脳梗塞・心筋梗塞の予防法

高品質トコロテン の毎日食が、 プラーク(動脈硬化)改善に効果的 と考えられた1例。

腸内環境のバランスが免疫細胞の活性に影響を及ぼすことは、科学的に疑う余地はありません。
でも、活性化されたはずの免疫細胞が本当にどの程度活性化されたのか? 臨床的に確認する検査法はなく、「風邪をひきにくくなった」程度の判断しかできません。

フィッシングの世界では、生き物である魚が“餌によく食いつく現象”を・・「活性が上がっている」と表現します。

また、海水温や、潮の流れなどの海中環境が変化することで「活性が下がったり、上がったり」することは、漁師には常識です。

この“魚の活性の上昇”を確認する方法は簡単です。釣果を見れば一目瞭然です。
そして、用意した“生き餌”が急速に減ります。

一方で、プラークが退縮(減少)した場合は、生き物であるマクロファージなどの免疫細胞が、プラークを食べてくれた結果なのです。(動脈硬化の未来塾 115))

つまり、マクロファージ活性の評価は、プラークが減っているかどうかで視覚的に可能なのです。(魚釣りの餌が減る状況と同じ。)

血管エコーでプラークの厚みの増減を計測しますが、視点を変えると、この検査こそがマクロファージの活性を測定できる唯一の科学的な臨床検査法ともいえます(食習慣が同じで経過している場合)。

釣果を上げたいなら、海中環境を変えればいいのですが・・(これは10年以上を要する大事業)。

でも、十二指腸〜小腸・大腸までの長さ7〜9 mにも及ぶ膨大なスペースを有する自分自身の腸内環境なら・・自分の意思で素早く変えることが可能です。

今回、腸内環境を整えるために必須な成分である食物繊維などを多く含むと考えられる「高品質トコロテン」が、プラーク改善に効果的であったと考えられる症例を経験したので報告する。

「今回の症例呈示に関連して、開示すべき「利益相反」関係にある企業はありません」

『症例. 58歳 女性』
<たばこ歴>:

  • 22歳〜56歳まで 1日10本 以降は禁煙。(喫煙は腸内環境に悪影響)

<アルコール歴>:

  • 毎日:ビール350cc+酒or焼酎1合/日
     

<健診データ>:

  • 2012年7月: LDL=161 TG=166 HDL=62 Cr=0.75
  • 2014年6月: LDL=175 TG=166 HDL=64 Cr=0.72

◎2014年9月  当院初診  

  • LDL=160 TG=93 HDL=87 Cr=0.62
  • 食の好み;甘いもの:普通、 肉:普通、 野菜:好き、 魚:好き、 揚げ物:普通
  • 食習慣点数=81点(低値) 
  • 症状:便秘傾向にあり、2〜3年前から、たまに“こむら返り”あり、とのこと。
    健診で異常を指摘されて当院受診。
  • 初診時までの服薬:なし
     

<8カ所の血管エコー> max-IMT=プラークの厚み(mm)の最大値
腹部大動脈max-IMT=2.44 mm
右鎖骨下動脈max-IMT=1.59 mm
右頸動脈分岐部or(内頸動脈、外頸動脈)のmax-IMT=2.07 mm
左頸動脈分岐部or(内頸動脈、外頸動脈)のmax-IMT=0.82 mm
右総頸動脈max-IMT=0.41 mm
左総頸動脈max-IMT=0.46 mm
右大腿動脈max-IMT=0.71 mm
左大腿動脈max-IMT=0.51 mm

<治療>:
○ RAP食開始
○ 服薬:

  • エパデールS(900)2,2x-開始
  • ラックビー微粒N,2g,2x-開始

 

<初診時の血管エコー所見>:(写真 1-上段)

  • 当時のRAP食を指導

写真1

< 結果 >:
<2014年12月: 4血管エコー結果 >(写真-1-下段)

  • 2014年12月右頸動脈プラークの退縮(2.07→1.83mm)を認める。(写真1)
  • その後, 4年間通院途絶える・・・・・。

写真2

  • 2019年1月、4年ぶりに血管エコー目的で受診。

『4年ぶり:2019年1月の血管エコー所見 』:(写真2)

  • 納豆を1パック/日で食べていた。その他、特に食習慣の変更なし。
     

< 結果 >:

  • 右頸動脈のプラークは1.30mmと退縮中であったが・・
  • 左頸動脈分岐部のIMT(プラーク)は明らかに悪化(0.82→1.81mm)。
  • 腹部大動脈のIMT(プラーク)も明らかに悪化(2.44→2.82mm)。
     

<プラークが悪化したための対策>:

  • 2019年1月以降は、納豆摂取を1パック/日→1パック/週へ減らす。
     

<2019年5月の血管エコー所見 >:(写真 2)
< 結果 >:

  • 右頸動脈のプラークは1.20mmへ退縮。
  • 左頸動脈分岐部のIMT(プラーク)は退縮(1.80→1.76mm)。
  • 腹部大動脈のIMT(プラーク)も退縮(2.82→2.53mm)。

写真3

<2019年11月の血管エコー所見 >:(写真 3-上段)
< 結果 >:

  • 右頸動脈のプラークは退縮中(1.20→1.12mm)。
  • 左頸動脈分岐部のIMT(プラーク)は退縮中(1.76→1.71mm)。
  • 腹部大動脈のIMT(プラーク)も退縮中(2.53→2.34mm)。


<2020年5月の血管エコー所見 >:(写真 3-下段)
< 結果 >:

  • 右頸動脈のプラークは悪化中(1.12→1.34mm)。
  • 左頸動脈分岐部のIMT(プラーク)は不変(1.71→1.71mm)。
  • 腹部大動脈のIMT(プラーク)は悪化中(2.34→2.59mm)


<プラーク悪化の原因>
新型コロナ肺炎流行のため、自粛生活による食環境の変化が影響?
(2019年1月〜2020年5月:トコロテン摂取はなし。 )
(2019年5月〜2020年5月:週1回のみ脂肪0ブルガリアヨーグルト100g摂取。)

< プラークが悪化したための対策>
1)2020年5月から・・当院推奨トコロテンを260g/日 を毎日摂取にした。
2)2020年5月から・・脂肪0ブルガリアヨーグルト40gを週に4回摂取。

<2020年9月の血管エコー所見 >:

写真4

< 結果 >:

  • 右頸動脈のプラークは改善(1.34→1.07 mm)。
  • 左頸動脈分岐部のIMT(プラーク)は改善(1.71→1.46 mm)。
  • 腹部大動脈のIMT(プラーク)は改善(2.59→2.33 mm)。
     

<結果のまとめ>

  2014年
9月
2014年
11月
2019年
1月
2019年
5月
2019年
11月
2020年
5月
2020年
9月
腹部大動脈
:IMT(mm)
2.44 --- 2.82 2.53 2.34 2.59 2.33
右頸動脈
分岐部:IMT(mm)
2.05 1.83 1.30 1.20 1.12 1.34 1.02
左頸動脈
分岐部:IMT(mm)
0.82 --- 1.81 1.76 1.71 171 1.46
右鎖骨下動脈
:IMT(mm)
1.59 1.49 1.59 --- --- --- ---

<考察>:

1)数カ所の血管プラークを観察中に、1カ所はプラーク改善または変化なく、他の1カ所のプラークが肥厚するという現象は稀ではない。
(動脈硬化の未来塾 94))、 (動脈硬化の未来塾 44))。 
そのような事実が存在することを念頭に置いて、3〜4年に一度は経過観察部位以外にも注意を払うべきです。

具体的には、『右脳動脈のプラークは改善したが、左脳動脈のプラークは悪化した・・とか、冠動脈のプラークは改善したが・・、脳動脈のプラークは悪化した・・』などの事態が起こりうることが現実問題として懸念されます。

2)4年ぶりの受診で、『なぜプラークが悪化していたか? 』
その答えは・・おそらく、“納豆1パックの毎日摂取”だと思われます。もし、納豆2パックを毎日だったら・・
知らないとは恐ろしいことです。

●:納豆に関して;私の反省ですが、2014年から2018年2月まで、納豆は動脈硬化にも良い食品として、1日1パックの摂取を推奨していました。経験的にプラーク悪化との関係を感じ、書籍の初版を出版する直前の2018年2月には・・納豆の摂取を1日半パック(20g)までに制限するようにアナウンスを出しました。さらに、2018年8月には、納豆の頻回食によるプラーク悪化を多数例で実感し、納豆の摂取の推奨を週に半パックまでに制限するようにアナウンスしましたが、推奨食品はそのままでした。

2020年9月現在は、納豆を推奨食品から完全に削除しています。
RAP 食をしながら納豆を食べたいなら、週に0.5〜1パック程度までが無難でしょう。

納豆菌は非常に強い菌ですので、納豆を頻繁に食べると、腸内フローラのバランスが壊れてマクロファージの活性低下に繋がるのかもしれません。

脂質の多い「納豆や大豆食品」の頻回摂取でプラークが悪化することはすでに確認済み。
(動脈硬化の未来塾 87))。 

3)2020年9月のプラーク改善は、食習慣は変化していないので、高品質トコロテン260gの毎日食が、最もプラーク改善に貢献したものと思われます。

4)最近、新患の方の初回の経過観察で、プラークの改善が非常に良好な方と、そうでもない方の区別が、血管エコー前に予想できるようになりました。

プラーク退縮が期待以上である場合は、ほとんどの症例において、
当院推奨のトコロテン(通常よりもテングサを2倍近く使用)を毎日食べておられる方です。

そして、効果をあまり期待できない場合は、スーパーなどで販売されているような、比較的安価で柔らかいトコロテンを摂取されている場合です。これらは本当にリアルな実感です。

※:当院へ通院中の方で、当院推奨品ではないトコロテンを摂取されている場合は、当院推奨品への変更をお願い致します。これは、担当医の重要な服薬指導としてご理解ください。

なお、当院紹介のトコロテンの注文用紙は(血管エコー実例・研究 29)の2020年1月21日追記の記事途中に貼り付けていますので、ダウンロード可能です。

5)本例は健康診断でLDLが高いですから、当院を受診されなかったら違った運命をたどられることになっていたでしょう・・LDL高値が健診で判明すれば、昔の疫学調査をエビデンスとして・・・コレステロールを下げる薬をすぐに処方される医療機関が非常に多いです。でも、その論文たちですが・・正しく検証すれば正しい事実が判明(以下の記事)。 

最も権威ある医学雑誌 BMJ 2020年8月3日オンライン版に掲載された論文によると、
(2020年9月17日 Medical Tribune 誌で紹介がありました。)

やっぱり、スタチン剤などでLDLコレステロールを下げる治療は利益なし。でした。

逆に、強くLDLを下げることで利益が減少している場合も多いという内容です(下の記事の棒グラフ)。

人間心理として・・薬でLDLが目標以下に低下すれば・・何も考えずに・・脂質が多いものでも食べますよね・・脂質リッチな食品を食べてもLDLは上昇しませんから・・調子に乗ってさらに食べる・飲む・・・動脈硬化の原因は食習慣であって、LDLではありません。

つまり、ヒトの行動心理学から懸念されるのは、LDL低下治療は・・ベネフィットなし・・どころか・・突然の“ダメージ”へのドアを開く・・“甘い罠“・・かもしれません。

これらに関係して、すでに当院のホームページでも検討し、報告済みです。
(動脈硬化の未来塾 52))、 (動脈硬化の未来塾 68))、 (動脈硬化の未来塾 114))

『レオナルド・ダ・ヴィンチ』の言葉
“君にはわかるだろうか。視覚こそがこの世界の美しさを包み込むのだ。視覚は天文学の師であり、人間のあらゆる技術を助け、導くものだ。視覚は人間を世界の隅々までおもむかせる。視覚は数学の様々な部門を支配する。視覚による知識は最も確実なものだ。それは星の距離や大きさを測り、星座の要素や性質や運行を発見し、そこから次に起こることを予言できるようになる。視覚は、建築と図面を生み、そして最後に絵画という聖なる芸術を創始した。おお視覚よ、汝は神の最も優れた創造物だ。汝の崇高さにふさわしい、どんな賛美の歌があろうか。どのような人々が、どんな言葉が、汝の達成したことを言い表せることか。”

2020年10月5日 記載
真島消化器クリニック
真島康雄

 


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