脳梗塞・心筋梗塞の予防法

12年来の不眠症と、半年前からの神経痛が、RAP食で治癒したと思われる1症例

50歳前後から生じる不眠症は・・動脈硬化を疑う必要がありそうです。

でも、動脈硬化(血管プラーク)を現代医学では治せません。 動脈硬化の進行を抑制する(遅くする)ことが、コレステロール低下薬などの投薬の目標とされています。

100歩譲って、動脈硬化の進行が、たとえ薬でストップしたとしても、動脈硬化で生じる様々な症状は現状維持なのです。

でも、RAP食(複合的な内容を含む食事指導)に取り組むことで、プラークが減れば(動脈硬化が改善すれば)、不治の病が根本から治るなど・・夢みたいなことが・・普通に期待できます。

今回、結果的に動脈硬化が主な原因と考えられた“12年来の不眠症”が、RAP食で治癒したと思われる症例を経験したので、供覧します。

「今回の症例呈示に関連して、開示すべき「利益相反」関係にある企業はありません」


『12年来の不眠症と、半年前からの神経痛が、RAP食で治癒したと思われる1症例』

Case. 64歳 女性


(図)

プラークが退縮し、大動脈や右大腿動脈の石灰化まで退縮していることに着目ください。
石灰化も、コレステロール低下薬(スタチン剤)を使わない医療で治っています。(動脈硬化の未来塾 82))

(表)肩こりは・・動脈硬化の悪化や改善を・・最も敏感に・・体が感じる・・サインかもしれません。(肩こりがなくても・・プラークが肥厚している場合がありますのでご注意ください)

<主訴>
高脂血症・左坐骨神経痛

<現病歴>

  • 2007年7月 不眠症にて内服薬を開始。(2019年11月までほぼ継続して服用)
  • 2017年3月頃より、左臀部〜左足にかけて痛み出現。左坐骨神経痛といわれ正座が不能になる。
  • 2017年6月 TC=222 TG=117

<2017年9月 当院 初診>

TC=237 LDL=153 TG=208 HDL=44
他院より眠剤:ゾルピデム(10mg)0.25〜0.5T服用中

食の好み:
甘いもの:好き、肉:大好き、
野菜:普通、魚:好き、揚げ物:好き。
食習慣点数=959点(極めて高得点:得点は2018年4月出版の書籍を参照ください)


<2017年9月初診時の血管エコー>
8カ所の血管エコー(血管エコー実例・研究 1))
腹部大動脈IMT=2.42mm((A-max)
右鎖骨下動脈=1.38 mm(S-max)
右頸動脈分岐部IMT=1.53 mm (C-max)
左頸動脈分岐部IMT=0.95mm
右総頸動脈IMT=0.67 mm 左総頸動脈IMT=0.72 mm
右大腿動脈IMT=2.05 mm (F-max) 左大腿動脈IMT=0.64 mm
******脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=2(0〜4)****** T-max=6.88 mm

治療:
最新のRAP食を開始
1)エパデール(EPA製剤)900mgx2-開始、(スタチン剤:不使用)
2)ラックビー微粒N(ビフィズス菌製剤), 2g, 2x開始

初診後の経過(上表):

  • 2017年12月 初診から3ヶ月後:左臀部〜左足にかけて痛み+。肩こり改善中。
  • 2018年3月 不眠症+、肩こり改善、左足の痛み(―)、左臀部痛+、
  • 2018年6月 不眠症+、ゾルピデム(10mg)0.5Tを毎日服用中。
           左坐骨神経痛が完治し、正座も楽にできる。
  • 2019年12月 初旬から不眠がなくなり、眠剤不要になる。
  • 2020年1月末 血管エコー(上図&下表)

<プラークの経過>

血管の部位

2017/9 (IMT)

2018/3 (IMT)

2020/1 (IMT)

右頸動脈分岐部

1.53 mm

1.28 mm:改善

1.12 mm:改善(図)

腹部大動脈

2.42 mm

2.32 mm:改善

1.64 mm:改善(図)
右大腿動脈 2.05 mm 1.84 mm:改善 1.63 mm:改善(図)

プラークが退縮中。


結果:
1)2年4ヶ月後に血管プラークは退縮中。(上図)(プラーク退縮)

2)12年来の不眠症が2年3ヶ月後に完治。(上表)
3)その他、神経痛・肩こりの症状も改善(上表)

考察:
不眠症の原因として、小山文彦らによれば、「睡眠障害の程度が強い者ほど、前頭葉背側の血流量低下がしめされた 」としている。(“労働者の抑うつ、疲労、睡眠障害と脳血流変化-99mTc-ECD SPECTを用いた検討- 日職災医誌, 58:76-82, 2010 )

脳血流は、脳動脈にプラークが堆積すれば・・脳動脈の内腔は細くなり・・当然のごとく脳血流は低下します。

ただし、この変化は、いわゆる動脈硬化ですから、現状の医学では動脈硬化の本態であるプラークを減らすことは困難なので、永続的に脳血流は低下したままで、時間経過とともにプラークは進行し、血流低下の程度は増していきます。

したがって、脳動脈のプラークによる脳血流低下に起因する不眠症が、根本的に治ることは普通では考えられません。

つまり、ストレスが不眠症の原因なら、ストレスが解消されたら不眠症は治るでしょう。

でも、脳動脈のプラークが不眠症の原因なら・・・一生・・眠剤のお世話になることになります。

小山氏らの論文では、「うつ病寛解に伴う脳血流の回復を認めた」とも述べられている。

「脳血流回復に伴ってうつ病寛解を認めた」とも考えられますので、
脳血流を改善させる事ができれば・・“うつ病”も治せるかもしれません。

脳動脈が物理的に変化し(プラークが堆積し)、脳血流が低下したのであれば・・・

その場合に脳血流を増加させるために、最も効果的で根本的な方法は・・プラークを減らすことです。

当院で開発したRAP食と当院の指導をお守りいただくことで、実際に・・


脳動脈や頸動脈の高度狭窄が生じると、当然に脳血流は低下します。逆に、プラークが退縮し、狭窄状態が正常化すれば、脳血流は増加します(元に戻ります)。

また、


2012年3月のテレビ放送が非常に興味深く、記憶に残っています。
放送を再現すると・・「石田春香さん(48歳、仮名)の悩みは“不眠”。職場での慣れないパソコン作業がストレスとなって不眠(眠りが浅く)となり、1年後・・真夜中に・・突然激しい動悸・呼吸困難(空気がない感覚)、汗が噴出・・・10分で治り・・しかし、その3日後、夜中に激しい動悸・呼吸ができず・全身が痺れ・・この病名は:パニック障害。」・・といった内容です。

なぜ睡眠中に発作が起こったのか?・・名医の解説では・・「通常、睡眠中には脳内の酸素が減り、二酸化炭素が増えます。ストレスで過敏になっていた扁桃体は、これを危険が迫っていると勘違いし、動悸や過呼吸が起きてしまった。」とのことです。

しかし、睡眠中はただでさえ、脳内は酸素不足なのに、さらに脳動脈のプラーク肥厚により、脳動脈の血流が低下して、脳内の二酸化炭素が増えるような条件が加わって・・扁桃体は危険が迫っている! と、勘違いして発作が起こった・・とも考えられます(ストレスが本当の原因ではなく)。

石田晴香さん(仮名)の8カ所の血管エコー所見を確認できればいいのですが・・・。

もちろん、日頃のストレスも関係するのでしょうが・・
脳(扁桃体)が安らかな夜を過ごせるように・・・、脳動脈のプラークを減らして・・脳血流を元に戻す(増やす)ことが根本的な解決策でしょう。

おまけで、この方は神経痛まで治りましたが、“たまたま“ではありません。他の症例を参照ください(動脈硬化の未来塾 92))

まとめ:
40代後半〜の不眠症! その主な原因を“ストレス”として・・正しいのでしょうか?
この年代から年を重ねると・・全身の動脈プラークが急に増加しますけど・・・。

男女を問わず、高血圧や不眠症になられたら・・、降圧剤や眠剤の可否を色々考えることも結構ですが、血管の中の観察をしていただきましょう。そして、プラークを減らすことで・・元の・・薬が不要だった体に戻せるかもしれません。

詳しくは、「脳梗塞・心筋梗塞・高血圧の原因は油」(幻冬舎:12018年4月)をご一読ください。なお、RAP食に関しては、ヨーグルトの記述など、進化している部分がありますので、必ず当院のホームページで最新のRAP食(毎月進化中)の記述(血管エコー実例・研究 29))をご確認ください。

40代後半からの、“不眠症”“高血圧”“うつ病”の方・・“こむら返り”“肩こり”も主な原因は動脈硬化です。筋肉でさえ酸素不足になれば“痙攣”します。

まして、脳が“痙攣”しないわけがありません。

動脈硬化のステージにおいて、様々な症状があります・・・ご縁があれば、ご相談ください。

つぶやき:
野球の野村監督が永眠されました・・“虚血性心不全”・・プラークが多かったのでしょうね。残念です。ご冥福をお祈りいたします。

2年前に亡くなられた奥様も死因は・・“虚血性心不全”・・仲が良くて、いつも一緒なら、いつも同じものを食べ・・動脈硬化の進行具合も同じだったかもしれません。
(ID野球ならぬ、私のIDプラーク診療録より)

野村監督の「固定観念は悪。先入観は罪」、この言葉がテレビ映像で流れました。
早速、この言葉、日頃の診療で活用させていただいています。

固定観念、先入観は科学でしか破壊できません。監督は、野球を科学の目で見られていた証拠でしょう。

そのうち、将来の野球の監督は、すべて野村AI監督になるかもしれません。


2020年2月14日記載
真島消化器クリニック
真島康雄


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