脳梗塞・心筋梗塞の予防法

最新RAP食なら、3〜4ヶ月後には94%の症例で、プラークが0.15mm以上も退縮する。

はじめに:
RAP食は年々進化を重ね、現在では3〜4ヶ月で高率にプラーク改善が可能になりました。
今回、その治療成績を報告します。

しかしながら、同じRAP食を指導しているにも関わらず、その改善スピードは人によって “様々”であり、すべての人の動脈硬化を改善させるためには、その原因究明は極めて重要です。

そこで、その結果が“様々”となる原因を探るために、常日頃から摂取食品の種類や量を時系列で記録していますので、RAP食の守り方次第でプラーク退縮に違いが出るかどうかも検証しました。

対象と方法:
2020年の3月1日〜6月30日の期間において、RAP食を指導した新患の連続35症例(8カ所の血管エコー所見における「脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル≧3の症例)で検討。(後ろ向きの検討)。
27例はEPA製剤1800mg/日を服用。1例はEPA製剤の服用なし。7例は300〜900mg/日の服用であった。ラックビー微粒などのビフィズス菌製剤は全例に2.0g/日の服用が可能であった。スタチン剤を服用中であった2例は服用を中止していただき、全例をコレステロール低下薬(スタチン剤)offの状態で観察した。

観察期間は3〜4ヶ月間とした。内訳は3ヶ月観察=18 例、 4ヶ月観察=17 例。

なお、プラーク退縮の測定部位は、出来るだけ精密に誤差なく測定する必要性から、腹部大動脈プラークのIMT測定は評価から除外し、左右頸動脈、右鎖骨下動脈、左右大腿動脈のIMT測定で評価した。
症例ごとに、最も退縮が認められた1点を「プラーク退縮:max-IMT」として検討した。

「今回の症例呈示に関連して、開示すべき「利益相反」関係にある企業はありません」

『著効症例提示 症例. 45歳 男性』

写真1

<症例の要約>

  • 2015年1月 睡眠時無呼吸を家族に指摘受け、C-PAP開始。1/月 SAS外来通院開始。
  • 2019年10月 健診:TC=233 LDL=161 TG=224 HDL=46 BW=88.7Kg
     
  • 2020年6月中旬 当院初診: BW=82Kg BMI=28.4

<初診時の血管エコー>

8カ所の血管エコー(血管エコー実例・研究 1))
腹部大動脈IMT=3.34 mm((A-max)
右鎖骨下動脈=2.14 mm(S-max) 
右頸動脈分岐部IMT=2.22mm
左頸動脈分岐部IMT=2.31 mm
右総頸動脈IMT=2.36 mm
左総頸動脈IMT=4.27 mm(C-max)

右大腿動脈IMT=1.23 mm(F-max)
左大腿動脈IMT=0.47mm
**脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=4(0〜4)* T-max=10.98 mm **(備考:極めて危険なレベル)
脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル、T-maxに関しては(動脈硬化の未来塾 31))を参照。

初診時までの服用薬:なし

<治療>
1. イコサペント酸エチル粒状カプセル(900)2,2x 開始
2. クロピドグレル(25)1T,1x開始
3. ラックビー微粒N,2g,2x−開始
4. RAP食開始

<症例の結果>
3ヶ月でプラーク退縮:max-IMT=0.49 mmと、非常に良好なプラーク改善を認めた。(写真1)

  2020年6月中旬 2020年9月中旬
右鎖骨下動脈 IMT (mm) 2.14 → 1.65(写真1)
0.49 mm 退縮
右総頸動脈 IMT (mm) 2.36 → 1.99 (写真)
0.37 mm 退縮
左総頸動脈 IMT (mm) 4.27→ 4.04
0.23 mm 退縮

腰痛が改善中  BW=73Kgに減

<症例の考察>
本例は、グループX(後述)の1症例であり、当院の推奨通りにRAP食をお守りいただきました。

<全35症例のプラーク退縮成績のまとめ>
●:3〜4ヶ月後におけるプラーク退縮:max-IMTの変化を表1に示す。

1. 全35症例の94.3%において、プラーク退縮:max-IMTは0.15mm以上であった。
2. 全35症例の62.9%において、プラーク退縮:max-IMTは0.20mm以上であった。
3. 全35症例の42.9%において、プラーク退縮:max-IMTは0.30mm以上であった。

●:推奨食品の選択と摂取量の違いで、グループ分けを行ったところ、退縮効果に顕著な差が出ました。

1. 推奨食品の摂取およびその摂取量などでグループAと分類された群は、80.0%の確率で0.15mm以上の退縮を得られたが、0.2mm以上の退縮例は40.0%にとどまり、0.30mm以上の退縮例は0.0%であった。
2. 推奨食品の摂取およびその摂取量などでグループXと分類された群は、100.0%の確率で0.15mm以上の退縮、90.9%の確率で0.20mm以上の退縮、72.7%の確率で0.30mm以上の退縮が得られた。

<考察>

RAP食(血管エコー実例・研究 29))は紆余曲折を重ねながらも、正しい方向へ少しずつ進化していることが数字でも認められます。(動脈硬化の未来塾 34)) (動脈硬化の未来塾 69)) (動脈硬化の未来塾 100)) 
今までのRAP食は、1日の脂質摂取量に重心がおかれ、プラーク退縮効果にかなり貢献してきました。でも、臨床的には途中でプラーク退縮にストップがかかる症例や、途中で悪化する症例もまれではありません。
そのような事実を真摯に受け止めると、脂質摂取制限だけでは継続的な著効は望めないことが明白になり、免疫活性をさらに高めるためのRAP食へと進化しなければいけません。

「脂質摂取を減らして、自分では頑張った!」と勇んで受診されますが、プラークが減少していない場合があります。

そんな時、プラークを貪食して減らすのは“マクロファージ”です。「マクロファージのためにどんな努力をされました?」とお聞きすることがしばしばです。

表2の意味する最も重要な事は、グループAとXの間で、問診上での脂質摂取量の差はあまりありませんので、脂質制限以外のマクロファージ活性を上げる努力をされた方(グループX)が、単なる脂質制限に近い努力をされた方(グループA)よりもはるかにプラークが減った!という、にわかには信じがたい事実を見せつけられているのです(表2)。

例外もあるでしょうが、グループAに入るかグループX に留まるかは、本人のプラーク治療の“向き合い方”“心構え”の差で、摂取すべき食品の摂取の仕方に差が生じ、マクロファージの活性化に大きな影響が出たものと思われます。

このマクロファージの活性化に必要・不可欠なのが、7〜9mにもおよぶ腸管の腸内フローラの改善です。

**あとがき**
 同じ教科書で、同じ有名塾に通って、同じ先生の講義を聞いても、塾生間ではかなり違った成績が出ます。それは・・塾以外の時間に、塾の先生の“ここがポイント”という内容を素直に聞き、その教えを素直に取り入れて勉強しているかどうかが、大きく影響するのではないでしょうか。

人類は魚類から進化し、ネズミみたいな哺乳類の時代を経て、ほんの最近、自分たちに“新人類”という特別の名前をつけているだけで、魚類時代から今に到るまで気が遠くなりそうな混血を繰り返しています。 ですから、基本的な構造に関わる部分:動脈硬化に関しては、体質の相違は皆無に等しいと思われます。

また、家族性の高脂血症が動脈硬化に不都合なことなら、すでにそのような体質の生き物は滅んで、淘汰されていなければなりません。コレステロールが高いから薬を飲むなど、生物進化学という科学の物差しで考えれば、とても奇異に思えます。

そういう意味で、全ての人は、コレステロールを下げる薬に頼らず(動脈硬化の未来塾 113)) (動脈硬化の未来塾 52))、マクロファージに感謝の念を持ち、心を入れ替えればグループXに入ることができる筈です。

ざっとRAP食をかじっても、80%の人はプラーク改善モードに入れるし、悪化した人はいません(表2)。現在、科学的考察を基に研究中ですので、グループXの詳細の公表は控えさせていただきます。

2020年5月15日「天使が見つめる待合室」

2020年10月26日 記載
真島消化器クリニック
真島康雄

 


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