久留米市野中町の肝臓内科・血管内科・消化器内科・乳腺内科です。電話:0942-33-5006
頸動脈エコーが、最近やっと健診でも受けられるようになってきました。 でも、専門の医療機関での普及から15年以上も遅れています。
「今回の症例呈示に関連して、開示すべき「利益相反」関係にある企業はありません
2年間で頸動脈プラークが1.61mmから2.75mmへ増えた41歳の男性の未来は?
通常は、
標準医療の病院へ相談すると、スタチン剤を処方され、
『LDLを70以下まで薬で下げましょう。必要なら、コレステロール吸収抑制剤(エゼチミブ:ゼチーア)との合剤で強力にLDLを下げることもできます。
注射でLDLを下げる方法もありますが、
LDLをできるだけ内服薬で下げて、定期的に採血や頸動脈エコーを行ってプラークの進行具合を診ていきましょう。 』
“スタチンやエゼチミブでプラークが減りますか?”と、質問すると
『スタチンを飲んだからといって、プラークが減ることはありません。
プラークが進行して頸動脈狭窄率が進行すれば、脳梗塞のリスクが高くなるので、頸動脈のプラークを除去する手術やステント留置などの治療も可能です。』
などと説明を受けるに違いありません。
何れにしても、スタチンやコレステロール吸収抑制剤(エゼチミブ:ゼチーア)などの血中LDLを下げる薬を・・一生・・飲むことになるになるかもしれません。
スタチンは、短期的には筋肉痛や頭痛、動悸、他の様々な副作用もありますが、長期服用すると、膵癌や悪性リンパ腫のリスクが上昇するとの研究結果もあるので心配です。( 動脈硬化の未来塾-158)
当院の頸動脈プラークによる判定( 動脈硬化の未来塾-31))では、
頸動脈プラーク=1.61 mmは、リスクレベル=1(0〜4)ですが、
頸動脈プラーク=2.76 mmは、リスクレベル=4(0〜4)です。
レベル=4は、いつ倒れても不思議ではないレベルです。
さて、この43歳男性の選択肢は
・・・などでしょうか。
このケースでは、スタチンやエゼチミブなどでLDLを下げる標準医療ではなく、
5)の、進化したRAP食を踏まえた医療を選択されました。
その結果、
2年間で・・普通の生活をしながら、・・プラークが2.06mmまで低下しました。
LDLが低下したので、プラークが改善したのではありません。食事内容・生活習慣が良かったので、副産物としてLDLも低下していますが、マクロファージの貪食能がアップしたためにプラークが退縮したのです。)
(スタチン剤でマクロファージの貪食能をアップさせることはできません)
<症例の詳細>
症例 41歳 男性 住居:関東地域
主訴:健診の胸部CTで、冠動脈石灰化を指摘される。
<現病歴>
2018年10月 健診時、冠動脈石灰化を指摘される
2019年11月 TC=203 LDL=138 TG=65 HDL=43
2020年11月 当院初診
食の好み:
甘い物:好き、肉:好き、野菜:普通、魚:好き、揚げ物:普通
食習慣:
酒類摂取(―)、喫煙歴(―)
植物オイル摂取(―) 菓子パン3個/週---10年間 牛乳130cc/d---10年間
ナッツ類 10g程度を月に2回
魚:サンマ、ブリ、マグロの赤身などを 3回/週 程度
体重=56Kg 身長=166cm BMI=20.3(中肉中背)
<2020年11月初診時の血管エコー>
8カ所の血管エコー(血管エコー実例・研究 1))
腹部大動脈IMT=0.80mm(A-max)
右鎖骨下動脈=0.65mm(S-max)
右頸動脈分岐部IMT=0.72mm
左頸動脈分岐部IMT=1.61mm(C-max)
右総頸動脈IMT=0.36mm 左総頸動脈IMT=0.91mm
右大腿動脈IMT=0.72mm(F-max)左大腿動脈IMT=0.57mm
******脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=1(0〜4)****** T-max=3.78mm
<治療>
脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=1なので特になし
RAP食をゆるく指導。高品質のトコロテン130/d を推奨する程度。
<2022年9月:2年ぶりに受診時の血管エコー>
腹部大動脈IMT=1.15mm(A-max)
右鎖骨下動脈=1.00mm(S-max)
右頸動脈分岐部IMT=0.77mm
左頸動脈分岐部IMT=2.75mm(C-max)
右総頸動脈IMT=--- mm 左総頸動脈IMT=1.04mm
右大腿動脈IMT=0.67mm(F-max)左大腿動脈IMT=0.48mm
******脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=4(0〜4)****** T-max5.57mm
<治療>
2022年9月より、治療開始
<まとめ>
2年間で1.61→2.75mmへ進行した頸動脈プラークが、
スタチンを服用しないRAP食による治療によって、
2年間で2.75→2.06mmへ退縮した。
<考察>
このプラーク退縮という、現在でも稀な事と考えられている現象は、実は自然科学的な、生物学的なメカニズムで生じている筈です。
悪くなった・・よくならない・・よくなった・・と、結果だけ理解しても、「なぜ?」を追求しなければ医学の進歩はありません。
<今回の症例で教訓となる臨床経験はここからです>
今回の症例のプラークの改善過程の実際を表にしました。
年月 | 2020/11 (初診) |
2022/9 (治療開始) |
2023/3 | 2023/9 | 2024/9 | |
---|---|---|---|---|---|---|
左頸動脈プラーク(mm) | 1.61 | 2.75 | 2.73 | 2.49 | 2.06 |
教訓として、
2022年9月から2024年9月の2年間、順調にプラークが退縮したのではありません。(表)
治療開始(2022年9月)から最初の6ヶ月を経過した2023年3月には、プラークの退縮はほとんど認められませんでした。(上の表)
治療開始から最初の6ヶ月間は、当院推奨のトコロテンをほぼ毎日2個(260g)は食べていましたが、その他のRAP食の約束事を守れていませんでした。
また、世の中には「健康にいい」あるいは「安心・安全」と信じられている様々な習慣がありますが、その内の一つである “ある習慣”を変更していただきました。
今まで安心・安全・健康に貢献・などと信じられている様々な生活習慣や商品などでも、人によっては、プラーク退縮に逆効果の場合があります。
****今回の症例に関する感想****
●この症例の38歳から41歳にかけての食習慣(ライフスタイル)は、40代前半の普通の食習慣であったと考えられます。
しかも、頸動脈にプラーク=1.6mmは、60歳の男性の平均プラーク(mm)に匹敵し、RAP食はそれなりに理解をされていたはずです。
それでも、2年後には写真1のように急速なプラークの肥厚という結果を招いてしまいました。
血管エコーを受けていなかったら、危険を察知することもできず・・遠くない未来に、突然死・・あるいは、寝たきりや半身不随の状態となり、余生を過ごさねばなりません。
血管エコーを受ける事のない、採血(LDL、他)だけの健康診断は、ヒトの心臓や脳を守れる実務的な“健康診断”とはいえませんのでご注意ください。
(動脈硬化の未来塾 153))
採血結果だけで・・安心していると・・思わぬ・・多くの障害を背負うことになります(動脈硬化の未来塾 7))。 少なくとも、頸動脈エコーは受けるべきです。
●RAP食は単純な脂質制限食ではありません。
脂肪を制限するだけの食生活でプラークが減ることはありません、
例えばですが、油滴を含んだ雨が降り続けて凹地(細胞外に)に油が溜まったとします。
その凹地の油の塊は、雨粒の油滴が0になっても(脂質摂取を0にしても)、決して減ることはありません。
自然界では、誰かが物理的に除去するか、ある種の酵母菌やEM菌などが貪食(発酵)して減らない限り、凹地の油の量は減ることはありません。
人体内でのゴミ貪食(プラーク減少)の具合は、もっぱらマクロファージの働き次第なのです。
マクロファージを操っているのは腸内環境に住んでいる生き物達なのです。
いわゆる、生物学的なメカニズムの賜物でプラークが減るのです。
『何かを「食」しない事』、『何かを「飲」しない事』、『巷の健康情報を鵜呑みにして長く継続しない事』などの具体的な注意が極めて重要です。
***お知らせ**
●2020年1月以降に進化したRAP 食の内容は、書籍「脳梗塞・心筋梗塞・高血圧は油が原因」の増刷時に順次修正・加筆中です。
初版→第2刷→第3刷→第4刷→第5刷 へと、内容をそれぞれ少しずつ、公表できる範囲で修正を行っています。
なお、2023年以降に進化したRAP食の内容は、ホームページに記載はありません。
当院へ来院困難な方は、およそ6ヶ月周期のタイミングとなっている増刷本を、その都度ご購入いただければ、ホームページの情報よりも、より完成されたRAP食に出会えるかと思います。
僅かな修正・追記でも、人によっては大変重要な内容かもしれません。
2024年12月18日
真島消化器クリニック
真島康雄