脳梗塞・心筋梗塞の予防法

頸動脈ステント留置部のプラークが、RAP食によって退縮したと思われる2症例

現代医学では、「頸動脈にプラークが多くたまると・・その一部がちぎれて飛んで・・脳梗塞になる・・」などと脅されますが、実際にはそのような症例の確認は不可能です。

そんな仮説よりも、頸動脈にタップリとプラークがたまっている人は・・もっと下流(末梢)の脳動脈の様々な場所にもプラークがタップリたまっている・・と、考えるのが仮説としては正解に近いでしょう。

頸動脈の延長線上にある脳動脈の、様々な場所にステントを入れることなど不可能ですし、極めてリスクが高いことが証明されています(後述)。

頸動脈狭窄症に対しての“ステント留置術”や“頸動脈内膜剥離術”を、多くの方が・・決死の覚悟で受けられていますが、科学的・論理的に考えて・・有益だとは・・思われません。(後述)

プラークを減らせない世界では、両側の頸動脈が完全に閉塞しては大変だから・・との、発想なのでしょうが、プラークを減らせる世界では、頸動脈のステント留置術など“不要不急”の治療と言わざるを得ません。

今回は、まず・・

“スタチン剤の服用を止めていただき、RAP食を真摯に守り・実行いただく”
ならば、頸動脈ステント術は受ける必要はありません
・・

ということをお知らせするための症例提示です。

「今回の症例呈示に関連して、開示すべき「利益相反」関係にある企業はありません」

<Case. 1:63歳 男性>
『RAP食で頸動脈ステント留置部のプラークが退縮し、自覚症状が改善した症例』

写真1


写真2


<主訴>
“朝のふらつき” “プラークを減らしたい”

<家族歴>
父:60歳時脳梗塞→70歳時心筋梗塞→84歳 心不全で他界
母:64歳時心筋梗塞→その後心不全で他界

<現病歴>

  • 1999年9月 高脂血症を指摘される
  • 2018年10月 脳梗塞 発症、3週間入院(A病院)
  • 2018年11月初旬 バイアスピリン(100)1、1X+クロピドグレル(75)1T,1x開始
             アムロジピンOD(5)1,1X、ロスバスタチン(5)1,1X開始
  • 2018年11月下旬 左頸動脈ステント留置術+(B病院)
  • 2018年12月 冠動脈の3本狭窄+ ステント留置は困難→バイパス術を勧められる。
  • 2019年1月 ロスバスタチン(5)1を自己中止
  • 2019年1月 右頸動脈ステント留置術+ (B病院)
    (左頸動脈の上部にも狭窄あるがステント留置困難)
  • 2019年4月 当院初診
     

<2019年4月 当院 初診>
初診時:TC=168 LDL=191 TG=105 HDL=65 BW=47Kg BMI=16.9
 
現在の服薬: 他院より
バイアスピリン(100)1,1x+エフィエント(3.75)1,1x+ランソプラゾールOD(15)1,1x+アムロジピンOD(5)1,1x、+ロスバスタチン(5)1,1x(この薬のみ2019年1月から服薬なし)―中

食の好み:
甘いもの:好き、肉:嫌い、野菜:普通、魚:好き、揚げ物:大好き、運動:大いにしている。

酒類:
いわゆる酒豪
で、50歳まで「泡盛3合+ビール500-850cc/週に4-5回」のペース。
60歳から「酎ハイ5-6杯orワイン1本/週に1〜2回」。

喫煙:
なし

食習慣点数=821点(かなりの高得点:得点は2018年4月出版の書籍を参照ください)
 
<2019年4月下旬 初診時の血管エコー>
8カ所の血管エコー(血管エコー実例・研究 1))
腹部大動脈IMT=4.59mm((A-max)
右鎖骨下動脈=3.79 mm(S-max) 
右頸動脈分岐部(ステント部):IMT=2.91mm(写真1)(P8)
左頸動脈内頸動脈(ステント部):IMT=3.34mm (C-max) (写真1)
右総頸動脈IMT=1.49 mm (P2)
左総頸動脈IMT=2.42 mm(P1)(写真2)
右大腿動脈IMT=3.17 mm(P5)(F-max)
右大腿動脈IMT=2.63mm (P6)
右大腿動脈縦断IMT=2.85mm(P4) (写真2)
左大腿動脈IMT=2.44mm(P3)

(P 数字)=プラークの経過観察予定ポイント

******脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=4(0〜4)****** T-max=14.89 mm

治療:
最新のRAP食(血管エコー実例・研究 29)) を開始
1)(スタチン剤:ロスバスタチン 処方中止を担当医にお願い)
2)ラックビー微粒N(ビフィズス菌製剤), 2g, 2x開始

初診後の経過:

  • 2019年7月 7月時点での処方:
    エフィエント(3.75)1,1x+ランソプラゾールOD(15)1,1x+アムロジピンOD(5)1,1x
    (スタチン剤の処方は中止されています)
  • 2019年11月 当院再診
     血管エコー所見は以下のごとくで、初診から再診まで スタチン剤の服用なし。

<血管プラークの経過>

血管の部位

2019/4 (IMT)

2019/11 (IMT)

腹部大動脈(P7)

4.57 mm →

4.28 mm

右頸動脈分岐部(ステント留置部)(P8) 写真1

2.91 mm →

2.45 mm

左内頸動脈(ステント留置部)(P9)写真1

3.34 mm →

2.90 mm

右鎖骨下動脈 3.79 mm  
右大腿動脈(P5) 3.17 mm → 2.31 mm
右大腿動脈(P6) 2.63 mm → 2.19 mm

右大腿動脈(P4)写真2

2.85 mm →

2.21 mm

左大腿動脈(P3) 2.44 mm  
右総頸動脈(P2) 1.49 mm  

左総頸動脈(P1)写真2

2.42 mm →

2.28 mm

(P数字)=プラークの経過観察予定ポイント
コメント:経過観察した全ての7ポイントでプラークが退縮中。

<自覚症状の経過>
5年前から初診時まで続いていた“朝のふらつき”が、再診までに全く消失。

結果:
1)経過観察した全てのプラークが退縮した(上記)。

2)左右の頸動脈のステント留置部位のプラークも退縮した(写真1)。
3)5年前からの“朝のふらつき”が・・治った(出現しなくなった)。

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<Case. 2:72歳 男性>
『RAP食で頸動脈ステント留置部のプラークが退縮し、自覚症状が改善した症例』

写真3

<主訴>
左頸動脈ステント留置部の下の方に、新たな頸動脈狭窄を指摘

<家族歴>
父:70歳:脳梗塞

<現病歴>

  • 2015年1月 冠動脈:75%狭窄指摘(A病院)
      バイアスピリン(100)1,1x+アムロジピン(2.5)1,1x+ムコスタ(100)1,1x開始
  • 2018年6月 左頸動脈にステント留置術(B病院)
      クロピドグレル(25)2,1x +ロスバスタチン(2.5)1,1x 追加で開始
  • 2019年1月 皮下出血でクロピドグレル(25)2,1x→クロピドグレル(25)1,1xに減量
  • 2019年9月 左頸動脈ステント留置部の下の方に、新たな頸動脈狭窄を指摘(B病院)
    (つまり・・ロスバスタチンは頸動脈狭窄の原因であるプラークに効果なし)

<2019年10月 当院 初診>
LDL=85 TG=176 HDL=67 BW=82Kg BMI=26.2

服薬:バイアスピリン(100)1,1x+アムロジピン(2.5)1,1x+ムコスタ(100)1,1x+クロピドグレル(25)1,1x +ロスバスタチン(2.5)1,1x-中

食の好み:
甘い物:普通、
肉:普通、野菜:好き、魚:大好き、揚げ物:大好き。

食の特徴:

  • 毎日・・オリーブオイル 小さじ1杯+エゴマオイル 小さじ1杯・・摂取中
  • 酒類点数=30点(多い) 2年ほど前まで毎日・・ビール750cc+焼酎4杯+ワイン3杯
    現在は…毎日ハイボール3杯 中

<2019年10月下旬 初診時の血管エコー>
8カ所の血管エコー(血管エコー実例・研究 1))
腹部大動脈IMT=3.61mm(A-max)
腹部大動脈IMT=3.53mm(P6)
右鎖骨下動脈=3.39 mm(S-max) (P1)
右頸動脈分岐部〜内・外頸動脈:IMT=1.92mm (P3)
右頸動脈分岐部〜内・外頸動脈:IMT=2.05mm (P7)
左頸動脈左内頸動脈:IMT=2.35mmステント留置部(P8)
右総頸動脈IMT=0.72 mm
左総頸動脈IMT=3.63 mm(C-max)(P2)
右大腿動脈IMT=2.03 mm (P5)
左大腿動脈IMT=2.60 mm(F-max)(P4)
(P数字)=プラークの経過観察予定ポイント
******脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=4(0〜4)****** T-max=13.23 mm

治療:
初診時よりRAP食を開始(オリーブオイルやエゴマオイルの摂取禁止、他)
1)現処方継続(スタチン剤中止を紹介状でお願いし、本人意向もあり、了承受ける)
2)ラックビー微粒N(ビフィズス菌製剤), 2g, 2x開始

<血管プラークの経過>

血管の部位

2019/10 (IMT)

2020/5 (IMT)

腹部大動脈(P6)

3.53 mm →

3.12 mm

左総頸動脈(P2) 写真3

3.63 mm →

3.27 mm

左内頸動脈(ステント留置部)(P8)写真3

2.35 mm →

2.04 mm

右鎖骨下動脈(P1) 3.39 mm → 2.79 mm
右大腿動脈(P5) 2.03 mm → 1.71 mm
右大腿動脈(P4) 2.60 mm → 2.55 mm

(P数字)=プラークの経過観察予定ポイント

<自覚症状の経過>
1)時々生じていた“こむら返り”が、再診までに全く生じなくなっていた。
2)10年前から続いていた、“ひどい寝汗”の量が、再診までに非常に少なくなっていた。

結果:
1. RAP食による5ヶ月間の食事療法において、ステント留置部のプラークが退縮した。
2. スタチン剤を服用しながら肥厚したプラーク(左総頸動脈)が、スタチン剤を中止してRAP食を行なったところ、退縮した。 つまり、スタチン剤の服用は・・決して有益ではなかった。
(動脈硬化の未来塾 52)) (動脈硬化の未来塾 68))
3)“こむら返り”が全く起こらなくなった。寝汗が減った。

<<2症例での考察>>
a)頸動脈狭窄症に関して・・・

まず、
1)右内頸動脈が100%閉塞しても、右網膜動脈閉塞症による症状以外には、自覚症状がほとんどない方もおられます。また、左内頸動脈が100%閉塞&右頸動脈分岐部が80%狭窄でも自覚症がほとんどない方もおられます。

2)頸動脈よりも10cm前後だけ下流(末梢)の脳動脈狭窄の場合は、内科的治療のグループがステント留置術を行ったグループよりも、脳梗塞などのイベント予防では優れていた(SAMMPRIS 試験)。

3)頸動脈狭窄症のステント留置術の危険性:術後1ヶ月以内の、脳卒中(脳梗塞、脳出血など)や心筋梗塞発生の割合=4.8%、術後1年以内の、脳卒中(脳梗塞、脳出血など)や心筋梗塞発生の割合=12.2%でした。(SAPPHIRE試験:2004)・・←術後3年・・4年目は・・どうなるんでしょう? ステント留置術を受けたことで、担当医も本人も家族も安心し・・元気に何でも食べるから(食事内容に無頓着となり)・・むしろ危険でしょう。

4)脳動脈の高度狭窄がRAP食で改善(動脈硬化の未来塾 102)) 、頸動脈の高度狭窄がRAP食で改善(動脈硬化の未来塾 85))、 頸動脈56%狭窄が15%狭窄まで改善(動脈硬化の未来塾 35)) などの事実。
(いずれも、コレステロール低下薬:スタチン剤:不使用)

これらの、現状の事実から勘案すると、頸動脈狭窄症はステント留置術や手術(内膜剥離術)に頼ることなく、内科的な治療法を優先すべきだと考えられます。

備考):今回の2症例から、

スタチン剤をoffにして・・ステント留置部のプラークが退縮する
ということは、
『冠動脈のステント留置部のプラークも、スタチン剤offのRAP食で退縮する』
と考えられ、
“冠動脈ステント留置後の再狭窄の問題の解決につながる
ものと考えられます。

頸動脈プラークとは?・・に関する全ては(動脈硬化の未来塾 31))を参考にしてください。

b)“こむら返り”に関して・・・

症例2ではRAP食での治療後に“こむら返り”が・・全く起こらなくなりました。

プラークが改善すると・・全ての症例(と言っていいほど:1例も記憶・記録にありません)・・“こむら返り“が起こらなくなります。 

理由は・・筋肉を栄養する動脈のプラークが減り、その動脈の流れが改善するからです。

ということは・・40〜60歳で“こむら返り”が生じるようになったら・・それは・・間違いなくプラークが肥厚(動脈硬化が進行)してきた証拠です。(動脈硬化の未来塾 58))

私が若い時に・・”こむら返り“に漢方の芍薬甘草湯(No.68)を処方して、即効性があるので・・患者さんから喜ばれて・・得意になって、他の患者さんにも説明していた頃がありましたが・・今思うと・・穴に入りたくなるほど・・恥ずかしいです。 

目先の利益だけに走る会社は・・そのうちに倒産の危機に直面するのはご存知の通りです。 

即効性のある漢方での”こむら返り“の治療は・・あくまでも・・目先の”対症療法“なのです。

血管プラークを減らして“こむら返り”を治す方法は、1〜2ヶ月の時間を要しますが・・“根本療法”なのです。 

しかも・・ただ単に“こむら返り”が改善したというより、将来の動脈硬化による危険な病気が
遠のくことにもなります。

注意:危険レベルにプラークが肥厚・堆積しても・・“こむら返り”が起こらない方も多くいらっしゃいます・・・症状だけに頼って安心するのは・・極めて危険です。必ず・・血管エコーを受けましょう。

備考):人の健康管理は・・会社経営とほぼ同じです。 

●“プラークが肥厚する“ということは・・・会社経営で例えるなら・・赤字経営です。
●“プラークが減る:退縮する”ということは・・・会社経営で例えるなら・・黒字経営です

悲しいですが・・人体の管理として・・LDL、採血での動脈硬化指数、体重や血圧などでは、肝心の血管の中は見えないのです。

会社経営なら・・経理台帳(会社の金の流れ)を見ないなら・・「肝心の赤字か黒字か?」や「負債はいくら残っているのか?」の判定は無理です。

(会社経営で)年間の赤字200万円なら→(人体で)年間のプラーク肥厚0.20mm 相当
(会社経営で)年間の黒字200万円なら→(人体で)年間のプラーク退縮0.20mm 相当

負債額2000万円なら→頸動脈で例えるなら→頸動脈プラーク2.00mm 相当 
( 負債総額はT-maxで計算する方が正確で、T-maxならT-max=8.00 mm相当 )

会社経営なら・・赤字・黒字のデータもなく・・負債額の総額や、その増減のデータもなく・・経営を行うなど・・鳥肌が立つほど・・恐ろしいことだと思いませんか?・・

血管エコーの凄いところは、人体の経理台帳である血管の内側の状況を・・直接目で見て・・そのプラークの変化を・・0.01mmレベルで判断できる訳ですから・・LDLや体重や自・他覚症状で動脈硬化を判断するという現代医学の考え方とは・・次元が異なります。

●・・ですからプラークは退縮しているのに・・LDLが上がったから心配(日本全体がコレステロール神話に汚染中)・・などと、本当に心配される方がおられるのが・・寂しく・悲しいです。

c)“朝のふらつき”に関して・・・

症例1では、RAP食での治療で・・“朝のふらつき”・・が起こらなくなりました。

脳動脈にプラークが溜まることで・・朝方・・血圧が低くなった時分に・・脳血流が低下して・・“朝のふらつき” が生じます。

“朝のふらつき”は・・脳梗塞の極めて重要な“前兆”なのです。(動脈硬化の未来塾 58))
いわゆる“めまい” 外来で・・血管エコーが詳細になされていなければ・・この危険性が見落とされる場合が考えられます。

脳梗塞の前兆である“朝のめまい”“立ちくらみ” などは・・決して脳MRIでは評価・診断できません。MRI診断は・・脳梗塞が生じて・・脳細胞が壊死に陥って・・はじめて・・MRIに映し出されます。

脳MRIでの・・脳梗塞の予見は・・今も昔も困難なのです。
ですから・・脳MRI直後〜数ヶ月以内に脳梗塞になっても・・MRI検査:読影者に責任はありませんので、くれぐれも誤解のないように願います。(動脈硬化の未来塾 67))

<まとめ>
1)頸動脈狭窄症と診断され・・ステントや手術・・を勧められた場合・・・・

内科的に改善できますので、 “ステント留置術” や “内膜剥離術” は・・

RAP食(血管エコー実例・研究 29))を必ず守るという条件付きですが・・受けるべきではありません。

2) “こむら返り” 症状も動脈硬化進行の危険な兆候です。漢方(芍薬甘草湯:No.68)などで・・目先の症状が改善して・・喜んでいると・・脳梗塞・心筋梗塞になるかもしれません

3) “朝のふらつき” 症状も動脈硬化進行の危険な兆候です。もし、血管エコーを受けていないなら・・・直ぐに血管エコー(頸動脈エコーだけでも)を受けなければいけません。

お悩みの方は、ご相談ください。

2020年6月8日記載
真島消化器クリニック
真島康雄

 


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