脳梗塞・心筋梗塞の予防法

一過性黒内障も動脈硬化(プラーク)が原因です。頸動脈エコーで異常なしでも。

“一過性黒内障“という病気・・ご存じですか? 最近増えています。
片眼の視野の一部が急に欠損する(急にシャッターが降りたように)病気で、数分で元に戻ることが多いようです。 何かの前兆!?と怖い病気ですね。眼科では原因が不明のことが多いです。

一般に、一過性黒内障は頸動脈狭窄がある人がなりやすく、一過性脳虚血発作(TIA)と同じ現象と考えられています。 

つまり、一般的には頸動脈プラーク(動脈硬化の未来塾 31)が剥がれて飛んで、眼で得られた情報を認識する脳の組織が一過性の循環障害に陥って生じる現象(一過性脳虚血発作)の一部とされています。

その他、網膜動脈閉塞症の前駆症状として、網膜動脈のプラークによる狭窄部分が一過性に流れが閉ざされて生じる場合もあるとされています。

原因が同様の病気に、眼底出血で発見される網膜静脈閉塞症(動脈硬化の未来塾 71))という病気もあります。

しかし、大部分の脳梗塞は前述のごとく、頸動脈のプラークが剥がれて脳へ飛んで脳梗塞になるのではなく、脳内の脳動脈自体がプラークによって狭窄し、その部分の血流の一時的な遮断で生じると考えられますから、一過性黒内障も同様の機序だろうと思われます。

当院が開発した、スタチン剤を用いないプラーク退縮法(68)スタチン製剤でLDLを下げる・52)動脈硬化の治療にスタチン剤・・・・69)RAP食とEPA製剤で頸動脈などのプラークは治せるに真摯に向き合えば、脳動脈のプラークを減らすことが可能です。

そして、一過性黒内障の再発をなくすことが可能です。(高速道路で、車の運転中に一過性黒内障や脳梗塞になれば極めて危険です)

しかも、一過性黒内障は脳梗塞の明らかな“前兆”ですので、プラークを退縮(小さく)させることが出来れば・・将来発病する脳梗塞を未然に・・未病で治すことになります。

症例呈示  以下Case 18です。
(Case18症例の要約)

  • 1992年頃から高脂血症を指摘されている
  • 1997年頃から現在まで毎日20年間、パン食を1〜2回(パンにマーガリンを付けて)
  • 2017年1月頃まで親の介護で忙しかった
  • 2017年2月 CAVI血管年齢検査: 60歳代の血管 特に問題なし
  • 2017年5月1日頃から毎日エゴマ油の小さじ1杯を料理にかけて1カ月間続けた。
  • 2017年5月7日 PM2時頃に右の半分が急に欠けて見えなくなった(2-3分間)。
  • 2日後近医の眼科受診:眼底検査で異常なし LDL=182 TG=64 HDL=73
  • 6日後近医の脳外科受診:脳MRI異常なし
  • 19日後 某大学脳外科受診:脳MRI異常なし
  • 23日後 同大学脳外科:頸動脈エコーで異常なし
  • 33日後 同大学眼科受診:眼底など異常なし
  • 2017年8月 LDL=134 TG=65 HDL=74 (食事療法&運動のみでスタチン剤服用なし)

2017年9月 当院初診
    以下は初診時の8カ所の血管エコー

(8ヶ所の血管エコー所見)

  • 頸動脈は特に異常なし
  • 右鎖骨下動脈、腹部大動脈、左右の大体動脈に厚さで2.0mm以上のプラークを認める。
  • 脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=3(0〜4)

 

(考察)

  • 頸動脈のプラークの一部が眼底の網膜動脈へ飛んだとは考えられない。
  • 頸動脈以外の動脈に2.0mm以上のプラーク堆積があることから、視野をコントロールしている脳組織が一時的に血流障害に陥ったものと考えられます。その背景としては、その部の脳血管にプラークが堆積して狭窄を起こしている部分が存在する・・と推測可能です。
  • 発症の因果関係としては、元々狭窄している血管が存在し、更にエゴマ油の毎日摂取が血液の粘度急速に高めて一時的にその部での閉塞状態になった可能性も否定できません。一般に植物油は抗血小板剤としての弱い作用があります(医学的には血液サラサラと表現)が、物理学的(理科的)には血液の粘度は上がり・・ドロドロになるのです。

 

自験例の19例の一覧です

実際はMRIや頸動脈エコーにて異常が見つからず、一過性黒内障の原因が不明とされる場合も多いのですが、一過性黒内障になった場合には頸動脈に限らず身体の血管(動脈)のどこかにプラークが溜まっているという事実があります(上の表)。

つまり、「大部分の一過性黒内障は頸動脈からプラークがちぎれて飛んで起こるのではなく、眼の情報を処理する脳組織を栄養する動脈または網膜動脈にプラークが堆積して狭窄を生じ、血液の粘度が上昇した場合にその部が一過性に閉塞状態になることで発症する」と考えた方が自然です。

一過性黒内障を発症したら、まず8カ所の血管エコーを受け、抗血小板剤を服用しながら、RAP食に真摯に向き合い、プラークを減らす努力をすれば、一過性黒内障どころか将来の脳梗塞のリスクも消滅させることが出来るのです。

ご家族・親戚・友人・知人などに、一過性黒内障の症状が過去にあり、何も対策がなされていない方がおられましたら・・ぜひこの情報をお伝えください。

2017年12月13日記載
真島消化器クリニック

追記:(2023年8月27日)
Case 18のその後をご報告いたします。

<治療>
・RAP食開始
・エパデールS(900)2P,2x開始
・ラックビー微粒N,2g,2x―開始

<経過>
1)写真のごとく、観察ポイントの全てのプラークが経時的に退縮した。
2)初診時以降に2022年9月の受診時まで、一過性黒内障の再発は認めていない。

3)本人のご希望にて、初診時前からスタチン剤の服用はなく、2022年9月にはLDL=154ですが、プラークは改善を続けており、悪化する気配はなし。

<まとめ>
現在の私の私見ですが、一過性黒内障は、抗血小板剤(多くはEPA1800mg/dなど)を服用しながらRAP食(2022年以降の全ての記事を熟読の上)を励行し、プラークが継続して退縮すれば、再発は起こらないものと考えられます

一過性黒内障を予防できていますが、プラークが明らかに減少していますので、将来の脳梗塞・心筋梗塞のリスクも限りなく低下しているでしょう。
同様に、認知症のリスクも極めて低くなっていると思われます。

<備考>・・・・・・・・・・・・・・・
<プラークが減ることのインパクト・価値観>
プラークをリアルに、定期的に観ることができるDr なら、「死亡例や脳梗塞・心筋梗塞発症例をカウントして比較する・・・そんな可哀想で残念な動脈硬化に関する疫学調査の研究」には、倫理的に参加されないでしょう。

例えば、カメラ&AI搭載の衝突回避可能車と、カメラ搭載のない普通の車に人を乗せて、10〜20年間にそれぞれ何人の人が怪我・死亡したか?という疫学調査を行う様なものです。
(カメラ&AI搭載の衝突回避装置≒全身の血管エコー&AI搭載のプラーク観察装置)
人や物体に衝突しない車を開発できれば、交通死亡例が減るのは当たり前ですが、一方でプラークが減れば脳梗塞・心筋梗塞の死亡例が減るのは当たり前です。

阿蘇山と富士山を麓から見上げた経験では、両者の高さを比べるための測量をする気さえ起こりません。

プラークを減らせた時の最初の感動は、富士山を麓から初めて見上げた時の感動に非常に似ているのです。

<加齢黄斑変性・網膜静脈閉塞症・網膜動脈閉塞症などは視力低下に至る>
眼科の病気である網膜静脈閉塞症は視力低下に至る病気ですが、その原因や治療も一過性黒内障と同じです。(動脈硬化の未来塾 66)) (動脈硬化の未来塾 71))

また、失明に至る加齢黄斑変性という病気も動脈プラークが原因です。(動脈硬化の未来塾 124))  (動脈硬化の未来塾 26))

また、高度な視力低下に至る網膜動脈閉塞症という病気もプラークが原因です。 (動脈硬化の未来塾 123)

なお、誤った食習慣(動脈硬化の未来塾 83)) (動脈硬化の未来塾 72))などで、「急速にプラークが肥厚したのが原因」と思われる例を多く経験します。
くれぐれもご注意ください。

一過性黒内障・網膜静脈閉塞症・網膜動脈閉塞症・加齢黄斑変性などで悩んでおられるなら、眼科受診後、ぜひご相談ください。

2023年8月26日記載
真島消化器クリニック
真島康雄

 

「脳梗塞・心筋梗塞の予防法」目次へ戻る

Dr.真島康雄のバラの診察室

携帯版のご案内

お知らせ

リンクページ