脳梗塞・心筋梗塞の予防法

初期のRAP食中に頸動脈プラーク悪化を5回も経験したが、6年後には良好なプラーク退縮を達成し、RAP食(2023年)への進化に貢献できた1症例

マクロファージの仕事ぶり(異物の貪食能)を、生体内で直接観察できる唯一の方法・・それは、血管プラークの減少や増加を0.01〜0.02mmレベルで精密に測定できる血管エコー検査なのです。

MRIでは、プラークを0.1mmの精度でさえ正しく評価できません。

初期のRAP食では、脂質摂取量をある程度に減らせば、「マクロファージの貪食能は、常時一定量と考え、脂質摂取量がM-line以下ならプラークは退縮する」と考えていましたが、この発想は間違っていました。

マクロファージの貪食能は一定ではないどころか、腸内環境の良悪によって、天と地ほどの開きがあることに気付きました(後述)。

今回、初期のRAP食(2017年)を開始して4ヶ月後にプラーク悪化を経験し、その後も5回のプラーク悪化を経験するも、6年後には満足できるプラーク退縮を成し遂げられ、RAP食(2023年)への進化に貢献できた1症例を経験したので報告する。

「今回の報告に関連して、開示すべき「利益相反」関係にある企業はありません」

<症例> 51歳男性
<初診時の8カ所の血管エコー>

<家族歴>
父:61歳:他界(胃がん&脳梗塞

<初診までの経過>

  • 2010年頃 〜1年間だけ、健康に良いとの情報を信じ、“リンゴ酢”15ccを100ccの水で薄めて毎日飲用(動脈硬化の未来塾 132))
  • 2015年4月中旬 LDL=106 TG=178 HDL=55
  • 2016年11月中旬 通勤途中に背中の張り+ 、同日に会社の更衣室で一過性に意識消失(TIA)
  • 2016年12月中旬 会社の更衣室で一過性に意識消失(TIA) 脳MRI=異常なし
  • 2017年2月 高血圧(BP=150-160/ - )にて、アムロジピン(2.5)1開始
  • 2017年6月中旬 LDL=132 TG=122 HDL=61
  • 2017年9月中旬 近医で頸動脈プラーク:3mmを指摘。SAS(睡眠時無呼吸)あり
    「LDLを70以下にすべき」といわれ、コレステロール低下薬(スタチン剤)の服用を勧められるも保留。
  • 2017年10月中旬 当院初診
      体重57.3Kg BMI=19.1 食習慣点数=372点 

食習慣
甘いもの=大好き 肉=普通、野菜=普通、魚=普通、揚げ物=大好き、酒類=飲まない、運動=あまりしない、タバコ=喫煙歴なし」

その他:
特にお菓子類が大好きで、スナック菓子、チョコレート、ジャイアントコーン、鳥の唐揚げをよく食べていた。

<治療>

  1. エパデールS(900)2P,2x開始
  2. クロピドグレル (25)2T,1x開始
  3. ラックビー微粒N,2g,2x開始
  4. アムロジピン(2.5)1 継続

<結果>

1)左頸動脈分岐部のプラークが6年間で3.54mm→1.59mmへ退縮。

2)左右の頸動脈の経時的な変化

・写真3〜9におけるプラーク改善(退縮)、悪化の表現に関して。
期間3〜4ヶ月間でのプラーク治療効果の判定基準(動脈硬化の未来塾 117))

プラーク肥厚の減少 mm プラーク増減の表現
≧0.30 mm 著効
0.20〜0.29 mm かなり良好
0.15〜0.19 mm 良好
0.00〜0.14 mm 改善不良

プラークのIMTが≦1.00の場合は評価の対象とはしない。サイズが同じなら“不変”と表現。

プラーク肥厚の増加 mm プラーク増減の表現
≧0.30 mm 激しく悪化
0.20〜0.29 mm かなり悪化
0.15〜0.19 mm 悪化
0.01〜0.14 mm やや悪化

<経過の詳細>
・血管プラークの経時的変化 

年/月 2017/10 2018/2 2018/6 2018/10 2019/2 2019/6
左頸動脈分岐部* 3.54 3.16 2.91 2.75 2.99 3.27
右総頸動脈* 1.79 2.36 2.01 1.52 1.39 1.37

*=プラークの最肥厚部(mm)=max IMT

2019/10 2020/2 2020/6 2020/10 2021/2 2021/6 2021/10 2022/2
2.97 2.45 2.35 2.51 2.04 2.51 2.40 2.30
1.28 - 1.04 1.03 0.87 0.77 0.77 0.77
2022/6 2022/10 2023/2 2023/6 2023/10
2.09 1.99 1.80 1.79 1.59
- - - - 0.87

・LDLの経過

2017
/11
2018
/6
2018
/8
2018
/12
2019
/4
2019
/7
2019
/8
2020
/1
LDL 76 87 85 100 98 85 84 88
TG 113 99 97 116 120 105 83 123
HDL 60 57 58 58 58 53 54 60
2020
/4
2020
/7
2020
/8
2020
/12
2021
/2
2021
/4
2021
/8
2022
/1
LDL 106 100 120 109 106 109 97 122
TG 176 117 104 209 163 159 226 115
HDL 57 54 57 50 55 53 45 57
2022/9 2023/2 2023/7 2023/9
LDL 100 112 84 79
TG 142 106 110 92
HDL 52 66 57 64

・高血圧が完治
初診時(2017/10月)アムロジピン(2.5)1―服用中
2023年4月中旬にアムロジピン(2.5)1―中止。(血圧安定のため)
2023年10月現在で血圧は安定で、降圧剤の服用なし。

・SAS(睡眠時無呼吸)が完治
初診時(2017/10月)頃はSAS+であったが、2023年10月現在は、完治状態。

<考察>

  1. 初診日の2017年10月時点でのRAP食(2017)は、納豆1P/d、豆乳ヨーグルト100〜250g/dを推奨していましたが、2018年2月に右総頸動脈のプラークが、わずか4ヶ月で0.57mmも衝撃の悪化(1.79→2.36mm)。(写真3)

    この間のプラーク悪化の原因は、1日の脂質摂取量はかなり抑えたはずですが、納豆毎日1パック&豆乳ヨーグルト300g/d、2x摂取中でした。 (動脈硬化の未来塾 87))
    (原因は納豆や豆乳ヨーグルトの脂質量ではありませんでした)


    これらを控えることで、2018年6月にはプラーク改善が著効となりました(写真3)

    しかし、この期間の左頸動脈分岐部のプラークは、悪化は認められず、むしろ著効でした。(写真3)

    そのために、右総頚動脈のプラークが4ヶ月で0.57mmも激しく悪化した事実を真摯に受け止めていなかったために、その後に(動脈硬化の未来塾 122))という衝撃の症例を招いてしましました。

    これらの経験からも、プラーク退縮という治療が、今までの医学常識・健康常識が全く通用しない領域であることの証明でもあります。
  2. この症例は、その時々によって5回のプラーク悪化を経験していますが、その度に食習慣・生活習慣を修正し、プラークは改善方向へ進み、6年後の現在では、満足できるプラーク退縮を、やっと達成できています。 

    ちなみに、プラーク悪化の全ての原因は、現代医学の健康知識の常識では、健康に良いとする食品であるという事実認識は、医療関係者に特に共有していただく必要があります。
  3. 2019年2月(2回目の悪化)&6月(3回目の悪化)のプラーク悪化要因に関しては、Vit Cサプリ摂取、脂肪0ヨーグルトの過摂取など、様々な要因が重なっているものと考えられた。(写真4)(動脈硬化の未来塾 122))
  4. 2020年10月の4回目の悪化の原因は不明であったが、当院推奨のトコロテンへ変更したところ、2021年2月には著効となった。(写真5)(写真6)(動脈硬化の未来塾 134))
  5. 2021年6月 プラークが激しく悪化(5回目の悪化) 当時のRAP食(2021年)を提案。その後はRAP食(2022年)にて徐々にプラーク改善傾向になる。(写真6)
  6. 2023年2月 プラーク改善良好であった。(写真8)
    2023年6月 プラーク改善不良にて、RAP食(2023年)を指導(写真8)
  7. 2023年10月 かなり良好なプラーク改善を認めた。(写真9)

    この方は、若い時からの生活習慣・食習慣のせいで、あわや父親と同じ脳梗塞になりかけ、生活習慣・食習慣の変更のおかげによって健康を取り戻せたことになります。

    したがって、今後の初診の方は、RAP食(2023年以降)によって、RAP食(2020年)の結果(動脈硬化の未来塾 117))よりも、もっと良好にプラークが退縮するものと期待されます。

    確認ですが、採血結果と体重・血圧のみのデータで人体の安全管理を行うのは、危険です

 

<プラーク退縮に関して、なぜ激しく悪化? なぜ著効に?>
今までの多くのプラーク観察の経験によって、腸内細菌叢のバランスの良し悪しで、マクロファージの活性(プラーク貪食能)が0〜100まで比較的短時間で想像以上に大きく変動していると感じます。

例えばですが、普通の食習慣・生活習慣では、パワー50の貪食能で働いているマクロファージが、腸内細菌叢のバランスが崩壊すると、パワー0まで低下し(プラークが激しく悪化)、バランスが非常に良くなればパワ−100でプラークを貪食(プラーク改善が著効)しているような感動を得ています。

そもそも、脂質をどれだけ制限しても、プラークの原材料は脂質ですから、現代医学で正しいと信じられている「動脈硬化のメカニズム」が本当に正しければ、科学的に考えて、プラークが減ることは決してありません。

ですから、プラークが進行中の場合、スタチン剤で血液中のLDLをどんなに下げても、科学的・合理的に考えて、スタチン剤を飲むだけでプラークが減る道理はありません。

なぜなら、スタチン剤はマクロファージの貪食能を低下させる可能性はあっても、貪食能を亢進させる働きは認められていません。

<2箇所観察していて、1箇所のプラークは著効で、1箇所は激しく悪化・・・なぜ?>
仮説ですが、『腸内細菌叢のバランスが悪い状態では、マクロファージの貪食能力が低いけれども、動脈狭窄率が高度な場所にマクロファージを集中させようという指令が全身のマクロファージに伝わり、他の部位にプラークが多少堆積していても、その場所は腸内環境悪化状態による働き手不足(元気なマクロファージ不足)のために、放置され、プラークが急速に堆積する。

そして、腸内環境が整ってくると、急速に堆積した部位も緊急に貪食すべき部位にリストアップされて、プラークが急速に改善する。』

したがって、複数箇所の観察結果で、1箇所でもプラークが悪化するなら、何らかの修正点(腸内細菌叢のバランスの崩壊など)が存在すると理解した方が良さそうです。

このような、常識では考えにくい経験を2〜3例で経験した場合、その事実に真摯に向き合い、腸内細菌やマクロファージの生態に関しての動物行動心理学的な観察・・例えば、ファーブル昆虫記みたいな観察と検証を繰り返して、RAP食を進化させています。

<まとめ>

  1. 現在、我々はスタチン剤を飲まないRAP食(2023年)で、プラークを治せる時代に生きている。
  2. 腸内環境・腸内細菌叢への配慮が足りない2021年以前のRAP食を継続されている場合は、プラークが悪化する場合もありますので、巷の常識的な健康情報にはくれぐれもご注意ください。

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- レオナルド・ダ・ヴィンチ -
“ ちっぽけな確実さは、大きな嘘に勝る ”

2023年11月15日記載
真島消化器クリニック
真島康雄

 


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