脳梗塞・心筋梗塞の予防法

最新RAP食により、2.0ヶ月で血管プラークが改善した1例。その理由とは?

最新のRAP食*(備考に後述)によって2ヶ月でプラークが目に見えて改善した1例を呈示します。

<症例報告>
「この研究に関して、著者が開示すべき利益相反関係にある企業などはありません」

症例 59歳 男性

<家族歴>
父:76歳で脳梗塞-片麻痺・・79歳で他界
母:68歳で脳梗塞・・寝たきり・・68歳で他界

<主訴>
健診目的 (自由診療)

<一般的診察>
2018年2月*日 当クリニックでBP=102/60 不整脈なし BMI=21.5 (中肉中背)
    LDL=100 TG=45 HDL=50

<受診時の症状>
肩こり++(2008年頃から)
足首の痛み(寒いとき:2016年12月〜)

いびき(最近)
こむら返り(最近)
便秘(最近)

<初診時の8ヶ所血管エコー>

  • 腹部大動脈IMT=2.08 mm(石灰化)----(A-max)
  • 右大腿動脈IMT=1.10 mm
  • 左大腿動脈IMT=1.12 mm----(F-max)
  • 右鎖骨下動脈IMT=1.42 mm----(S-max)
  • 右頸動脈分岐部IMT=1.48 mm
  • 右総頸動脈IMT=3.11 mm-----(C-max)
  • 左頸動脈分岐部IMT=0.89 mm
  • 左総頸動脈IMT=1.23 mm

<受診までの食習慣、他>

  • 2008年春頃から〜多くの種類のサプリメントを服用中。
    (グランベリーCap.2個/日、アルギニン粉末/日、水素Cap2個/日、DHA+EPA Cap 6個/日、Vit E Cap 3個/日、酵素6個/日、カルニチン錠1t/日、αリポ1個/日、コエンザイムQ10 1個/日、カルシウム2個/日)
  • 母国のDrに勧められて2014年9月から2017年9月末まで3年間もココナッツオイル毎日大さじ1杯飲用。
  • 2016年9月〜2017年9月末まで、1年間・・大さじ1杯のオリーブオイルを飲んでいた。
  • 2015年頃〜2017年9月末まで、2〜3年間・・ほぼ毎日のサラダにエゴマオイルorアマニ油をかけて食べていた。
  • その他の食習慣は自営業なので長年、妻と同じ。

<治療>:
2018年2月*日から最新RAP食開始

症状・経過から
1)EPA製剤(900)2P(朝1、夕1)+ビフィズス菌製剤:2.0g、2x  服用開始
  (自由診療)
   EPA製剤は抗血小板(血液サラサラ)剤としての効果を期待

2)最新RAP食指導(食事療法:食習慣の修正、他)

<治療経過-血管エコー所見>
2018年4月*日(初診から59日目:2.0ヶ月後)
<8ヶ所血管エコー>
    2018/2/*(初診)------------------------------------→2018/4/*(59日後)
・右総頸動脈IMT=3.11 mm-----(C-max)------------→2.76 mm(退縮)

<治療結果>
最新RAP食開始して
1) 2.0ヶ月で右総頸動脈のプラークが 3.11 mm→2.76 mmへ0.35mmも明らかに減少し、その部分の血流が増加しました。

<考察>
1)本例は、受診時に右総頸動脈が50%以上もプラークで狭窄し、同居の奥様とは長年にわたり3食同じ食事でした。奥様は年相応のプラーク堆積であったので、本人のプラークの原因は・・・奥様と異なる食品の摂取であると思われます。

夫婦で異なる食習慣ですが、本人のみが母国のDrの助言や各種の健康情報に惑わされ・・植物油の頻回多量摂取によりプラークが急速に堆積したものと考えられます。
(動脈硬化の未来塾 54))(動脈硬化の未来塾 63))(動脈硬化の未来塾 72))(動脈硬化の未来塾 76))

本人が2〜3年間も摂取していたココナッツオイル、オリーブオイル、エゴマ油、アマニ油を完全に止めたことが最もプラークの改善に効果的だったと思われます。

各種の植物油を健康のために頻回に摂取することは健康のためには逆効果であることを認識下さい。

また、糖質制限で脂質成分をより多く摂取する場合、上記のような植物油や大豆食品、青魚などの脂質豊富な魚の過食にはくれぐれも御注意下さい。

2)この症例は、頸動脈狭窄になるまでに動脈硬化が進行しても、初診時は 血圧=102/60 BMI=21.5 LDL=100 TG=45 HDL=50・・・・でした。 つまり・・
  • 植物油の過剰摂取でも、LDLやTGが低い場合があります。
  • プラークが多く堆積しても高血圧にならない場合もあります。
  • LDLが高くないこの方が脳梗塞の直前状態であることは、頸動脈エコーを施行しなければ、きっと想定外であるに違いありません。(動脈硬化の未来塾 74))
  • また、スタチン剤で無理やりLDLを下げて、LDLが低値になっても脳梗塞の危険は回避出来ません。(動脈硬化の未来塾 68))(動脈硬化の未来塾 52))

3)たとえ血圧が低下しても、多少プラークが減少しても、多少LDLやTGが下がっても・・食品由来の薬であるEPA製剤やEPA+DHA製剤の服用はサラサラ薬としての役目がありますので、自分の判断で決して止めないようにしましょう。

それらの薬の利点は、「少しだけ血液をサラサラにする副作用の最も少ないお薬」とお考え下さい。

4)この症例の1例だけでも血圧測定と採血・心電図だけの職場健診は、突然死などの原因である動脈硬化(プラーク)の程度を判定できる健診ではない・・という事が・お判りいただけるでしょう。
(頸動脈エコー検査のない健診では、脳や心臓などで突然死しそうな人を見つけるのは困難です。)
(血管エコー実例・研究をビジュアル解説 14))

現代の60歳以上の日本人は動脈硬化(プラーク)がかなり進んでいる事実(動脈硬化の未来塾 51))がありますので、くれぐれも御注意下さい。

<備考>

『(2019年頃までのRAP食には、腸内細菌叢に対する配慮が・・・完全に欠如していました)
最近のRAP食は、「腸内細菌叢のバランスを破綻させない食品を摂取していれば、免疫システムが正常に機能する」との・・考えから、脂質摂取の目安を、1日25g程度(昭和35年の日本人の平均脂質摂取量)に緩和しています。』

この記述は、2022年10月5日付で、ホームページの「脳梗塞・心筋梗塞の予防法」の「血管エコー実例・研究をビジュアル解説」項目の29)脳梗塞・心筋梗塞にならない食べ方&プラークを低下させるための要件(RAP食)に記載済み。

この記事を最初に書いた2018年7月までのRAP食の考え方は「いかなる油・脂であっても、必要以上の(過度の)脂質摂取を控え、糖質制限をせず、果物は適量の摂取を心がける」
という・・単純な内容でした。

2018年8月の当時は、最新RAP食として完成したかのように見えていましたが・・完全な認識の誤り・・でした。

RAP食は常に進化しますので、今までの常識では健康に良いとされている食品・食品添加物などは・・くれぐれも・・ご注意ください。食に関する最新の情報・バージョンアップの情報は、上記の(RAP食)のページに追記の形で記載しています。

動脈硬化を治す・・プラークを減らす・・「医学用語ではプラークを退縮させる」・・この歴史的な難題解決のためのRAP食の開発・・の完成には・・まだ・・未知の仕組みの解明が・・あと・・もう少し・・ですが・・必要です。
(2023年4月24日:<備考>の記述を修正)

<結論>

1)プラークの原因となっている食習慣を突き止め、どこでも誰でも出来るRAP食に取り組めば、多くの人で脳梗塞・心筋梗塞・認知症などのリスクは遠のき、リスクの消滅も期待できます。

2)動脈プラークは、症例によっては最短2ヶ月で退縮の判断(1ヶ所で0.30mm以上の改善)が可能であることが判明しました。

コラム:

私の元々の専門領域は超音波(エコー)装置を使っての診療「肝細胞癌の早期診断と早期治療」です。33年前の久留米大学在籍中に開発したMajima needle を紹介します。

33年前は太さ0.6mmの普通のPTC針を肝腫瘍に刺して、バラバラに採取された細胞の形態で診断する細胞診を行い、悪性度が高い場合のみ確定診断が可能でした。その針に工夫を重ねて開発された同じ太さ0.6mmのMajima needle(真島針)は組織を塊で採取できるので、2018年の今日では全国の多くの大学病院などで採用され、画像診断で診断困難な肝腫瘍が悪性であるかどうかの標準的な確定診断法として医療に貢献しています。

なお、私の学位論文は、肝細胞癌の発育速度に関する論文で、エコー装置で肝がん結節をミリ単位で経時的に測定した結果と、生検などで得られた肝がん組織を対比した研究です。

ですから今までの血管エコーの写真も全て正確な測定を心がけて、経時的に科学的な観察に耐えると思われる像で撮影しています。

“納豆”や“青魚”や“植物油”の頻回摂取でプラークが肥厚する現象を発見できたのも・・同じ断面で、経時的に、しかも正確にプラークを測定してきた結果の賜です。

<あとがき>
顕微鏡が発明されて、恐ろしい感染症に対する対策が格段に進化しました。望遠鏡の発明で天動説が覆され、火薬&鉄砲の発明は日本の歴史を180度変え、人工衛星の発明で、日本から“てるてる坊主”の風習が消えました。

血管内がリアルに見える超音波装置の発明で、LDLの値にかかわらず、プラークを“経時的”に“正確”に観察できる医療施設が増え、T-maxが活用されれば現在の動脈硬化の理論が覆され、医療の方向性が変わり、疫学調査の手法もより科学的になることでしょう。でも40年後かもしれません。



2018年7月11日 記載
2023年4月24日 <備考>の記述を修正
真島消化器クリニック
真島康雄

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