脳梗塞・心筋梗塞の予防法

脳動脈狭窄症が、RAP食とEPA+DHA製剤で、ほぼ完治したと思われる1例

突然、脳動脈の狭窄を指摘されたらどうします?????

現在の医学では、安全で確実な治療法はありません

でも、朗報です!
落ち込んで悲しむ必要は全くありません。脳梗塞の後でさえ・・です。

頭蓋内の脳動脈狭窄症の治療に関して、安全で・ほぼ確実な治療法と期待が持てる治療法があります。それは、動脈硬化のプラークを高率に退縮させることのできる・・『RAP食』+EPA製剤(EPA+DHA製剤も同様)による治療法です(動脈硬化の未来塾 100))

以下の症例が上記のコメントの裏付けです。

「今回の症例呈示に関連して、開示すべき「利益相反」関係にある企業はありません」

Case . 50歳 女性
まず、脳動脈狭窄の状態がRAP食+(EPA+DHA)製剤で正常レベルまでに改善している事実をご覧ください(写真1&2)。

写真1

写真2(写真1の拡大像)


<家族歴>
父:82歳:他界(アルツハイマーあり)
<初診時までの経過>
2004年頃 一人暮らし 仕事多忙で惣菜を買って食べる日が多くなる。
2010年頃 禁煙。アメやせんべいを食べ過ぎて太る。体重54Kg BMMI=21.4
2012年頃 糖質制限開始 54→49Kgに減量。
2013年頃 断食体験で勧められた、朝:にんじん+りんごジュース、昼:トロロそば、夜:にんじんジュースのカスを利用したカレーミートソースなどを豆腐にかけて食べるようにした。(糖質制限は持続)
2015年(46歳)頃 記憶力の衰えが顕著になり、脳に良いとされるサプリを飲むようになる。また、ココナッツオイルをフランスパンにつけて食べるようになる。
2016年8月頃 にんじんジュースをやめて、ネットで知り得たMEC食開始。具体的には、毎日肉を200g以上、スライスチーズ4-5枚/日、卵は1日2-3個食べ始めた。バターやマヨネーズを多く摂取し、週に3回のパン食は、ココナッツ入りの大豆の粉でパンを作り、ココナッツオイルを塗って食べていた。
また、コーヒーにバターやココナッツオイルを入れて飲んでいた
他に、板チョコ1枚/日、きな粉100g/週、煮大豆200g/週、豆乳150cc/日、豆乳ヨーグルト80g/日を開始。
2017年1月頃 物覚えが悪くなり、ADD(注意欠陥障害)では?と思ったりして、血流が良くなるといわれているオリーブオイルやトマト、アボガドなどを積極的に摂取するようになった。
2017年8月頃 寝汗++&睡眠障害+になり、更年期障害の疑いで漢方治療:効果なく中止 クリームで発汗&不眠は治るも、物覚えが悪いという症状は残る。
そのため、アーモンド25粒/日&ホットコーヒーに大さじ1杯のバターを入れて毎朝飲むようになる。
2018年2月頃 仕事のストレスで、ケーキやクッキーを週に1回だけ、たくさん食べるようになる。また、1日に大さじ1杯のエゴマオイルとオリーブオイルをトマトにかけ、アボガドを毎日0.5個食べるようになる。
2018年5月 健診: 体重52.2Kg 血圧=96/62 LDL=169 TG=68 HDL=93
2018年8月頃 仕事への意欲の減退、仕事のペースの鈍化が顕著になる。
“目の見えづらさ”で眼科受診:異常なしで・・脳から?と指摘あり
この頃、“朝のふらつき”“足のもつれ”が、2〜3週間に一度は生じるようになる。
2018年10月初旬 CAVI検査(血管年齢)では正常範囲。
この頃から当院ホームページ見て、上記のMEC食・糖質制限を中止し、RAP食開始。
パンはフランスパンにした。希望して、ロトリガ(2g)1p/日開始。

2018年10月下旬 脳MRA検査 :脳動脈が90%狭窄あり。屈曲部なので治療できない。“しびれ”が出たら救急車を呼びなさい・・、との指導あり。
2018年11月初旬 トコロテン300g/日開始。

2019年1月:当院初診
体重:49Kg BMI=21.4 食習慣点数=954点
<採血データ/ 他>LDL=101 TG=90 HDL=59 TC=175 血小板=30.6万  Cr=0.49
血糖=99(昼食前) FMD=2.9%( >6.0%)

<初診時時の服薬状況>
1. ロトリガ(2g)1p/日 (EPA+DHA製剤:弱い抗血小板剤)

<初診時の血管エコー>
8カ所の血管エコー(血管エコー実例・研究 1))
腹部大動脈IMT=1.20 mm((A-max)
右鎖骨下動脈=1.70 mm(S-max)
右頸動脈分岐部IMT=2.81mm (C-max)(下写真)
左頸動脈分岐部IMT=0.87 mm
右総頸動脈IMT=0.82 mm 左総頸動脈IMT=0.56 mm
右大腿動脈IMT=0.46 mm 左大腿動脈IMT=0.61mm(F-max)
******脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=4(0〜4)****** T-max=6.32 mm

治療:
1)RAP食を具体的に指導。
2)ラックビー微粒N,2g,2x(現服用薬に追加として、便通調整と免疫賦活を期待して)開始。
3)ロトリガ(2g)1p/日 継続。

結果:
1)受診後8ヶ月で、右頸動脈分岐部のプラークが2.81→2.18 mmへ退縮(下写真)
2)MEC食からRAP食へ変更して11ヶ月で、脳動脈90%狭窄がほぼ正常レベルまでに改善。
3)8ヶ月で“朝のふらつき”“足のもつれ”が消失

※:担当医のコメント:2019年9月時点の脳外科外来診察で「こんなこともあるよ」とのこと。本人がRAP食を説明しても「食事でこんなに治せるなんて信じられない・・」との説明でした。でも、ラックビー微粒Nの継続・スタチン剤不使用など、本人希望の丁寧な診療をしていただいています。


考察:
この症例以外に、脳外科Drから「救急車をいつでも呼べる体制でいてください」などと・・非常に怖い指導を受けていたのですが、頸動脈などのプラークが改善したら、脳動脈狭窄が驚くほど改善した症例(動脈硬化の未来塾 101))のCase 1も脳動脈狭窄が改善しました。

一般的に、
脳動脈狭窄症に関しての、安全で確実な観血的な治療法は現在のところ、ありません。

特に、無症候性の脳動脈狭窄に対する脳血管内治療については、無症候性狭窄のみを対象とした治療報告はありません(2009年脳卒中治療ガイドライン)。

日本脳卒中学会の頭蓋内動脈ステント(動脈硬化症用)適正使用指針(2013年12月)によれば、国内治験の紹介とともに、海外治験の成績(以下)が述べられている。

  1. Wingspan ステント の国内治験(ステントシステムの安全性及び性能の評価)
    対象は2009年8月から2010年10月までに登録された19例。
    治験結果「手技6ヶ月後までの同側脳卒中または死亡は10.5%(2/19)であった。手技6ヶ月後までの標的病変の再狭窄(50%以上の狭窄)は31.3%(5/16)。手技6ヶ月後までの全脳卒中又は死亡の発生は21.1%(4/19)。」・・随分危険ですね。再狭窄率も高い。
  2. Wingspan ステント の海外治験
    内科治療(積極的内科治療群)Vs積極的内科治療+Wingspan ステント留置術(PTAS群)の優劣を検討する治験:SAMMPRIS Study
    対象は、脳梗塞、一過性脳虚血発作から30日以内の症例で、その原因が頭蓋内動脈狭窄(77〜99%)によると思われる症例について、積極的内科治療群とPTAS群に1:1で無作為で割り当てられた。全例に、LDLはスタチン剤を用いて70mg/dl未満、血圧は降圧剤で140mmHg未満(糖尿病患者は130 mmHg未満)とする管理目標を設定。
    初期の90日間は全例、アスピリン(325mg/日)+クロピドグレル(75mg/日)の2剤投与とし、90日以降はアスピリンのみの単独投与とした。登録後、30日以内の脳卒中又は死亡を一次エンドポイントとした。
    治験結果:登録から451名(積極的内科治療群:227例、PTAS群:224例)が登録された時点において、登録30日後までの脳卒中、死亡の割合が、PTAS群で14.7%(非致死性12.5%、致死性2.2%)だったのに対し、積極的内科治療群では5.8%に留まり、両群間で有意差(P=0.002)がみとめられ、これ以上の試験の継続が中止された(明らかにPTAS群が危険であるため)。ステント留置群の一次ポイントとなった33例中10例に脳出血が生じ、4例は致死性脳出血、4例は障害を残す脳出血であった。
    ※:学会レベルでもステント留置術には極めて慎重な姿勢です。(詳細は、頭蓋内動脈ステント適正使用指針の全文をご覧ください)

なお、

@SAMMPRIS 試験における積極的内科治療群の年間再発(脳卒中)率は12.6%( Lancet. 2014; 383: 333-41.)。(高い!:LDLを薬で70以下に下げていても?下げたから?)
ASAMMPRIS 試験における積極的内科治療群のPTAS群に対する優位性は2年以上持続した( Lancet. 2014; 383: 333-41.)。
BSAMMPRIS 試験における30日以降の経過観察では、責任病変領域(狭窄した脳動脈のおかげで生きている脳の領域)の脳卒中発生は、両群共に13例であった( N Eng J Med. 2011; 365: 993-1003 )。

結局、脳動脈に狭窄を指摘されたら、「手術でプラークを取り除こうとか、ステントを入れて血管を広げるなどの、観血的な治療」よりも、内科的に治療した方が無難と言えます。このSAMMPRIS 試験から、狭窄した動脈の部分を物理的に広げても、広げなくても、その末端領域の脳卒中リスクは全く同じなのです(上記のB :N Eng J Med. 2011; 365)。

つまり、狭窄した脳動脈のプラークがちぎれて流れて脳梗塞になるという仮説は誤りであると言えます。このことは頸動脈狭窄のステント治療でも同様のことが言えます。

つまり、プラークが血管壁内に沈着して生じるアテローム性の脳梗塞は、その多くが「頸動脈のプラークが脳へ飛んで脳梗塞になる」のではなく、「脳末端の小さな脳動脈が、その部分でプラークが肥厚し、その場所が閉塞して脳梗塞になる」、と考える推論をSAMMPRIS試験は裏付ける結果でした。

また、積極的な内科的治療といっても、コレステロール低下薬を1種類or 2種類も使って、LDLを強力に・・2年間も低下させ続けても・・・・、頸動脈のプラークは減少しなかった
( N Eng J Med 2008; 359:529-533:大規模臨床試験ENHANCE試験:米国)。この事実をご存知ではないDrが非常に多いです。私も最近知り得ましたが、私のプラークの研究結果と一致します。

つまり、脳動脈狭窄の本態は血管プラークですから、コレステロール低下薬でLDLを70以下へ強力に低下させても、脳動脈狭窄症が改善する科学的な見込みは皆無となります。これが科学的な考え方です。(冠動脈狭窄症でも同様のことが言えるのですが・・)。

ですから、本例のごとく、身体各所の動脈のプラーク(本例ではたまたま頸動脈)を内科的に減らせる治療法があれば、その治療法が脳動脈狭窄症・頸動脈狭窄症の治療の第一選択肢に選ばれるべきです。(動脈硬化の未来塾 85)) (動脈硬化の未来塾 89))

脳動脈の専門病院によれば、脳動脈狭窄症の方が最近は増加中だそうです。

本例の脳動脈狭窄は、古典的な体重計を頼りに、血圧や中性脂肪の値を参考にしながら、体重が減少するから・・とか、中性脂肪の値が下がるから・・とか、血圧が安定するから・・・、とかの・・短期的な結果が得られる食事療法を信じ続けたことが原因でしょう。

本症例では、2018年頃はLDLが高めですが、脳外科の担当Drにスタチン剤を勧められなかったのは幸いでした。(動脈硬化の未来塾 52)) (動脈硬化の未来塾 68))

現代以降の未来では、血管プラークを健康の羅針盤として医療がなされなければいけません。

最近、痛切に感じるのですが・・
「血管を強くする」「LDL値を下げる」「中性脂肪値を下げる」「体重を減らす」「EPAが含まれているから青魚を推奨」などの従来からの健康常識を信じて、良かれと思って、毎日あるいは過剰に摂取した食品が、実は、逆に動脈硬化の急速な進行を招く結果となった事例が増えています。(動脈硬化の未来塾 54)) (動脈硬化の未来塾 63)) (動脈硬化の未来塾 66)) (動脈硬化の未来塾 76)) (動脈硬化の未来塾 78)) (動脈硬化の未来塾 86)) (動脈硬化の未来塾 87)) (動脈硬化の未来塾 88)) (動脈硬化の未来塾 90)) (動脈硬化の未来塾 94)) (動脈硬化の未来塾 95))

食品とプラークの増減を真剣に考えなければ、血管病(脳梗塞、心筋梗塞、認知症、・・・)は防げません。(食品だけでなく、酒類の過度の飲酒も動脈硬化の大きな原因です:書籍参照)


まとめ:
現在の医療における、脳動脈狭窄症の治療の第一選択は、内科的治療である「RAP食+EPA(EPA+DHA)製剤+ビフィズス菌製剤」と思われます。

あとがき:
「頸動脈プラーク」や「血管プラーク」でGoogle検索したら、過去には、当院の多くの記事がトップで検出されていました。
しかし、社会貢献できる記事を記載しているはずですが、最近では、どういう理由かわかりませんが、ほとんど検出されない事態になっています。(日本でもネット規制?:驚愕!)

つまり、友人や親戚の方々が、不幸・不利益にならないで済むチャンスが消滅することになります。
当院の記事を入院先のベッドで読まれて、やる気と希望が湧いてきた方も多いと思いますが・・・。

この記事も,縁のある多くの人に読んでいただきたいので、大事な方へは、記事や書籍「脳梗・心筋梗塞・高血圧は油が原因」(幻冬舎2018年)をご紹介ください。

2019年10月15日 記載
真島消化器クリニック
真島康雄


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