク退縮を認めた1例。

「プラークは退縮しない」・・この言葉は、循環器病外来の専門医の言葉です。

つまり、スタチン剤を何年も処方(服用)しても「プラークは退縮しない」・・と、公然と自験例を含めて・・お認めになっているのです。

これが、現在の標準的な医学の常識でもあります。

今回、冠動脈ステント留置後に、スタチン剤によると思われる副作用にて服用困難となった患者さんが・・症状を訴えても処方中止していただけないので、やむなく自己中止し、

担当医から「スタチン剤を飲めないなら、注射をしないと大変なことになる」と脅され、コロナ禍の中を、必死の思いで娘さんに付き添われて、遠方から当院を受診されました。

しかし、初診から10ヶ月後には元気で一人で来院され、血管エコーでは、左大腿動脈プラーク(内膜中膜肥厚:IMT=3.54mm:60%狭窄)がRAP食によって、かなり退縮(IMT=2.58mm:40%狭窄)し、辛かった臨床症状もほとんどが解消し、「注射でLDLを下げなければ大変なことになる」という予言じみた言葉は全くの誤りであることを証明できました。今回はその報告です。

「今回の症例呈示に関連して、開示すべき「利益相反」関係にある企業はありません」

『症例提示』
症例 75歳 女性

写真1

写真2

<現病歴>
1985年頃より、美食の魅力にひかれ、週に3回ほどは、美味しい料理の外食に出かけるようになった。この習慣が2005年頃まで続く。
1986年 膵炎になる。(後で考えれば美食の影響)
1988年 胆石発作 (フランス料理、うなぎ料理を2日続けて外食後に胆石発作)
2000年6月頃 顔面神経麻痺  この頃から“こむら返り”が出始め…(動脈硬化と関連)
2010年頃〜 “こむら返り”が激しくなる、ひどい時は毎日。 (動脈硬化と関連)
2011年頃  副鼻腔炎手術
2018年12月頃〜胸部違和感が時々あり・・ロスバスタチン(2.5)1T開始
2019年3月上旬 「胸痛&息苦しさ」で救急搬送 不安定狭心症と診断(スタチン剤飲んでいたのに)
2019年3月中旬 冠動脈ステント留置術(3本施行) 
バイアスピリン&エフィエントの服用開始 ロスバスタチン(2.5)1T続行
2019年4月中旬 「嘔気・食欲不振・胸苦しさ」で救急外来へ行くが、心電図だけで帰る。
2019年5月初旬 胃内視鏡で潰瘍瘢痕+ 口内炎もあり
2019年6月  バイアスピリン中止
2019年12月 胸苦しさ(息苦しさ)が持続+
2020年2月中旬 LDL=109 TG=246 HDL=49
2020年4月頃〜 臀部や骨盤部の筋肉痛のため、スタチン剤を飲めなくなった
2020年6月中旬 LDL=179 TG=196 HDL=39

2020年9月初旬 当院受診 

<受診の動機>
担当医から (スタチン剤を飲めていないから・・)注射でLDLを下げる提案をされている。

(注射で対応しなければ)「あなたの場合は状態があまり良くないから、いつどうなってもおかしくない、大変なことになる」と脅されている。(本人の書面より)

主訴)スタチン剤・注射なしで動脈硬化を治したい

<8カ所の血管エコー所見>
腹部大動脈IMT=3.36 mm(A-max)
右鎖骨下動脈=1.13 mm(S-max)
右頸動脈分岐部〜内・外頸動脈:IMT=1.10mm(C-max)
左頸動脈分岐部〜内・外頸動脈:IMT=0.77mm
右総頸動脈IMT=0.83 mm 左総頸動脈IMT=0.61 mm
右大腿動脈IMT=1.66 mm 左大腿動脈IMT=3.54 mm(F-max)
******脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=4(0〜4)****** T-max=9.03mm

<食の好み>

  • 甘いもの:普通、肉:普通、野菜:好き、魚:普通、揚げ物:普通。
  • 食習慣点数=53点(かなり低得点:得点は2018年4月出版の書籍を参照ください)
    (好みや食習慣には問題点はなく、30〜40代は美食家であったので、旨い料理の外食を週に3回はしていた)

<治療>

  • 最新RAP食開始
    本人希望で新しい“かかりつけ医”へ変更。
  • クロピドグレル(25)2T、1x 開始(副作用が考えられ、エフィエント中止)
    (薬に過敏なために、オメプラール中止)
  • ロトリガ2g、2P,2x日 開始(かかりつけ医より)
  • ラックビー微粒N,2g,2x開始(かかりつけ医より)
    (服薬歴を図で表示)

主な服薬歴を図にまとめました(下図)

<結果>10ヶ月後の再診時の所見

1)RAP食等により、経過を追えた3カ所の血管プラークは、極めて順調に退縮した。
(写真1)&(写真2)

2)臨床症状(こむら返り、胸の息苦しさ、悪心・食欲不振、など)も、以下の図のごとく、ことごとく消失し、2015年頃から毎年、年に2回は抗生剤が必要な慢性副鼻腔炎の症状に悩まされていたが、当院受診後は副鼻腔炎の症状が消失中。また、当院受診までは視力が裸眼で左右ともに0.6(10年間は同じ)であったのが、2021年7月には両眼共に裸眼で視力が1.0と良くなっていた。(下図)


<考察>
1)2021年7月中旬 プラークは10ヶ月で0.96mmも退縮しています。当院の著効例の大まかな基準は3〜4ヶ月で0.3mm以上ですから、本例も著効例となります。

2)スタチン剤を中止後にRAP 食&当院の推奨トコロテン(伝統的なトコロテン製法によるトコロテンよりも成分が2倍以上も濃い)2P 以上/日での著効例(動脈硬化の未来塾 119))を提示していますが、本例は1日1Pしか食べられていませんでした。黒蜜のタレでもいいから、もう1P追加で食べられる努力をしていただくようにお話しいたしました・・可能ならですが。

3)現在の担当医にも注射でLDLを下げましょう・・との提案を受けていますが、血管エコーの結果を初めて報告するにあたり、注射は必要では無い旨、ご報告いたしました。

4)全国的に、LDL高値を心配されるDrがほとんどです。でも、実際は・・本例の写真1で証明したごとく、LDLは200以上でもRAP食ならプラークは退縮します。大丈夫です!(動脈硬化の未来塾 120)) (動脈硬化の未来塾 103)) (動脈硬化の未来塾 113)) (動脈硬化の未来塾 75))

5)本例はRAP食とEPA+DHA製剤のロトリガで治療しましたが、EPA製剤のイコサペント酸エチル粒状カプセル(エパデール)でなくても、EPA+DHA製剤のロトリガでも大丈夫です。(動脈硬化の未来塾 102))
(担当医の意向で本例はロトリガ(2g)2P/日でしたが、1P/日でも問題ありません)

6)動脈プラークの石灰化も退縮することは、すでに書籍でも報告済みです。
本例も明らかな石灰化したプラークの退縮を認めましたが、マクロファージが変身した破骨細胞が貪食してくれたおかげです(写真2)。(動脈硬化の未来塾 82))

石灰化したプラークの退縮ですが・・石灰化が自然に溶解したわけではありません。

7)スタチン剤が飲めなければ次の1手をしてあげるのが医師の務めですから・・プラークを退縮させる薬が存在しない現在では、注射薬を勧められるのは無理もありません。

でも、その注射薬でLDLを下げるという薬「レパーサ」の副作用ですが・・・安全性評価対象の565例(12週間投与)中 なんと「頸動脈内膜中膜肥厚度(プラーク)増加が4例(0.7%) 心筋虚血1例(0.2%)血小板凝集亢進例(血栓ができやすくなる) 1例(0.2%)報告されています・・いずれも怖い副反応です。
(資料1の添付文書にはその他の副作用として記載あり)

死に至る病気を90%以上は予防できるコロナワクチンの副反応と比べたら・・大変な確率です。

しかも、LDLは下がっても・・プラークが減る保証は全くありません。
逆にプラークが増える可能性があるわけですから・・・

また、レパーサの添付文書によれば・・心・血管イベント発現リスクは減りますが・・心血管系疾患に起因する死亡例は、レパーサ併用群では減らせていません(スタチン剤+プラセボ群240例、スタチン剤+レパーサ群251例)。不安定狭心症による入院(通常はステント治療などが必要)も減らせていません(スタチン剤+プラセボ群239例、スタチン剤+レパーサ群236例)。(国際共同の二重盲検試験:27564例を対象) 下図は添付資料からの抜粋です。

資料1

備考:「レパーサ」でプラークが減る期待感を持っての頸動脈プラークのフォローがなされたと思われますが、心筋虚血や血小板凝集亢進(血栓ができやすくなる)の事実を含めて、主催者・メーカーに忖度せず、副反応の事実をリストアップしていただいた担当のDrに心より敬意を表します。

資料2

日本の最先端の医療機関で・・心血管系の患者さんのほとんどがスタチン剤を服用中ですが・・・資料1の、国内症例の生データから・・その効果のリアルな状況が読み取れます。・

つまり・・資料1を読み解くと・・・
国内治験において、
スタチン剤を服用していても・・429人中・ほんの・・2年間に・・・
・・9人は心筋梗塞になり・・・4人は心・血管系で死亡し・・8人は脳梗塞になり・・22人が冠動脈ステント術などを受けている(資料2)・・・という事実に驚きです・・・(脳・心血管系イベント発症は、約2年間で計43人:10.0%です)・・。

6年後は・・ ・・(脳・心血管系イベントで計129人:30.0%・・発症の計算)・・・恐いですね〜・・スタチン剤を飲んでいても(いるから?)です (動脈硬化の未来塾 68))

患者さんが外来でよく耳にする「スタチン剤でLDLを下げないと危険!(飲んでいれば安心の意味)」の言葉は・・・全く・・正しくありません・・ですよね。・・・飲んでいる人も危険であり、安心できません。  

図らずも、レパーサの添付資料中の治験データは・・現在のLDL低下を最優先に目指す医療作戦に問題点があることを露呈させました。・・・このまま、10年・・20年・・薬でLDLを下げる医療を続けてもいいのでしょうか? 

他に方法は・・と、考えるのが科学者の務めでは・・・。

こういった動かせない事実があるのに、血管内エコーの論文で、スタチン剤は冠動脈のプラークの体積を有意に減らせるという論文:Circulation 2004;110があります。
2018年の急性冠症候群ガイドラインで引用してありますが、理解できません。

日本脂質栄養学会によると・・
2004年にEUで臨床試験に関する新しい規則(罰則付き)が発効し、実質2006年以降発表の論文(企業と利益相反(COI)関係のない研究者によって発表された論文では、スタチン剤が“LDL-Cは下げるが心疾患の予防効果は示さなかった”と報告されています(下の表3)。

スタチンで冠動脈プラークが有意に減るというCirculation 2004;110の論文の結果が事実とすれば、心血管系の死亡率は明らかに減少するはずですが、多くの論文で死亡率は減りません。

そして、頸動脈のプラークが減らないことは明白(ENHANCE試験)ですが、冠動脈だけのプラークが減る(退縮する)という結果が本当に出たのなら、頸動脈プラークの増減も同じ症例で検討していただきたかったですが、頸動脈プラークが退縮しないのは臨床現場では・周知の事実ですから・・検討されていないのでしょうね。

なお、当院では・・高度の頸動脈狭窄でもスタチン剤なしのRAP食で退縮させることが可能です
(動脈硬化の未来塾 114)) (動脈硬化の未来塾 89)) (動脈硬化の未来塾 85))

<まとめ>
・冠動脈ステント留置術後に、スタチン剤による副作用が出現し、服用できない状態のまま、RAP食等で治療したところ、全身の3カ所のプラークは3ヶ所ともプラークが退縮し、“胸苦しさ・息苦しさ“も消失したことなどから、冠動脈のプラークも退縮しているものと考えられます。

・RAP 食を行えば、たとえ家族性の高コレステロール血症であっても、スタチン剤の服用や、注射薬によるLDLの低下療法は・・全く必要ありません。
安心・安全のため・・・・スタチン剤を飲まないRAP食を提案しています。 
(動脈硬化の未来塾 100))

RAP 食は、スタチンよりもはるかに確実で強力な動脈硬化改善薬と言っても過言ではないと思われます。

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レオナルド・ダ・ビンチの言葉
『ちっぽけな確実さは大きな嘘に勝る。』

ご縁につながれば幸いです。

2021年7月29日 記載
真島消化器クリニック
真島康雄

 


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