脳梗塞・心筋梗塞の予防法

冠動脈狭窄症の治療は、標準医療より食・生活習慣変更の医療の方が優れている。-米国のOrnishら、誌上で発表-その1

米国では、動脈硬化の治療に関して、食事・生活習慣の変更が標準医療よりも優れていることが、Ornishらによって科学的に証明され、大手の保険会社でも治療として承認されています。

今回、医学を好ましい方向へ進化させている米国の研究者をご紹介いたします。
その名は、ディーン・オーニッシュ(Ornish Dr)氏です。

Ornish医師は、長い間ヒラリー クリントンの顧問医師ですが、ビル クリントンの顧問医師の一人でもあります。

オーニッシュ氏は、医学生時代からヨガに興味を持ち、食事&ライフスタイルの変更で心臓病が治せるのではないか?との仮説の元、研究を開始。

1978年、Ornish氏がまだ医学生の頃、食事・生活習慣(ライフスタイル)の変更によって、血流がほとんど途絶えていた冠動脈血流が、わずか1ヶ月で改善した症例を経験し、1979年に報告しています。(下パネル)

しかし・・・

科学的に心臓の血流が正常化しているにも関わらず、誰も信じようとしなかった。

中には、『ランダム化試験なしで、どうして良くなったと言えるのか・・・』などと批判されたこともあったそうです。(講演口述より)

のちにこの批判が、ランダム化試験にこだわる研究のスタートになったのでしょう。

オーニッシュDrの講演の初めにはしばしばこの写真が出てきます。

46年も前に「食事療法とヨガで動脈硬化が退縮するという事実」を医学雑誌で報告したオーニッシュ氏ですが、現在も予防医学研究所の所長として活躍し、「ライフスタイル変更でアルツハイマーが改善する」という事実を、比較試験で証明した最先端の臨床医としても有名です。
Ornish D et al. Alzheimer's research & therapy. 2024 Jun 07;16(1);122. )

現在、「食・生活習慣の変更を主体とする医療」ではないスタチンを用いる医療が欧米や日本で標準医療として普通に行われているけれども、実はその標準医療が「脳梗塞・心筋梗塞・その他の様々な動脈硬化疾患や、その再発を未然に防げるチャンス」の芽を摘んでいるのではないか?

そのことを実際に実証した前向きの試験が、今から34年も前、1990年に超一流の医学雑誌: Lancetに発表されています。

論文のタイトル名は
『ライフスタイルの変更が冠状動脈性心疾患を改善できるか? ライフスタイル心臓試験』Can lifestyle changes reverse coronary heart disease? The Lifestyle Heart Trial.

Ornish D, Brown SE, Scherwitz lW, et al. Can lifestyle changes reverse coronary heart disease? Lancet. 1990; 336:129-33.

はじめに:
ライフスタイル ハート試験は、病院外の患者が包括的なライフスタイルの変更を行い、それを継続する動機付けができるかどうか、また、できる場合、ライフスタイルの変更のみの結果として冠動脈アテローム性動脈硬化症の退縮が起こるかどうかを調べるための最初のランダム化対照臨床試験です冠動脈アテローム性動脈硬化症の進行を修正できるかどうかを調べるために、20件を超える臨床試験が行われていますが、これらすべてにおいて、コレステロール低下薬、血漿交換、または部分的回腸バイパス手術が主な介入となっています。

対象と方法:
血管造影検査で冠動脈疾患が確認された患者は、実験群または通常治療の対照群(標準医療群)にランダムに割り当てられました。

・実験群の患者には、低脂肪のベジタリアン食、適度な有酸素運動、ストレス管理トレーニング、禁煙、グループサポートを含むライフスタイルプログラムが処方されました。

対照群の患者にはライフスタイルの変更は求められませんでした

ただし、様々な理由から、
実験群で前後の血管造影を受けたのは22名。
対象群では前後の血管造影を受けたのは19名

結果:
<脂質摂取>

実験群の、1日の脂質摂取量はおよそ5.4〜22.6gに収まっており、平均は14.0g/日。

標準医療のコントロール群では、1日の脂質摂取量はおよそ34.1〜76.3gに収まっており、平均は55.2g/日という、脂質をほとんど制限しない食習慣です。

<狭心症の症状の変化(12ヶ月後) >
実験群------・頻度が91%減少  ・持続時間が42%減少 ・重症度が28%減少
対照群------・頻度が165%増加 ・持続時間が95%増加 ・重症度が39%増加

前回掲載のエセルスティン氏の論文でも、狭心症がかなり改善していましたが、

今回のオーニッシュ氏の論文でも、
・実験群では顕著に狭心症の症状が改善しています。

一方で、
・標準医療(コントロール)群では、症状の頻度や持続時間、強さがかなり悪化しています。

<冠動脈造影の結果>

平均の冠動脈狭窄率(直径)は、
実験群22例の平均で40.0%から37.8%に改善したが、
対照群の19例の平均で42.7%から46.1%に悪化した。

・50%以上狭窄した病変のみを分析した場合、平均の狭窄率(直径)は、
実験群では、61.1%狭窄から55.8%狭窄に改善し、

対照群(標準医療群)では61.7%から64.4%へ悪化した。

・全体的に、実験群の患者の82%は、退縮のレベルは同様であった。
・包括的な生活習慣の変更は、脂質低下薬を使用せずに、わずか1年後にはかなり進行した冠動脈アテローム硬化症の退縮をもたらすことができるであろう。

-------感想------
1)コントロール群(標準医療群)の脂質摂取55.2g/日とは、現代の日本人30〜50代の脂質摂取量の平均とほぼ同じ。日本も10〜20年後は冠動脈狭窄症(狭心症、心筋梗塞)の患者さんの救急搬入が、もっと増えることでしょう。

2)スタチンを使用しない食事療法主体の冠動脈狭窄症の治療の方が、標準医療よりも患者さんのためになることが、Lancet 論文誌上で1990年に証明されています。
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Ornish 氏は、Lancet論文発表後も、5年間の継続観察を行い、その結果がJAMAに掲載されていますので、ご紹介いたします。

5年間の観察結果:
<冠動脈造影:平均狭窄率の変化>

実験群(低脂肪食・ライフスタイル変更群)での平均直径狭窄率は、
5年後には
絶対値で3.1% 減少(相対的で7.9%改善)。

対照群(標準医療群)での平均直径狭窄率は、

5年後には絶対値で11.8% 増加(相対的に27.7%悪化)(群間でP = 0.001 Figure 1)

--原文のまま翻訳--

<冠動脈造影:狭窄部の変化>

実験群では、22 人の内、
・18名 (82%) で冠動脈アテローム性動脈硬化症の改善・改善傾
向にあり、
3名の患者では軽度の悪化傾向にあり、
・1名の患者では大幅な悪化傾向にありました(遵守が不十分な人)。

対照群では、19人の内、
・8人(42.1%)(女性4人全員を含む)で改善傾向
・1人は変化が見られなかった。
10人(52.6%)で冠動脈アテローム性動脈硬化が進行の方向にありました。

 

-----------感想---------- -----------------------
・実験群でも、22人中4名(18.2%)はプラーク悪化 改善は81.8%

・対照群では、やはり 52.6%が悪化(標準医療で治そうと努力しても)
 逆に、標準医療でも、女性は改善傾向となる。
 女性は、脂質摂取が少なかったから?と考えられる。

RAP食は・・・100%の改善を目指して日々----進化中-------
(動脈硬化の未来塾 148))

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<心臓イベント発生>
・心臓イベントに関するデータは、48人の患者全員から取得されました。心臓イベントには、心筋梗塞、冠動脈形成術、冠動脈バイパス手術、心臓関連の入院、心臓関連の死亡が含まれます。

5年間の追跡期間中に
・28人の実験群では25件の心臓イベントが発生し、(患者 1人あたり 0.89件)
・20人の対照群では45件の心臓イベントが発生した患者 1人あたり 2.25件
(対照群のあらゆるイベントのリスク比、2.47 [95%信頼区間、1.48-4.20]
対照群の患者は、実験群の患者よりも、冠動脈形成術およびバイパス手術を受ける可能性が高く、心臓関連の問題で入院する可能性も高かった。


<スタチン剤などの服用に関して>

・対照群の患者15人のうち9人 (60%) が研究の1年目から5年目の間に脂質低下薬を服用した

・対照群の患者の半数以上が脂質低下薬を処方されていたにもかかわらず、1年後よりも5年後の方が平均直径狭窄率の進行がはるかに大きかった

『No experimental group patients took lipid-lowering drugs during the study, yet they showed better results than control group patients who were taking these drugs.』

脂質低下薬を服用した実験群の患者はいませんでしたが、これらの薬を服用した対照群の患者よりも良い結果を示しました。』

 

------感想------ ------------ ------------
●スタチンなどを服用しないで、食事・生活習慣を変更した医療の方が、
従来の生活指導や服薬指導を守った標準医療よりも、患者さんの大いなる利益になる
ことが証明されました。(極めて重要な結果)
ほとんどの日本の医療関係者はこの事実を、なぜか? まだ知ら無い? 信じようとしない? 試そうとしない?

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ソクラテスの言葉・・“ 無知は罪なり、知は空虚なり、英知を持つもの英雄なり ”

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食事療法の方が効果的・・といっても・・・

ただし・・・遵守できたならの話です。(以下パネル)

・Ornish 食事療法などの遵守率が、冠動脈狭窄の改善率に大きく影響する(下図)
 (感想-------RAP食による結果も全く同じ結果です)

以上がこのランダム化比較試験の詳細です。

なおこの研究の支援者に驚きです。米国は本気で心臓病撲滅に動いている。

この研究の主な支援は、メリーランド州ベセスダにある国立衛生研究所の国立心肺血液研究所 (RO1HL42554)カリフォルニア州サクラメントの保健局 (1256SC-01)、
カリフォルニア州メンロパークのヘンリー J. カイザー ファミリー財団、テキサス州ヒューストンのジェラルド D. ハインズ インタレスト、ヒューストンのヒューストン エンダウメント Inc、ミシガン州カラマズーのジョン E. フェッツァー研究所、ニューヨーク州ニューヨークのネイサン カミングス財団、アイオワ州デモインのバックスバウム財団、ヒューストンのグロス財団、イリノイ州シカゴのプリツカー財団、ヒューストンのエンロン財団、カリフォルニア州ロサンゼルスのミルケン ファミリー財団、ヒューストンのボマー財団、ヒューストンのコンチネンタル航空、ニューヨークのクレディ スイス ファースト ボストン財団、ヒューストンのグロップ財団、ヒューストンのレイ C. フィッシュ財団、カリフォルニア州アサートンのモルダウ慈善基金、オハイオ州クリーブランドのドーソン財団、カリフォルニア州サンタバーバラのグレン財団、ニューヨーク州ニューヨークのコーポレート・プロパティ・インベスターズ、フロリダ州ボカラトンのセレテアン財団、クリーブランドのウェザーヘッド財団、ヒューストンのテキサス・コマース・バンク財団、ヒューストンのアーサー・アンダーセン・アンド・カンパニー。

Ornish氏の講演に度々引用される論文を紹介します。

要するに、オーニッシュ氏は、食事を変えれば運命が変わる(ガンや、様々な慢性の病気を抱え込む確率が減る)ことを科学的に実証した論文としてこの研究を引用しています。

Ornish氏が、講演の後半に、数10年使い続けている漫画の風刺画です。

このスライド提示での、氏の講演口述を Google翻訳しました。

さらに、Ornish 氏の講演口述では、スタチンに関しての発言があまり見受けられませんが、
Ornish 氏の「スタチンが強く推奨され、ガイドライン通りに行われている標準医療」に対する痛烈な批判とも受け取れる寄稿文が目にとまりましたので、ご紹介します。

The American Journal of Cardiologyという一流の学術誌上に、22年も前に発表されていました。

特に、循環器科、脳神経外科・内科、その他の医療関係者の方にお読みいただきたい文章です。

22年も前に、このような論文が一流の医学誌に掲載されていようとは驚きです。
今では、私もその通りだと思います。

-----つぶやき---------

米国では、既に34年前にOrnish医師により、プラークが(スタチンなしで)、治せる時代に突入していました。
せめてOrnish 氏の食事・ライフスタイル変更療法(18.2%はプラーク悪化)よりも遵守しやすくて、治療効果がより優れているプラーク治療法を日本発で開発しなければいけません。

RAP食に不安、疑念をお持ちの動脈硬化がかなり進行した方・・・米国では、スタチンを使用しない脂質制限食の有益性がすでに一流の医学雑誌上で証明されています・・ご安心ください。

Ornishプログラムを遵守できれば・・・動脈硬化の進行は逆転します・・運命も変えられます。(Ornish 氏の講演口述より)

Ornish 教授に敬意を込めて

2024年10月8日
真島消化器クリニック
真島康雄

 


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