脳梗塞・心筋梗塞の予防法

動脈プラークで見える未来、昔は「短命の原因は“お金持ち”、長寿の理由は“貧乏“」

今に生きる現代人は皆、昔の“藍商人”みたいな食事をしているのかもしれません。
昔は短命の原因は“お金持ち”で、長寿の理由は“貧乏“でした。

元東北帝国大学医学部公衆衛生学教授:近藤正二先生(故人)の著書「長寿村ニッポン紀行 食生活の秘密を探る」(女子栄養大:昭和47年)に記載されている興味深い一節を紹介します。

徳島県の藍園村(現在の板野郡藍住町)は貧乏で長寿村として記述されていますが、小さな大名屋敷風の大きな家が所々にあって、これは“藍商人”の屋敷で、江戸や京、大阪を相手に商いをして大金持ちになっていました。この藍商人の息子で、若い頃に博多に出てきて博多の商工会議所会頭になった人が、近藤先生の博多商工会議所での講演終了後に話しかけてこられて、

「実は私は、今、先生がお話しになった藍園の出身の者ですが、・・・私は藍商の家の息子なのですよ。・・・私がもし生まれ故郷に住んでいたら、60歳を超えるこの年まで、商工会議所の仕事を続けることなど、たぶんできなかったでしょう。というのは、昔から、藍商の家には長生きの人はいないと言われていたのです。それがなぜなのか、私にはわかりませんでしたが、今はじめて、その理由がわかりました。・・・魚や肉のごちそうもよく食べていました。・・・ときどき大阪などへでますと、いろいろな料理を食べて、それらの味を覚えて帰って来る。・・・こんな生活をしていたら、たぶん40〜50歳で死んでしまっていたでしょうね。実際、両親や知人も早く死んでいます」(P41~43の文章を一部・・・部分を割愛して原文で紹介)

と、話されたそうです。
(注:近藤正二先生の書籍は事実を記載された医学書と考えられますので、出典を明らかにして原文で紹介させていただきました)

ここでもお判りと思いますが、動脈硬化を来す主犯は脂質過剰の食習慣であって、血中のコレステロールではありません。短命の根本的な原因の元凶は“藍”でした。

“藍”→高く売れる→お金が儲かる→肉や魚などの多食・都会での外食が可能→動脈にプラークがたまる→脳梗塞・心筋梗塞・発癌→短命

“寿命は年齢ではなくプラークで決まる・・プラークは食習慣で決まる”
注)プラークとは:(動脈硬化の未来塾 31)

“食事指導なしで経過すると、プラーク悪化・・・指導で改善”
“未来は食習慣で決まる!・・でも・・プラーク観察で未来を変えられる!”

(コレステロール低下・体重減・血圧安定など、旧来の“物差し”学問では未来を予測不可能)

今は誰でも、普通に昔の“藍商人”と同じ食習慣が可能です。そんな現在の普通の人たちの血管を、数年以上も何ら食事の指導もなく経過観察してみたらどうなるか?・・・期せずして・・実験的とも言える観察が可能であった数少ない4症例について検討しました。


症例1. 72歳 男性

8年間で頸動脈IMTが0.9mm→3.14 mmへ 半年のRAP食で2.56 mmにプラーク退縮。

<経過>
・2009年3月:他病にてフォロー中ですが、8カ所の血管エコーでは

1. 腹部大動脈max-IMT=2.7mm
2. 右大腿動脈max-IMT=1.2mm
3. 左大腿動脈max-IMT=1.6mm
4. 右鎖骨下動脈max-IMT=2.7mm
5. 右頸動脈分岐部max-IMT=1.1mm
6. 左頸動脈分岐部max-IMT=0.9mm(8年9ヶ月後の未来にプラークが著しく肥厚)
7. 右総頸動脈max-IMT=1.1mm
8. 左総頸動脈max-IMT=---mm

脳梗塞・心筋梗塞のリスクレベル=3 です。血小板が9万前後と少ないことなどから、前著「脳梗塞・心筋梗塞は予知できる」(幻冬舎)をお読みいただく程度で、食習慣の指導は特に行わなかった。

  • 2017年12月:8年9ヶ月ぶりに頸動脈エコーだけを行うと、左頸動脈分岐部に3.14mmのプラークを認めた。(上写真)
    スタチン剤は服用していなかったが、スタチン剤なしでのRAP食を指導。
  • 2018年6月:RAP食開始から6ヶ月でプラークが3.14→2.56mm へ退縮した。(上写真)

症例2. 39歳 女性

3年間で頸動脈IMTが0.73 →1.98 mmへ 1年間のRAP食で1.90 mmにプラークが退縮。

経過:

  • 2014年3月の8カ所の血管エコーでは
    1. 腹部大動脈max-IMT=0.74mm
    2. 右大腿動脈max-IMT=0.67mm
    3. 左大腿動脈max-IMT=0.77mm
    4. 右鎖骨下動脈max-IMT=0.73mm
    5. 右頸動脈分岐部max-IMT=0.79mm
    6. 左頸動脈分岐部max-IMT=0.73mm (3年6ヶ月後の未来に:プラーク肥厚)
    7. 右総頸動脈max-IMT=0.51mm
    8. 左総頸動脈max-IMT=0.51mm

    全ての血管のIMTが1mm以下の脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=0 食習慣点数=152点、であったので、食習慣に多少問題あり(10年間は毎朝:菓子パン1個中)も、特に指導せず。 食習慣は現状でいいでしょうと・・説明。
  • 3年6ヶ月後の42歳で頸動脈エコー行うと、上写真のごとく、左頸動脈分岐部に1.98mmのプラーク肥厚を認めた。 RAP食指導(毎朝菓子パンの習慣を止める、大豆食品の摂取を減らすなど)。
  • RAP食から1年後・・プラークが1.98→1.90mmへ退縮中。

症例3. 54歳 女性

3年半でRCCA (右総頸動脈)のIMTが0.67→1.38mm へ肥厚 6ヶ月後にはプラークが1.33mmへ退縮中。

経過:

  • 2014年10月の8カ所の血管エコーでは
    1. 腹部大動脈max-IMT=1.85mm
    2. 右大腿動脈max-IMT=0.41mm
    3. 左大腿動脈max-IMT=0.66mm
    4. 右鎖骨下動脈max-IMT=0.88mm
    5. 右頸動脈分岐部max-IMT=0.56mm
    6. 左頸動脈分岐部max-IMT=0.51mm
    7. 右総頸動脈max-IMT=0.67mm (3年5ヶ月後の未来に:プラーク肥厚)
    8. 左総頸動脈max-IMT=0.67mm

    脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=1 食習慣点数=76点、であったので、食習慣に多少問題あり(30年間は毎朝:食パン+バターまたは菓子パン中)でも、特に指導せず。 食習慣は現状でいいでしょうと・・説明。
  • 2018年3月:3年5ヶ月ぶりの58歳で頸動脈エコー行うと、上写真のごとく、右総頚動脈に1.38mmのプラーク肥厚を認めた。 RAP食指導(毎朝の菓子パンまたはパン&バター摂取の習慣を止める、毎日の納豆1パックを週に0.5パックへ減らす(動脈硬化の未来塾 87)、30個/月のアーモンドや6個/週のチョコレート摂取を控える、甘酒毎日100ccを30ccに減らす、など)。
  • RAP食から6ヶ月後・・プラークが1.38→1.33mmへ退縮中。

症例4. 63歳 女性

11年間で頸動脈プラークが1.1 →3.33mmへ 1年3ヶ月前から服用していたスタチン剤を止めて、4ヶ月間のRAP食で2.96 mmに退縮。

経過:

  • 2007年7月の血管エコーでは
    1. 右鎖骨下動脈max-IMT=検出不可:技術力不足にて
    2. 右頸動脈分岐部max-IMT=1.1mm
    3. 左頸動脈分岐部max-IMT=0.8mm (11年後の未来に:プラーク肥厚)
    脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル= 判定法は存在せず 、食習慣点数=存在せず、であった。
    食習慣の質問(甘いもの:嫌い、肉は普通:赤身好き、魚:普通、野菜:好きではない)
    当時は“霜降り肉”“甘いもの”だけを問題にしていた感じがあり、食習慣に問題ありとは思わず、特に食習慣の指導はせず。食習慣は現状でいいでしょうと・・説明。
  • 2018年5月 当院再度受診 左頸動脈プラークが1.1→3.33mmへ著しく肥厚。
    (再受診理由:2018年2月に胸痛で総合病院へ受診したら、心臓カテーテル検査(略称:心カテ)で冠動脈の3カ所に狭窄があるが、薬のみで様子を観ることに)

    8カ所の血管エコーでは
    1. 腹部大動脈max-IMT=3.94mm
    2. 右大腿動脈max-IMT=0.62mm
    3. 左大腿動脈max-IMT=1.82mm
    4. 右鎖骨下動脈max-IMT=2.35mm
    5. 右頸動脈分岐部max-IMT=1.28mm
    6. 左頸動脈分岐部max-IMT=3.33mm (11年前は0.8mm程度)
    7. 右総頸動脈max-IMT=0.52mm
    8. 左総頸動脈max-IMT=0.56mm
    脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=4(0〜4) いつ倒れても不思議ではないレベル

    服薬)
    リピトール(10)1T--- 2017年2月頃から開始(コレステロールを下げる薬)
    ゼチーア(10)1T------ 2017年2月頃から開始(腸での脂肪吸収を抑制する薬)
    ミカムロ配合錠AP:1T--- 2017年2月頃から開始
    バイアスピリン(100)1T----2018年2月から開始
    ネキシウムCap(20)1---------2018年2月から開始

    プラークを早く減らす必要性から、担当医に紹介状を書き、本人の意思も伝えて、リピトール(10)1Tの中止を了解していただいた。

    さらに長年の習慣であった、毎朝の食パン&バターのバターやマーガリン使用や青魚の頻回食(週に4日は魚料理で、サバ、サンマ、ブリ、塩サバなどのいわゆる脂の多い青魚)を止めていただき、RAP食を指導。
    (動脈硬化の未来塾 86) (動脈硬化の未来塾 53) (動脈硬化の未来塾 45)
  • 2018年9月 スタチン剤offのRAP食で プラークが縦断像で3.33→2.96mm へ、横断像でも3.12→2.59mmへ、予定通りに退縮中(上写真)。

<考察>

  • 食習慣は本当に恐ろしいです。
    でも、プラーク(動脈硬化の本態)はスタチン剤を中止して、RAP食(血管エコー実例 29)を信じて実行すれば・・普通に退縮(動脈硬化が改善)します。
  • 現状の医療とは真逆の方法で普通に動脈硬化が改善できるという事実は、未だ一般には認知されていない。この背景には、「血中コレステロールが下がる食品が動脈硬化にいい」とか・・「コレステロールを下げる薬が動脈硬化に好影響」とか・・・動脈硬化を直接測定しないで結論してしまう・・誤った論理が根本原因です。血管エコーが普及しなければ医療は全く進歩しないでしょう。
  • できる限り多くの部位を血管エコーで観察し、30代後半から食習慣の改善を啓蒙すれば、突然死や脳梗塞・心筋梗塞・認知症・狭心症・心房細動・眼底出血(網膜静脈閉塞症)・黒内障・うつ病・パニック障害・脊柱管狭窄症・肩こり・こむら返り、他・・・・全身各所の・・動脈硬化(プラーク)が原因で生じる病気や症状など・・・毛細血管を含めた動脈の・・・血流が途絶または低下して・・発症している全ての病気(動脈硬化の未来塾 7)が・・・未然に防げると思われる。

<結論>

  1. 現代人の平均的な食習慣は昔の“藍商人”のそれと似ていて、若い時にプラークの肥厚がなくても、数年でプラークが急速に肥厚し、寝たきり・短命の大きな原因となりうる。
  2. 8カ所の血管エコーで脳梗塞・心筋梗塞のリスクレベル=0〜1の人々でも、遅くとも3年以内に再検査を受ける必要がある。
  3. 万一、プラークが進行した状態で発見されても、スタチン剤を用いないRAP食でプラークを減らす治療ができるので、様々な健康情報に惑わされることなく(動脈硬化の未来塾 88)、マクロファージが24時間休みなくプラーク除去作業している(動脈硬化の未来塾 11) ことへの感謝の気持ちを抱いてRAP食を実行すれば、ソフトプラークや石灰化したプラークでも、必要以上に怖がる必要はありません。(動脈硬化の未来塾 82)

「コラム」
今回の症例では、プラーク肥厚に関して、習慣的に摂取した場合の菓子パンの影響が強く示唆されました。
40〜50歳以上になると菓子パンの習慣的な摂取が危険であることは、私の書籍「脳梗塞・心筋梗塞・高血圧の原因は油」(幻冬舎)でも紹介していますが、バターやマーガリンを添加していない普通の食パンや伝統的な製法のフランスパンやドイツパンなど、パン食はOKです(西洋人がすでに証明済み)。パンに乗せる具材は、バターやマーガリン、ベーコン、ソーセージ、アボガドなどの脂質たっぷりの食材を敬遠して、脂肪0のギリシャヨーグルトや甘さ控えめのジャム、少量の蜂蜜などで対応してください。でも、主食は白ご飯100%が一番のおすすめです。



2018年12月25日 記載
真島消化器クリニック

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