脳梗塞・心筋梗塞の予防法

頸動脈狭窄症のプラーク3.0mmがEPA製剤&RAP食で1.0mm以下に退縮した1例

RAP食に取り組めば、max-IMT(プラークの最大の厚さ)はどこまで減りますか?
この問いには、2.0mm以下のプラークが1.0mm近くまで退縮するのは普通に期待できます。

でも、3.0mm以上のプラークが1.0mm以下に減るか?(動脈硬化が治るか?という質問に相当)・・この問いに対して、2007〜2010年当時は、動脈硬化は“改善する”とは言えても、“治ります”とは・・とても言えませんでした。

<症例報告>
「この研究に関して、著者が開示すべき利益相反関係にある企業などはありません」

49歳女性

2010年10月受診

体重62Kg  BMI=27.6 高血圧(-) 糖尿病(-)

<血管エコー>

  • 左頸動脈分岐部(横断)max-IMT=3.0 mm----(C-max)

<経過>

  • 2010年10月 受診・・・LDL=117 TG=78 HDL=62 H/L比=1.89 Cr=0.63
     左頸動脈分岐部(横断)max-IMT=3.0 mm(写真呈示)
    EPA製剤1800mg/日-開始  (閉塞性動脈硬化症 頸動脈狭窄症)
    食事指導(旧式RAP食
    (揚げ物・油炒め・ブタ脂や牛肉の霜降り肉を制限、甘い物の過食を制限、魚は推奨
  • 2013年8月 左頸動脈分岐部(横断)max-IMT=2.6 mm(写真呈示)
  • 2014年3月 左頸動脈分岐部(横断)max-IMT=2.72 mm
    (ビフィズス菌製剤1gx2/日開始) (慢性便秘症)
  • 2014年10月 左頸動脈分岐部(横断)max-IMT=2.31 mm
  • 2015年1月 左頸動脈分岐部(横断)max-IMT=2.14 mm
  • 2015年4月 左頸動脈分岐部(横断)max-IMT=2.01 mm
  • 2015年7月 左頸動脈分岐部(横断)max-IMT=1.92 mm(写真呈示)
  • 2015年10月 左頸動脈分岐部(横断)max-IMT=1.80 mm
  • 2016年1月 左頸動脈分岐部(横断)max-IMT=1.81 mm
  • 2016年5月 左頸動脈分岐部(横断)max-IMT=1.81 mm
    (青魚・白身魚などの脂の多い魚を制限)
  • 2016年8月 左頸動脈分岐部(横断)max-IMT=1.55 mm
  • 2016年12月 左頸動脈分岐部(横断)max-IMT=1.49 mm
  • 2017年7月 左頸動脈分岐部(横断)max-IMT=1.40 mm
  • 2017年10月 左頸動脈分岐部(横断)max-IMT=0.99 mm(写真呈示)
  • 2018年1月 左頸動脈分岐部(横断)max-IMT=0.89 mm

<結果>

  1. 7年後に、約30%の頸動脈狭窄(プラーク3.0mm)状態がほぼ正常レベル(0.99mm)までに改善
  2. スタチン剤でLDLを100以下に下げることなく、EPA製剤&食事療法でプラークは正常レベルまで退縮した。
  3. 2010年〜2013年にかけてのプラーク改善スピードは緩やかで、青魚の脂もプラークの原因物質であることが判明し、青魚および脂の乗った白身魚を摂取制限した2016年以降のプラーク改善速度は2倍以上に速くなった。

<考察>

  • プラークが極めて良好に退縮した理由の一つに、スタチン剤の不使用が考えられる。
    (動脈硬化の未来塾 52)) (動脈硬化の未来塾 77)) (動脈硬化の未来塾 68))
  • 本例はLDLが低いのにプラーク3.0mmであり、LDLは本例のプラークの主な原因ではないと考えるのが妥当と思われる。(動脈硬化の未来塾 77)) (動脈硬化の未来塾 76))
    それを裏付ける証拠として、LDLが200以上のままでもRAP食でプラークが改善する症例も存在する。
    (動脈硬化の未来塾 75))
  • また、
    1)一般的に食品が動脈硬化の原因の一つである事は周知の事実である。
    2)食事の内容でLDL値は変動しない(食前・食後のLDLはほぼ同じで、前日に高脂質の食事をしてもLDL値は高値にならない)のも事実である(検査会社CRCのホームページより)。
    この2点を考えると、血清LDL値を動脈硬化の中心的な指標に位置づけた科学的根拠に疑問符が生じる。
  • 頸動脈狭窄が進行すると頸動脈ステント留置術を治療の選択肢として医療機関に呈示されることが多いが、術後に脳梗塞を起こすなどの合併症もあり、内科的治療であるEPA製剤またはEPA+DHA製剤&RAP食による治療が第一選択肢として検討されるべきであると考えられる。
    (動脈硬化の未来塾 35))
  • 本例の時系列の経過に於いて、ビフィズス菌製剤の処方と、脂の乗った青魚(サバやサンマ)の制限はプラーク改善に有効な策だったと思われる(動脈硬化の未来塾 53))
    なお、昨今流行しているサバ缶を頻回に食べてプラークが悪化した症例があり、定期的な血管エコーを行うなどしてプラークの増減を観察するべきである。

<まとめ>

  1. 頸動脈狭窄症がスタチン剤を用いることなく、EPA製剤とRAP食によって治療可能であった症例を報告した。
  2. 頸動脈狭窄症を血管エコーで認めた場合は、「プラークの進行防止を期待して、まずスタチン剤を処方してLDLを下げて、LDL値を経過観察し、プラークが進行すればステント留置を検討する」のが現状の医療の標準とされている。しかし、プラークが高度に肥厚した時点で観血的に治療するよりも、中等度に肥厚した時点でEPA製剤またはEPA+DHA製剤とRAP食による積極的なプラーク改善策が試みられるべきである。


2018年7月27日 記載
真島消化器クリニック

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