脳梗塞・心筋梗塞の予防法

RAP食による動脈プラークの退縮と共に舌咽神経痛が改善・治癒状態になった1例

<症例報告>
「この研究に関して、著者が開示すべき利益相反関係にある企業などはありません

症例:61歳 女性 BMI=21.6
主訴:舌咽神経痛・片頭痛
既往歴:子供の頃から片頭痛+

現病歴:
・2006年6月(51歳)頃から、右扁桃〜右舌根部にかけてピリピリ感が出現。この症状が年に2〜3回程度。ひどいときは口を開けて話せなかったし、ものを飲み込めなかった。この頃、高脂血症指摘。
・2010年1月頃から、コレステロール低下薬:スタチン剤(アトルバスタチン)を服用開始。
・2011年1月頃から、上記の痛みが強くなり、右耳の方へも痛みが拡散し、ピリピリ痛が強くなった。
・2012年6月初旬 某ペインクリニックで舌咽神経痛と診断され、カルバマゼピン(商品名:テグレトール)(100mg)0.5Tを1日3回服用で治療開始
・2012月6月中旬からテグレトール(200mg) 1Tを1日3回服用へ。薬が増量になる。
薬を飲むと痛みが治まるが・・飲まないと、毒針で舌の奥を刺される痛みがあった。
・2013年3月頃から、痛みに応じてテグレトールの量を調節。この頃の痛みの状況は、舌を毒針で刺されて“ズカズカと痛い”感じが1分以内で治まる。1日に2〜3回痛くなり、再発したときは“ドキッ”とする。
・2016年9月時点で 舌咽神経痛++ テグレトール(200mg)0.5Tを1日2回服用中。
 他に、アトルバスタチン(5mg)1T/日を常用し、頓服で片頭痛時「CMCP」を服用中

<2016年9月下旬 家族の紹介で当院受診>
現症状:舌咽神経痛(51歳から)片頭痛(子供時代から)肩こり(+)
    血圧=100/60  BMI=21.6
LDL=156 (スタチン剤服用中)TG=185 HDL=53
食習慣:甘い物大好き、肉大好き、野菜大好き、魚好き、アルコール0、タバコ0、
食習慣点数=461

<8ヶ所血管エコー>
・腹部大動脈IMT=0.59 mm----(A-max)
・右大腿動脈IMT=1.60 mm----(F-max)
・左大腿動脈IMT=0.41 mm
・右鎖骨下動脈IMT=1.69 mm----(S-max)
・右頸動脈分岐部IMT=0.60 mm
・右総頸動脈IMT=0.51 mm
・左頸動脈分岐部IMT=1.03 mm-----(C-max)
・左総頸動脈IMT=0.46 mm

脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=1(0〜4)

<治療>:
1)RAP食&EPA製剤900mgx2+ビフィズス菌製剤1gx2開始
2)アトルバスタチン中止(スタチン剤を服用開始1年経過した頃から舌咽神経痛が強くなり、6年以上も飲み続けたスタチン剤が舌咽神経痛に有益とは認めがたく、本人の強い意向があり、担当医の了解を得てスタチン剤は中止していただいた)

(治療に関する備考:当初は舌咽神経痛・三叉神経痛が動脈硬化(プラークによる血管拡張など)によって生じる病気であるという知識が当時の私にはなく、単に“片頭痛はRAP食で治りやすいです”・・・との説明を行って、片頭痛治療目的でRAP食を開始。)
(備考:本例は無症状なら軽い食事指導のみに止めるような脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=1の症例)

<プラークの経過>

(備考:食品の違いで各血管に堆積するプラークの量に相違が生じることは普通に認められる)

(備考:2017年4月のプラーク悪化や改善の鈍化は、メディアの情報を信じ、血管のためにと・・エゴマオイルのドレッシングを頻回に使用したのが原因だと思われる)
(備考:2018年2月のプラーク悪化は、大豆食品の多食やメディア情報(ピーナッツはコレステロールを下げる)を信じて始めたピーナッツの多食などが原因と思われる。特に最近はチョコレート、ナッツ類、ピーナッツ、納豆、青魚などの頻回摂取が原因だと考えられる“RAP食しているのにプラーク悪化例・プラーク改善しない例“が目立ちます。RAP食を行っているつもりでも、最近の様々な健康情報に惑わされて「間違ったRAP食」になっている場合がありますのでくれぐれも、2018年4月出版の「脳梗塞・心筋梗塞・高血圧は油が原因」を御一読下さい。


<経過>:痛みに関して
・2017年1月・・・・片頭痛程度 1/3に軽減
・2017年4月・・・・右舌奥に(刺すようではなく)ピリピリ感あるも軽減
          片頭痛&肩こり改善中(動脈硬化の未来塾 61)
・2017年8月・・・右舌奥にピリピリ感が再発     肩こりは更に軽減
・2017年10月・・・右舌奥に軽度のピリピリ感でテグレトールの服用+
・2017年11月・・・10月以降はテグレトールの服用が必要なピリピリ感の再発はゼロ。
           この頃より、片頭痛薬の「CMCP」剤も不要になった。

・2018年2月・・・テグレトールの服用(-)。片頭痛の薬が全く必要でなくなった。
・2018年5月・・・4月の中旬に舌咽神経痛の予感みたいな症状があったので、
         テグレトールを予防的に3日間服用。肩こり(-)片頭痛(-)で経過中
      舌咽神経痛と言えるような痛みはこの7カ月間は生じていない。
(事実関係として、担当医による舌咽神経痛に対するテグレトールの処方は、薬の服用の回数が減ったので、薬の残が生じ、2018年5月時点でテグレトールの最終処方は2016年9月)

<結果>
1)舌咽神経痛がRAP食+EPA製剤+ビフィズス菌製剤の開始4ヶ月で改善し、1年8ヶ月後には、ほぼ完治状態になった。
2)子供の頃から悩まされていた“片頭痛”が、同様にRAP食後4ヶ月で改善し、1年5ヶ月後にはほぼ完治状態になった。
3)肩こりが4ヶ月で改善し、1年5ヶ月後には感じなくなった。

<考察>
一般に、舌咽神経痛の主な原因は“頭蓋内の動脈による舌咽神経の圧迫”であるとされています。
その他に、頭蓋内腫瘍や内科的なまれな疾患などが原因としてあげられています。

食事療法で舌咽神経痛が治るという報告は私が調べた範囲では今まで見あたりません。

では、どうして“片頭痛”の治療中に偶然にも舌咽神経痛が改善・治癒状態になったのでしょう?

「プラークを減らす治療」のためのRAP食では・・副産物として、「体重減少」「血圧低下」などが普通に認められ、50歳以上の“頭痛”や“片頭痛“も改善・治癒していく症例を多く経験していました。

では、脳動脈の血管壁にプラークが溜まるとどうなるでしょう? 私の書籍やWebサイトの写真などから、脳動脈も拡張すると考えるのが自然です。

頸動脈や大腿動脈にプラークが2.00mm溜まると、必要な血流量を確保する必要性からそれぞれの血管は2.00mだけ拡張し、周囲の組織を圧迫することになります。

眼底の網膜動脈が拡張すれば→網膜静脈が網膜動脈で圧迫され→網膜静脈閉塞症へ。(動脈硬化の未来塾 66)) (動脈硬化の未来塾 71))

頭蓋内の動脈が拡張すれば→三叉神経や舌咽神経が圧迫され→三叉神経痛や舌咽神経痛に。

50歳以上の頭痛や片頭痛は、心臓の「安静時狭心症」(動脈硬化の未来塾 41))と同じ原理で脳血管の攣縮で生じる「狭脳症」(私の造語)かもしれませんが、主な原因は脳血管(脳の微小な毛細動脈や脳動脈)の慢性的な拡張状態が自律神経や大気圧の影響を受けて更に拡張した場合に頭痛や片頭痛を生じるのではないかと推論しています。

EPA製剤を併用したのは、EPA自体の作用として、動脈の攣縮を軽減させ,頭痛や片頭痛に効果的であるとする報告もみられるためです。しかもマウスの実験ではプラークが減るための何らかの役割を持っている事が確認されています。

さて、三叉神経痛や舌咽神経痛の主な原因は“頭蓋内の動脈による三叉神経や舌咽神経の物理的な圧迫”と言われていますから、根本的な治療としては開頭手術(小さな穴を空けるなど)で、神経を圧迫している動脈を剥離して、動脈の場所を移動させる手術があります。

では、頭蓋内の動脈が、その接している脳神経を、ある年齢になって圧迫するという物理現象の原因として・・最も考えられるのがプラークです。 プラーク以外に考えられないでしょう。

脳動脈が拡張するメカニズムとして最も考えられるのは、

  1. 脳動脈の内膜・中膜にプラークが堆積すれば脳動脈の外径は大きくなります。
  2. さらに、脳動脈の内頸は狭小化するので、一定の脳血流を確保するために脳動脈はさらに拡張せざるを得ません。
  3. 屈曲した動脈の内側にプラークがより多く溜まりますので、屈曲した動脈の外側は更に外側方向へ血管が突出することになります。

そのメカニズムを図で説明します。

下の図は、舌咽神経痛がRAP食で改善・治癒状態になるメカニズムです。

通常は現代医学では動脈のプラークは簡単に治りませんから、「舌咽神経痛が食事療法で改善する」などの研究報告は見あたりません。

でも、プラークが改善すれば、新しい書籍や動脈硬化の未来塾 7) 記載のプラーク関連疾患が全て良い方向へ向かうことでしょう。本例は動脈硬化が改善されると治る病気の、その極一部の症例に過ぎません。

<結語>
・舌咽神経痛の症状がRAP食開始から4ヶ月後には改善し、1年9ヶ月後には痛みの発作が6ヶ月以上も連続して無く、治癒状態になった。
・三叉神経痛・舌咽神経痛と診断された場合、まず試してみる価値のある根本的な治療法としてRAP食は推奨できる。 その際は、身体各所の動脈プラークを経時的にモニタリングすることが有用と考えられる。

あとがき・・・・・
三叉神経痛・舌咽神経痛の本当の痛みは経験者でなければ解らないでしょう・・その痛みは耐え難く、仕事や日常生活・食生活にも支障が出る場合もまれではなく、根本的な治療法はあるのですが・・脳外科に入院しての手術が必要です。

 

でも、RAP食で「舌咽神経痛」が改善・治癒する可能性があるわけですから、トライしてみてはいかがでしょう。もし、このサイトをお読みいただいている方が医療関係者の方なら、患者さんに一度この症例の情報をお知らせ下さい。

この情報は脳外科の先生にとっても初耳に違いありませんので、現在脳外科やペインクリニックへ通院中の知人・友人はご存じないでしょう。

本人にとってはとても辛い痛みですから・・・この症例の存在を知れば、きっと真摯にRAP食と向き合って実行されるでしょう。

なお、スタチン剤を服用中の場合は本人の強い意志で中止していただきましょう。
(動脈硬化の未来塾52)) (動脈硬化の未来塾 68))

「家族性高コレステロール血症の方のご先祖が短命である」との話は聞いたことがありません。 スタチン剤を中止してLDLなどは上昇しますが・・決して、決して・・悪玉コレステロールが上昇した・・などと悲観しないで下さい。 それはある意味でマインドコントロール目的に造られた言葉です。信じる相手を間違ってはいけません。

また、カルバマゼピン(商品名:テグレトール)は服用しても、プラーク改善には問題ありません。

ほぼ完成型のRAP食に関しては「脳梗塞・心筋梗塞・高血圧は油が原因」(幻冬舎:2018年4月出版)を熟読下さい。
この書籍は軽く叩けば軽く響き、強く叩けば、強く響くはずです。



2018年6月19日 記載
真島消化器クリニック

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