脳梗塞・心筋梗塞の予防法

頸動脈狭窄症のプラークは手術・ステント留置術を受けないでも、スタチン不使用でも改善(治療)できる。

71歳 男性の症例 

食事(RAP食)とEPAによる治療継続中ですが、4年4ヶ月後に55.6%の頸動脈狭窄症(プラークの最大肥厚=5.2mm)が30.6%狭窄(プラークの最大肥厚=2.58mm)までに改善しました。

***手術を考える前に「RAP食&EPA服用」を***

もちろん、LDLを下げる働きがある(肝臓でのLDL合成阻害)スタチン剤は使用していません。
****スタチン剤を使用しないことが"プラーク治療のコツ"です****

スタチン剤不使用がプラーク改善に好影響を与えたとも思われます。
(敵を倒すには・・敵に油断させる・・ことが最高の戦略)・・ 油断大敵です
(2014年11月 その後のプラークの経過を追加掲載)

(2015年11月 その後のプラークの経過を追加掲載)

コメント:左の総頸動脈はスタチン不使用の効果(コレステロール低値に油断することなく食習慣改善に取り組む姿勢を堅持できる効果)で順調にプラークが退縮し、頸動脈の直径も本来の直径へと縮小し、流速もアップしています。

ただし、今回は右の総頸動脈のプラークは悪化しています。

このような現象は時に認められますが、その理由とは・・・「プラーク悪化の理由:前回まで順調にプラークが改善中でしたので、この半年は・・焼肉、中華料理、規定量越えの飲酒が何度もあり、そのためのプラーク悪化と思われます。」

プラーク改善の理由:左総頸動脈のプラークが改善しているのは・・狭窄場所によって、その程度が強い場所を優先的に・・マクロファージは掃除(貪食)する傾向にあります。

プラークの掃除が優先的に、多数のマクロファージを動員して行われている場所であるために、左総頸動脈がプラークの悪化という結果になっていないだけでしょう。本来ならもっとプラークは改善していたと考えられます。

プラーク改善を評価する際は、食習慣をその都度具体的にお聞きして・・2カ所以上の血管で観察する必要がありそうです。

(2017年5月 その後のプラークの経過を追加掲載)
RAP食実行中・・右頸動脈のプラークも改善。5年間で頸動脈プラークの56%狭窄が―>24%狭窄まで改善。

(2019年9月 その後のプラークの経過を追加掲載)

8年間のRAP食でついにここまで来ました。

55.6%狭窄が15.0%狭窄までに改善しました。免疫抑制剤でもあるスタチン剤を使用しなかったことが効を奏したのでしょう。

中国出張をこなしながら、好きなウナギもたまに食べて・・、好きなゴルフは疲れにくくなり・・、顔が引き締まり、初診時よりも若くなられました。

2011年1月の左総頸動脈は拡張し、流れも悪かったのですが、2019年4月ではプラークが激減していますので、血管の直径もかなり小さくなりました。(同じ条件、同じ拡大率で撮影) 頸動脈狭窄症は、プラークを正確に測定し、RAP食を正しくすれば多くは治ります。プラークに対するステント留置術、内膜剥離術は重篤な合併症の危険もありますので、まずはRAP食での治療をお勧めします。

その他の頸動脈狭窄症の症例も参考になることでしょう。
(動脈硬化の未来塾 85)) (動脈硬化の未来塾 84)) (動脈硬化の未来塾 89)) (動脈硬化の未来塾 1))
スタチン剤は・・全く不要です。理論・権威よりも画像(写真判定)を信じましょう。ショックでしょうが・・スタチン剤でプラークは減らないのです。お疑いなら・・どれだけプラークを減らせるか? 2004年以降の論文でお調べください。(2004年に「企業中心の臨床試験の多くは信頼できない」ということが公で議論になり、臨床試験に対する罰則付きの新規制がEUで制定され発効)

2017年6月1日追記

(2014年11月 臨床医のために・病歴・臨床経過の要約を追加掲載)

2011年1月のプラークと比較して2013年10月のプラークは明らかに減少(退縮)しています。(写真の拡大率は同じ)
また、実際に血液が流れているスペースが赤く表示されていますが、そのスペースは広くなり(青矢印)、赤色が黄色に変化していますが、これは流速がかなり速くなっていることを意味します。

なお、頸動脈狭窄が改善したら総頸動脈自体の直径が細くなっています。
これは、プラークが堆積することで、頸動脈周囲の組織が圧排されて血管自体が太くなるという単純な物理的変化なのです。

そのために50歳以上の頭痛の原因ともなっているでしょうし、血管プラークをMRIでは詳細に検出不能(異常なしという結果)であることも納得できる現象です。

つまり、脳のMRIでは脳梗塞の予知・予防は困難なのです。

以下にこの症例の過去と現在までの経過を呈示します。

2011年1月 かなりの遠方から受診されました。初診時の8カ所の血管エコーを以下に呈示します。

71歳・男性 中小企業の社長職で、倒れると従業員とその家族、自分の家族と自分が困る立場です。

家族歴:父:76歳で脳卒中にて他界。

食歴:肉大好き、揚げ物大好き、甘い物大好き、魚大好き、野菜大好き、酒:飲まない。タバコ:吸わない。
食習慣点数=848点 危険レベルです(食習慣点数:私の著書に掲載)

現病歴:
1998年1月(58歳) 高血圧&痛風で服薬開始。この頃からバイアスピリン(100)1錠の内服開始。

2003年1月頃:〜現在までSAS:睡眠時無呼吸症候群にて夜間にシーパップ開始(マウスピースみたいなもの)。

2005年10月頃:“頭がふわ〜“とする感じで、頭部MRI施行=異常なし。 (バイアスピリン(100)1,1服用中)

2010年10月 :脳ドックで頭部MRI施行=異常なし。

2011年1月に当院初診。(上記8ヶ所の血管エコー:プラーク++++)
御自身の手持ちの採血データはなく、
初診時の採血データ:LDL=151 TG(中性脂肪)=106  HDL=56
体重68Kg BMI=26.2 右総頸動脈プラーク=2.3mm 左総頸動脈プラーク=5.2mm その他は写真参照。

治療:
血管プラーク肥厚が高度な場合は、バイアスピリン(100)1Tでは脳梗塞を予防できない場合があり、しかも2005年にはバイアスピリンを服用中にもかかわらず、頭のふわ〜感の症状がみられ、脳梗塞の直前状態であることが推察されますので、
1)エパデールS(900)2,2xを追加で服用開始。
2)スタチン剤の服用は必要ないと説明(エビデンスは当サイトに掲載)。
3)当院の食事療法(参照1)と別枠の食事療法(当院受診された方でレベル4以上の方や治りが悪い方へのみ配布のパンフ)を実行していただく。

経過:
2011年4月 ゴルフで疲れにくくなった。
LDL=125 TG(中性脂肪)=114  HDL=43

2011年6月 かねてより勧められていた冠動脈ステント留置術を受ける(3カ所:75〜90%狭窄にて) 更に追加薬でプラビックス(75)1T開始。

2011年7月
右総頸動脈プラーク=2.2mm 左総頸動脈プラーク=測定なし

2011年11月
右総頸動脈プラーク=2.1mm 左総頸動脈プラーク=5.0mm

LDL=106 TG(中性脂肪)=81  HDL=59

2012年12月
右総頸動脈プラーク=2.0mm 左総頸動脈プラーク=4.2mm

LDL=106 TG(中性脂肪)=90  HDL=60

2013年10月
右総頸動脈プラーク=1.9mm 左総頸動脈プラーク=3.8mm

LDL=105 TG(中性脂肪)=115  HDL=47

コメント:
1)最初の写真の様に動脈硬化(プラーク)による頸動脈狭窄は改善中ですが、スタチン剤は不使用でLDLは食事療法にて低下し、HDLはやや上昇。
SASもいつの間にか治ってしまいました。初診時よりも顔が締まり、若くなり、顔に吹き出ていた皮脂もなくなりました。体調がすこぶる良好で、いつ倒れるかという不安もなくなり、現在も仕事に励まれています。

2)血圧が高くなった58歳の時点でこの検査を受けて、食事療法&薬物治療を行えば、冠動脈ステント治療やSASの治療などで、多額のお金と時間を費やすこともなく過ごせたと思います。
プラークの原因は、お父様ゆずりの食習慣なのでしょう。お父様も倒れる前にこの検査と治療を受けられていれば、天寿までお元気だったに違いありません。

この方は幸いにも58歳時点で抗血小板剤のバイアスピリンの内服が開始されていますが、もし服薬がなかったならば、現在までに脳梗塞をすでに発症されていたに違いありません。

3)動脈硬化:プラークはRAP食を守れば多くの人が改善します。
ただし、血圧が下がった!、A1cが下がった!、体重が減った、禁煙できた!、体脂肪が減った!、LDLが下がった!、L/H比が下がった!、脳のMRIで異常なし!、減塩している!、運動もしている!、・・などと安心し、心に油断が生じ、好きな物を食べ、好きなアルコールを多く飲むなら、いかなる薬を服用しても、プラークは決して改善しないでしょう。

4) 頸動脈狭窄を指摘された方へ。
安易に手術や頸動脈ステント留置術などの治療を考えないようにしましょう。まず、飲・食習慣を完全に改めることが先決です。
血管エコーを受けて、かけがえのない自分の健康=自由の大切さを肝に銘じ、具体的に食習慣を改めれば、プラークは確実に減ることでしょう。

5) スタチン剤でLDLを下げる事で本当に頸動脈狭窄の治療になるか?
LDLが低いのに頸動脈狭窄症になる方も多く、スタチン剤の働きは肝臓でLDLが作られるのを邪魔することでLDLを下げる・・・訳ですから、食前食後でLDLの値はほぼ同じといわれています。

また、健診の前日に軽めの夕食にした場合のLDL値よりも、健診前日の夕食に焼肉&お酒の食事をした方が、次の日の採血でのLDLは低いのです。(検査会社CRCのホームページより--健常者2人の実験--)

ということは・・・オリーブ油やエゴマ油などの植物油を多く頻回に摂取しても、脂肪リッチな食事やアルコールを多飲しても・・担当医はLDLが上昇しないので(TGが上昇しても)・・あまり食習慣で注意されることはないでしょう。・・これが動脈硬化(プラーク)の進行を防止できない・・動脈硬化を改善出来ない理由の一つです。

LDLが低いからこそ、脳梗塞や心筋梗塞になる“からくり”の一端が理解できます。

スタチン剤で「悪玉=LDLと宣伝されたLDL」が低下して油断した人々や・・元来LDLが低い人々や・・ダイエットに成功した人々など・・・血管エコーを受けないでLDL値だけで医療を受けていると・・・LDLが低いという安心感が増し・・でも・・逆にプラークの肥厚は進行し・・脳梗塞・心筋梗塞・認知症・腎不全、等々で倒れ易くなるかも・・・真実を知り得た私のつぶやきです・・。

可能なら・・スタチン剤を止めて・・EPA剤またはEPA+DHA剤に変更可能か主治医にご相談ください。その際は、くれぐれも「今まで、食事療法をあまりしてこなかったので、食事をがんばってみますので・・スタチン剤をしばらく止めて、様子をみていただいてもよろしいでしょうか?・・」と相談しましょう。多くの主治医は・・とりあえずは・・納得されるに違いありません。

スタチンなしでもLDLが本例のように低下し、主治医も驚かれることでしょう。

<LDLと血管プラークとの関係>
日々血管プラークと向き合って真実が見えてきました。LDL値と頸動脈プラークなど、全身8カ所の血管エコーから得られたデータを男女別に掲載します。

S-max=右鎖骨下動脈分岐部周辺のプラークの高さの最高値(mmで表示)
F-max=左右の大腿動脈分岐部周辺のプラークの高さの最高値
C-max=頸動脈分岐部周辺から総頸動脈におけるプラークの高さの最高値
A- max =腹部大動脈分岐部周辺から左右の総腸骨動脈におけるプラークの高さの最高値
T-max= S-max+ F-max+ C-max+A-max ・・・動脈硬化の総合指数といえる。

結果:男性のLDL値とプラークの肥厚との関係は、8カ所全ての部位において認められません。

次に、女性の場合を検討しました。

結果:女性の場合は、LDLが140以上の例において、明らかにプラークがより堆積していました。その結果、T-maxでも有意差を認めました。

初めて男女別にプラークとLDLとの関係を検討しましたが、図らずもS-maxの測定が、女性の場合に重要であることが判明致しました。

しかしながら、頸動脈プラークの程度とLDL値との関連は男女共に認められませんでした。

・ ・・・このことから、LDLをスタチンで下げる事で頸動脈狭窄が改善するという期待をもてるでしょうか?。・・・LDLは食習慣の改善とEPA服用で自然に低下します。(参照3

スタチン剤を飲んでLDLを下げても、口に入れるケーキや脂身の多い肉や揚げ物の油が身体の中で消えるなどということは、全く考えられません。

追記:「脳梗塞・心筋梗塞にならない食べ方」の項目の内容は、食事とプラークの関係の研究結果を踏まえて随時修正していますので、ご確認下さい。

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