脳梗塞・心筋梗塞の予防法

脳梗塞予防:「脳MRIは異常なし」でも安心は禁物。8カ所の血管エコーが必要です。

脳梗塞になりたくないので・・「毎年、脳のMRI検査をしています」・・こんな話をよく耳にします。
でも、そのやり方は、脳動脈瘤や脳腫瘍、無症状の微小脳梗塞(白質病変)を早めに発見するには有効ですが・・残念ながら・・「脳のMRI:異常なし」だったから・・と・・それからの1年間、脳梗塞になるリスクが低い・・・と、安心していませんか?

しかも、白質病変の数が増えるか?などの情報を「定期的なMRI」で知り得ても・・どうすればいいんでしょう?

皆様が、脳のMRI検査を過大評価して、健康の思わぬ落とし穴に落ちないように、「脳梗塞予防における脳MRI検査の評価」に関する事実を公表します。

研究目的:

脳MRIによる診断が、脳梗塞予防に有効かどうかの評価

対象:

2016年10月1日から2016年12月29日までの2ヶ月間で、連続196例の新患の内、8カ所の血管エコーで脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=4(最高度に危険な群)であったのは70症例であり、
さらに、その70症例の内、脳・心血管イベント未経験者は53例であり、その中で1年以内にMRI(MRA)を受けたていた9症例を対象に検討しました。

備考:

  • F-max:左右の大腿動脈で最もプラークの厚い部位の厚み:(mm)
  • A- Max:腹部大動脈〜左右の腸骨動脈で最もプラークの厚い部位の厚み:(mm)
  • S-max:右鎖骨下動脈〜腕頭動脈で最もプラークの厚い部位の厚み:(mm)
  • C-max:左右の頸動脈で最もプラークの厚い部位の厚み:(mm)
  • T-max=F-max+A-max+S-max+C-max (mm) = 総合動脈硬化指数

結果:

1) 9例中6例(66.7%)は脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=4であるのにMRIでは異常なしの判定でした。
2) 9例中2例(22.2%)では脳の白質病変を指摘されていました。
3) 9例中1例に内頸動脈末梢の脳動脈瘤の指摘がなされていました。

考察:
対象期間中のリスクレベル=4の症例は70例であり、そのうちの17例(24.3%)はすでに脳・心筋梗塞イベントの既往者であり、8カ所の血管エコー所見による脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル判定の有効性を確認できました。

脳・心血管イベントの未経験者の53例も、脳梗塞・心筋梗塞のリスクが極めて高いと判定されますが、1年以内に施行された脳MRIでは、9例中6例が脳梗塞・心筋梗塞などのリスクを全く想定できませんでした。(上の表)

ただし、動脈硬化(プラーク)が進行した症例には脳動脈瘤が発生することも多く、また脳の白質病変が存在することも多く、脳MRI検査の有用性を否定する結果ではありません。

まとめ:

脳MRI検査で異常なしであっても、安心することなく、頸動脈エコーなどの血管エコーを受けるべきです。

ただし、症例5&6の頸動脈プラークは1.8mm未満であり、脳梗塞・心筋梗塞のリスクを正確に判定するには、頸動脈エコーだけではなく、8カ所の血管エコーが必要です。


<では・・どうする?・>

それでは、近親者に脳梗塞・認知症がおられる方は、身にしみて「本当の脳梗塞予防の方法」を知りたいですよね・・

私はかねがね、書籍・雑誌・テレビなどでの「脳梗塞予防法」が・・「プラークの増加を容認したまま」・・どれほどの効果があるか不明ですが、目先の微力な予防対策での「水を飲む」などの注意が必要・・とか・・・脳梗塞直前〜直後の「呂律が回らない」・「手足に力が入らない」・・などの症状に対しては「すぐに救急車を呼ぶ」ことが必要・・・などと、話題になりますが・・

症状が発現してからの行動は・・予防ではなく「応急処置」と言われるべきです。

現在は、病気を早く見つけて、できるだけ早く点滴やカテーテルで治療・・そんなところが最先端の医療と言われてもてはやされています。

それらの「応急処置」は、寝たきりにならないための「予防」にはなりますが・・前述の「前触れ症状」が全くなく、脳梗塞になる場合も多いので・・・本当の意味での予防策を身に付けなければいけません。

本当の最先端医療は、未来の病気を未病の段階で見つけて&治すことではないでしょうか。
私の9年間に及ぶ8カ所の血管エコーの経験から、現状の・・「脳梗塞発生からの医療」は・・滝の後ろ側に常に待機して、人が滝に流れ落ち・・滝壺に落ち込む寸前で・・救出する・・そんな医療に見えてなりません。滝壺に落ちた人が流れていくのが「リハビリ川」「介護湖」なのです。

日頃の私の感想を図にしてみました。

救急医療や脳MRIやLDL値、高血圧の有無。肥満の程度など・・では滝の上流を人々が滝へ向かって歩いている姿が見えないのです。

スタチン剤を長期服用してLDLを下げてもプラークが低下している事実はなく(当院集計データ:未掲載)、MRIで異常ない人同様に、スタチン剤でLDLを下げただけの人も「安心が危険を招く」ことになりますので・・くれぐれもご用心ください。

例えば低血圧ではない人の「朝:起床時のふらつき」「立ちくらみ」は最も危険な脳梗塞直前の症状の一つ(動脈硬化の未来塾 58)ですが、救急病院で「脳のMRIで異常なし」で・・点滴などで症状が改善し・そのまま帰宅させられるケースもあるかと思いますが、そんな方は久留米までの受診を検討されてはいかがでしょう。

久留米は確かに遠いかもしれませんが・・脳梗塞予防には・・最も近いと思っていただければ幸いです。8カ所の血管エコー所見でプラークの進行があっても、なくても安心感は得られるはずです。 ご縁があったらお会いしましょう。

備考:脳梗塞直前で朝のめまいがあり、救急車で運ばれる際は血圧が200位に上昇する場合もあり(反応性:結果)、脳MRIで異常がなければ、「高血圧による“めまい”」と誤認される場合をしばしば経験します。ただし、「低血圧による朝のめまい」の場合は、特に問題ないかと思われます。

私には、8カ所の血管エコーでその歩いている様が・・手に取るように見えます。(図)

心原性の脳梗塞ではない、通常の脳梗塞に関してですが、この9年間、8カ所の血管エコーを受けて、食事療法(RAP食)+αの治療を受けて・・1年以内の間隔で通院中の方は・・経過中に脳梗塞で機能障害が残った方は・・一人も記憶にありません。
(ただし、途中で通院をやめられた方の情報は把握できていません)


2017年3月14日

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