久留米市野中町の肝臓内科・血管内科・消化器内科・乳腺内科です。電話:0942-33-5006
Ornish教授の “ライフスタイル変更” 医療の最も基本的な部分はプラントベースで小魚容認・加工食品敬遠の低脂質食です。
しかもスタチンは使用しない、
Ornishプログラムによる食事療法は・・・・本質的にはRAP食と同じです。
ですから、
Ornish医師のライフスタイルの変更による数々の業績や新発見(動脈硬化の未来塾 160)) (動脈硬化の未来塾 161)) (動脈硬化の未来塾 162)) は、
RAP食の健康に対する有益性を、科学的に証明していると言っても過言ではありません。
Ornish教授はライフスタイルの変更を医療として捉え、その長年の臨床経験から、AD(アルツハイマー病)も改善するはずだと考えました。
Ornish教授らは、2018年9月〜2022年6月の間に登録されたMCI(軽度認知障害)または初期のAD患者51名を対象に、ライフスタイル変更で認知障害が改善するかどうかの科学的検証となるランダム化比較臨床試験を開始しました。
その結果が、2024年6月にAlzheimer's research & therapy に掲載され、世界に驚きと希望を与えています。(日本ではなぜか、大きく報道されていません)
今回は、その論文の内容をご紹介します。
D Ornish . et al, Effects of intensive lifestyle changes on the progression of mild cognitive impairment or early dementia due to Alzheimer’s disease: a randomized, controlled clinical trial . Alzheimer's research & therapy. 2024 Jun 07;16(1);122.
<対象>:
・MCI(軽度認知障害)またはAD(アルツハイマー病)による初期段階の認知症の参加者51人。
・2018年9月から2022年6月の間に登録され、ベースラインテストを受けました。
登録された参加者のうち、ランダムに以下の2群に振り分けられました。
●介入群
・26人:「20週間のライフスタイル介入を受ける」介入グループ。
●対照群
・25人:「通常の習慣とケア」だけのコントロールグループ。
「20週間ライフスタイルを変更しないように求められ」、その後介入が提案された。
<結果>
1)各種の認知機能検査(CDR-Global の変化、CDR-SB の変化、ADAS-Cog点数)において、
・介入群は、対照群に比べて認知機能が改善した。(上パネル)
豆知識:
・CGIC(Clinical. Global Impression of Change:臨床全般変化の印象)
(顕著な改善、軽度改善、軽度改善、不変〜悪化)の4段階で評価
・CDR-SB(臨床認知症評価ボックスの合計):点数が高いほど重症
単語再生、口頭言語能力、言語の聴覚的理解など11テストで、高点数が高度障害
・CDR-G(臨床認知症評価全般)テスト
・ADAS-cog
単語再生、口頭言語能力、言語の聴覚的理解など11テストで、高点数が高度障害
評価項目が多く、検査に40分前後を要する。
認知症の程度を調べるのに、ADAS-cogが単独で使用されることも多い。
2)バイオマーカーなどの科学的な変化
血漿中 Aβ42/40比 :
○介入群では、
20週間後に6.4%増加----アミロイドが脳から血漿中に移動したことを反映
○対照群では、
20週間後に8.3%減少---アミロイドの脳への取り込みが増加したことを反映
考察として:
『今回のランダム化比較試験の、血漿中 Aβ42/40比の変化の方向性については、介入群・対照群において、わずか20週間でレカネマブ治験と同様の結果が得られた。』
『新薬:レカネマブ治験(日本のエーザイ&米国バイオジェン社、共同開発)では
○治験群:
血漿中 Aβ42/40 バイオマーカー濃度が 18 か月にわたり上昇。・・・これは
アミロイドが脳から血漿中に移動したことを反映していると考えられる。
○コントロール群:
血漿中 Aβ42/40バイオマーカー濃度が減少。・・・これは、
アミロイドの脳への取り込みが増加したことを示している可能性がある。』
などが、考察で述べられています。
3)テロメアの変化
○介入群:テロメア長が長くなった
○対照群:テロメア長が変化せず
4)腸内細菌叢の変化
○介入群:
※ブラウティア(Blautia)菌が増加: γ-アミノ酪酸 (GABA) の産生増加に関与しているため、AD リスクの低下と以前から関連付けられていました[文献37] 。
※ユーバクテリウム(Eubacterium)属 が増加:特にユーバクテリウム・フィッシカテナ(Eubacterium fissicatena)がADの保護因子であることが確認されている[文献38]。
(注:ユーバクテリウム属:日和見菌など)
※プレボテラ(Prevotella)と トゥリシバクター(Turicibacter)が減少:AD疾患の進行とともに増加することが示されている[文献39]
(注:プレボテラ:日本人では健康人に多いとされている。トゥリシバクター:日和見病原性細菌とされている)
つまり、介入群では、アルツハイマー(AD)リスクを低下させる菌群が増え、ADリスクを上昇させる菌群が減少していた。
<結果>総合的な結果のまとめ
○介入群(24人*)の患者のCGIC テストは(*:2人は20週以内に脱落)
・10人が改善、---------→10人(42%)が改善し
・7人は変化がなく、
・7人が悪化した。-----対照群より、悪化が10人も少ない→10人(42%)が悪化を免れている
○対照群(25人)の患者のCGICテストは
・0人が改善 、・・・・改善した人は一人もいない
・8人は変化がなく、
・17 人が悪化した。
上パネルは、Health Day News(2024年6月)の記事の抜粋です。
しかし、この記事では、症状の変化は理解できても、患者さんのリアルな心の叫び・喜びなどが聞こえてきません。
生の声を探すと、
介入群の認知機能が改善した人へのインタビュー(ユーチューブでの発言)がありましたので、本人の生の感情をお聞きください『インタビューでの問いへの返答です』
今まで、実は認知症がほぼ治って、治った後の患者さんの感想を、医療関係者はほとんど聞いたことがないはずです。
(ガンの自然寛解のインタビューは少なくないですが・・・。)
●元ビジネスエグゼクティブは、
『私が誰であるか、私が誰であったか、私の一部が消えてしまったと言うのは辛かったです。
しかし、今は毎月財務を調整しています。投資の最新情報を把握しています。自尊心がかなり戻ってきました。』
●別の女性は、
『深いアイデンティティが戻ってきました。それは私に新たな人生の息吹を与えてくれました。
それは親しみのあるものであり、私が常に誇りに思ってきたものです。アルツハイマー病と診断される前の自分に戻りつつあります。私は再び自分に戻ったように感じます。年を取りましたが、より良い自分になりました。」』
●軍事行事やパレードで演奏するミュージシャンは
『そうですね、まず、パレードで演奏する曲が8曲ほどありました。そして、1曲から次の曲へと一気に演奏することができました。1時間半、止まることなく演奏しました。』
“何か変わったことがありましたか?”
「喜び。ただ幸せ。女性はいつも、幸せだから泣いていると言います。私も幸せだから泣いているんです。またそれができて本当によかったです。」
<論文の結論>:(一般の論文に比して非常に長い)
筆者は、論文の結論(例外的に長い)において以下を記述(一部割愛)
『・アルツハイマー病による軽度認知障害または初期認知症の患者では、包括的なライフスタイルの変更により、20週間後にいくつかの標準的な指標で認知機能が改善される可能性があります。
・対照的に、ランダム化対照群の患者は、この期間中に認知機能の4つの指標すべてで全体的に悪化しました。
・これらの調査結果の妥当性は、血漿バイオマーカーとマイクロバイオームの観察された変化、ライフスタイルの変化の程度と認知機能の4つの指標すべてにおける改善の程度との用量反応相関、およびライフスタイルの変化の程度と Aβ42/40 比の変化の程度、およびその他の関連するバイオマーカーの有益な方向への変化との相関によって裏付けられました。
・私たちの研究結果は、ADの予防にも役立ちます。
・人工知能を活用した新しいテクノロジーにより、臨床的に明らかになる何年も前にADの診断が可能になります。
・しかし、多くの人は、ADに対して何もできないと信じている場合、ADになる可能性があるかどうかを知りたくありません。
・徹底的なライフスタイルの変化が、MCI または AD による初期認知症の認知機能と機能の改善につながる可能性があるのであれば、
これらのライフスタイルの変化が MCI または AD による初期認知症の予防にも役立つと考えるのが妥当です。
・一方で、AD を治療するよりも予防するためには、それほど徹底的ではないライフスタイルの変化で済むかもしれません。』
・・・・Ornish教授の業績を紹介させていただいた後の感想・・・・
<Ornish 教授の講演で必ずと言っていいほど話題にされる、シンクの蛇口を締める話>
以下のパネルは、Ornish教授が何十年も前から講演の際に使われているスライドです。
誠に勝手ながら風刺画に症状を記載させていただきました。
氏は、疾患が食・飲・生活習慣などのライフスタイルによってもたらされ、それを改めることで、生物学的なメカニズムにより改善すると口述されています。
現代医学の常識からすると、動脈硬化の原因が悪玉コレステロールや高血圧などが原因なら、薬で蛇口をDrが閉められるはずです。
Ornish教授は数十年も前に、現在でも教科書に載っている動脈硬化のメカニズム(Rossの仮説)が誤りであるということに気付いておられました。
この考えは、(動脈硬化の未来塾 7))の考え方と同じです。
Ornish教授は講演口述で、薬や・標準医療はもちろん必要だけれど・・・
“薬や標準医療”を、多くの慢性疾患を掃除する“モップ”として表現されています。
ただし、
スタチン服用だけでも、塩分制限だけでも、糖質制限だけでも、運動だけでも、
@@を食べるだけ、@@を飲むだけ, でも・・蛇口を閉めることはできません。
また、脂質制限だけ、でも・・・蛇口を完全に閉めることはできません。
Ornish教授の講演口述を何度聞いても、動脈硬化改善のための塩分制限やスタチン服用の必要性などの話は出てきません。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◎ 認知症に・・関心のある皆様へ
2024年6月付で、MCI(軽度認知障害)や軽度〜中等度の認知症なら、まずは脂質制限食、運動などに取り組むことが認知症治療の基本であることが--最先端の医学で証明されました。
Ornish教授は、米国で現在認可されている認知症薬は、重篤な副作用も報告されており、まずは、ライフスタイルの徹底的な変更を推奨されています。
物忘れ外来受診の前に、急激なライフスタイルの変更をご検討ください。
Ornish教授と私は、期せずして同じ方向性での研究途中かと思います。
ただし、
私の場合はヨガや運動などを採用することはせず、ひたすらプラークの増減に関与する因子の発見に努め、少ない努力で無理なくプラークを治せるような方法を研究中です。
初期の認知症、認知機能障害は・・・・・高い確率で、治せるかも・・・
当院においても、実際にRAP食で認知機能が改善・治癒した症例を経験しています。(動脈硬化の未来塾 93))
MCI(軽度認知障害)や軽度の認知症でしたら、時間的な猶予がありせん。
単純な脂質制限だけでは、未公表の何らかの因子でプラークが悪化する場合もありますので、なるべく早くご相談いただけたら幸いです。
RAP食は、現在も継続して進化中です。
まだ間に合うかもしれません。
2024年11月20日
真島消化器クリニック
真島康雄