脳梗塞・心筋梗塞の予防法

RAP食などで大動脈弁石灰化が退縮し、症状が改善したと思われる大動脈弁狭窄症の1例。

心臓弁膜症の“大動脈弁狭窄症”、その原因のほとんどは、大動脈弁の石灰化を伴う動脈硬化と言われています。
(直接原因:弁にプラークが厚く溜まり石灰化することで、弁の動き・開放が制限される)
なお、“大動脈弁狭窄症”とは、「長期間は無症状で進行し、進行すると“疲れ易い”“息切れ”“動悸”“胸痛”などの症状が現れ、その後に心不全、突然死を来す事もある危険な病気」とされています。

そんな厄介な大動脈弁狭窄症が、食事と飲み薬だけで・・石灰化が退縮し、症状が改善する・・そんなウソみたいな治療法・・考えてみたことがありますか?

医学の常識ではあり得ないことですが・・・実際に経験できましたのでご報告します。

「今回の症例呈示に関連して、開示すべき「利益相反」関係にある企業はありません」

『症例提示』
症例 88歳 女性
主訴:「農作業で疲れ易くなった」(歳のせいと思っていたが、最近は“疲れ易い”)

現病歴:
2011年3月 自転車で転倒・・腰椎骨折
2015年4月 自転車で転倒・・左鎖骨骨折  その後、農作業にも従事し、特に病歴なし。
2021年2月中旬 介護保険申請の為、かかりつけ医を受診。心雑音指摘され、両足に冷感を伴う赤みあり。足先のチアノーゼ(紫色の皮膚)指摘受け、漢方(ツムラ38番、3P,3x+アスベリン錠(20)3T.3xの処方を受け、2週間だけ服用。総合病院へ紹介となる。

娘の勧めで、当院推奨のトコロテンを毎日1個食べるようにした。

2021年2月下旬 総合病院にて「大動脈弁狭窄症」の診断あり。5月にカテーテル検査予定となる。

2021年4月上旬 当院初診(当院受診中の娘さんに付き添われて)

食習慣点数=76点 食の好み:揚げ物:大好き、甘いもの:大好き、魚:好き、肉:好き。
両足の赤み+(足先の紫色は改善:娘さんによると、トコロテンを食べだして、少しずつ改善)&触診にて冷感+

<8カ所の血管エコー>
大動脈弁石灰化(++++)
腹部大動脈IMT =1.62 mm(A-max)
右鎖骨下動脈(近位)IMT =2.27 mm(S-max)
右鎖骨下動脈(遠位)IMT =2.03 mm(写真2)
左鎖骨下動脈IMT =2.19 mm(写真2)
右頸動脈分岐部〜内・外頸動脈IMT=1.35mm (C-max)
左頸動脈分岐部〜内・外頸動脈IMT=1.19mm
右総頸動脈IMT=1.07 mm 左総頸動脈IMT=0.77 mm
右大腿動脈IMT=1.80 mm(F-max)
左大腿動脈IMT=1.30 mm
******脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=2(0〜4)****** T-max=7.04 mm

<治療>
1)RAP 食
2)イコサペント酸エチル粒状カプセル(900)2,2x
3)ラックビー微粒N,2g,2x

<結果:エコー所見>
治療による大動脈弁石灰化の変化を(写真1)にまとめました。
1)治療後3ヶ月で、大動脈弁の石灰化の明らかな退縮を認め、6ヶ月後も石灰化は退縮中であった。
2)初診時には上行大動脈の壁まで石灰化傾向が認めたが、6ヶ月後にはほぼ正常レベルまで改善。(写真1)
3)心室の大きさが、6ヶ月目にはやや縮小。
4)大動脈弁の石灰化が退縮しただけでなく、その他の血管のプラークまで良好に退縮した。(写真2)

5)写真供覧以外の血管エコー所見。初診時→3ヶ月後→6ヶ月後と記載。
 右大腿動脈IMT=1.80→1.77→1.73 mm プラーク退縮中
 右総頸動脈IMT=1.07→1.02→0.97 mm プラーク退縮中

<結果:症状> (図1)参照

  1. 両足の冷感と、両足の低体温、両足の皮膚の赤みなど、3ヶ月目には全ての症状が消失した。(図1)
  2. 初診時は、農作業で易疲労感を覚えていたが、3ヶ月目には易疲労感がなくなり、6ヶ月目には朝の8時から12時半まで、芋掘りなどの農作業に従事しているも、“なんともない“との返答あり。(図1)

<考察>
1)私が調べ得た範囲では、大動脈弁の石灰化を退縮させて大動脈弁狭窄症を治療できた症例の報告は見当たりません。
2)弁の石灰化を伴う心臓弁膜症である大動脈弁狭窄症は不治の病です。
外科的には開胸手術である弁置換術、経カテーテル大動脈弁治療(TAVI)があり、80歳以上はTAVI を推奨されています。しかしながらTAVIをしても、1年で8.5%、2年で11.5%の人で、死亡・脳卒中・再入院の複合イベントが認められています。
もちろん、TAVIを施行する際の合併症も存在します。

RAP 食での治療では、身体各所のプラークも減らせますので、死亡や脳卒中、心筋梗塞も減らせる可能性が高まります。つまり、大動脈弁狭窄症の改善のおまけで、脳梗塞、心筋梗塞、認知症の予防などのプラークにまつわる病気も減らせることになります。

この88歳の女性には、「大動脈の石灰化(プラークが石灰化したもの)も減ることがあるので(動脈硬化の未来塾 82))、たぶん、大動脈弁の石灰化も減らせるかもしれません・・」と説明して、RAP 食を指導いたしました。

プラークを高確率で減らせる・・その実例は、加齢黄斑変性の改善(動脈硬化の未来塾 26))、脳動脈狭窄症の改善(動脈硬化の未来塾 102))、網膜動脈閉塞症の改善(動脈硬化の未来塾 123))、網膜静脈閉塞症の改善(動脈硬化の未来塾 71))・・・、高血圧症の改善(動脈硬化の未来塾 96)などで、杖なしでは歩けない人が走れるようになった(動脈硬化の未来塾 101)、などで(十分証明されているかと思いますが、今回は新たに心臓弁膜症の一つである“大動脈弁狭窄症”の改善事例を報告できました。

2)「SALTIRE(2005)、SEAS(2008)、ASTRONOMER(2010)」などの試験により、
心不全や大動脈弁狭窄症、石灰化大動脈弁狭窄症に対して、
スタチンは大動脈弁石灰化進行の抑止も、脳卒中・心筋梗塞などの抑止にも有効ではない事がすでに認められています。

コレステロール低下薬であるスタチンは有意にLDLを低下させますが、なぜ大動脈狭窄症の場合はスタチンが脳梗塞や心筋梗塞の予防薬として有効ではないのでしょうか? 

実は、LDLが高くても低くても、すべての場合においても、スタチンは脳梗塞・心筋梗塞の有効な予防薬ではないと考えたらスッキリします。

<まとめ>
大動脈弁の高度な石灰化を伴う大動脈弁狭窄症により、“易疲労感”と“末梢循環障害”を来して受診した88歳の女性に対して、RAP食とEPA製剤、ビフィズス菌製剤にて治療したところ、大動脈弁の石灰化が3ヶ月後に著明に退縮し、大動脈弁狭窄症の症状と思われる“易疲労感”と“末梢循環障害”の症状が消失し、6ヶ月後も継続して大動脈弁の石灰化の改善を認めた。

無症状から軽度の症状が認められる大動脈弁狭窄症では、RAP 食+EPA製剤+ビフィズス菌製剤が治療のファーストチョイスになりうると考えられた。

<つぶやき>
常識を覆した大谷さんはとても愉快そうです・・常識を覆すことは・・何よりにもまして快感ですから・・。でも・・引退を決意後のイチローさんの言葉が重いです。
興味深いのは・・雑誌の記者の最後の一言が・・私は医療界しかわかりませんが・・胸にグサッときました・・おそらく的を射ているのでしょう。
・・紙芝居にしました・・・


大動脈弁狭窄症を指摘され・・じっと・・不安な日々を過ごし・・悪化するのを待っている方・・

ご縁が繋がれば幸いです。

2021年11月1日 記載
真島消化器クリニック
真島康雄

 


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