久留米市野中町の肝臓内科・血管内科・消化器内科・乳腺内科です。電話:0942-33-5006
はじめに
新患の方のお話で、「LDLが高いから、すぐにでもスタチン剤を飲んでLDLを70以下に下げないと、突然死など危険な状態になります」との説明を受けて、不安になり来院される場合も多いです。
13年以上前の3〜4年間、私自身もスタチンを460名以上の方に投与し、プラーク退縮を目指していました。(多くの副作用を経験)
しかし、その経験から、脂質制限食に取り組まないでスタチンを飲むだけの患者さんは、ほとんどプラーク退縮の結果は得られませんでした。
その後、副作用のためにスタチンを中止した症例のプラーク改善が格段に改善した症例を目の当たりにして、スタチンの有益性に疑いを持ち始めました。
日々、血管プラークの増減に注視していないなら、Drでさえ気付くことのない事実です。
やはり、普通の食習慣・薬では、体重は低下しても・運動をしていても「一度できたプラークは減ることはない」これは全くその通りです。
今回紹介する心筋梗塞後の2次予防に関する論文は(非スタチン群とスタチン群に分けて検討:Am J Cardiol 2006; 97: 1165―1171.)、以下に要約されて詳細に記述されています。
・MUSASHI-AMI[PCIを施行した正常総コレステロール値のST上昇型急性心筋梗塞]
まず、この国内40施設(論文:MUSASHI-AMI, MUSASHI-PCIでは54施設)による研究は学会でも口頭発表され、メディアの記事にもなっています。
今回紹介の論文(MUSASHI-AMI)は前向きのトライアルで、追跡が確実に行われているでしょうし、生データは事実を表していると思います。
本論に入る前に皆様の、“物事の危険性に関する率直な感想” に関する質問です。
もう一問です。
ありがとうございます
皆様方の答えはどちらだったでしょうか? 正解はありませんが、どちらかに決めておいてください。
では、本論です。
論文の結論(著者らの見解)が出ているので、倫理上の問題から「2度と行えないだろう」、と言われている臨床試験の結果を報告した論文です。
*論文発表では54施設の参加(MUSASHI-PCI参加を含めた施設)、となっています。
ちなみに、MUSASHI-PCIは心筋梗塞に至る前にPCI(ステントなど)を受けた方での同様の試験で、同時期に行われています。
MUSASHI-AMIの結果を次の表にまとめました。(以下パネル:原著A)
先程の「サッカーチーム」、「交通事故を起こす車」の質問と同列でお考えください。
スタチン群は、実は「A国のサッカーチーム」であり、「A社が開発した車」という訳です。
「A国のサッカーチーム」や「A社が開発した車」を選択した人なら、誰でも、スタチン群が危険と思われる筈ですよ・・・ね。
サッカーの例えでは、サッカーに詳しくない人は、Bチームを選択した人も多いと思います。
A, B チームどちらの選手が負傷しても・・所詮・・他人事ですからね・・・・
でも、車の質問では、圧倒的にA 社の車に乗りたくないはずです。
車の場合は、他人事では無く、自分事ですからね・・・
でも、MUSASHI-AMIの論文の結論として、
それぞれの群間の有意差を検討して、以下のパネルとなっています。
しかし、生データを眺めた後に、結論を読むと・・
重大なイベントはスタチン群で増加傾向にあるのに、なんとも強引な結論への導き方ではないかと感じます。
決して他人事ではありませんので、空を眺めて結果を自分なりに見つめ直してください。
一納税者として
貴重な前向きランダム試験 MUSASHI-AMI の結果を独自に解析させていただきます。
論文では、「心血管死」例と「心筋梗塞」例、「脳卒中」例の扱い方が冷ややかに感じられます。
「それぞれの発生率に差はない」・・これでも十分に結論として強調される内容です。
この生データは十分信頼できます。
例えば、CORONA Study(虚血性慢性心不全患者に、ロスバスタチン 10mg群(2514例)とプラセボ投与群(2497例)に分けて無作為に投与。1次エンドポイントは心血管死+心筋梗塞+脳卒中とした。21カ国が参加。)があります
その結果が、2007年11月米国心臓協会学術集会で発表されましたが、
1次エンドポイントである心血管死+心筋梗塞+脳卒中の発症は、MUSASHI- AMIと同じで有意差なしでした。
ですから、スタチンを飲まなければ「突然死になりやすい」みたいな臨床現場での説明は不適切です。
そこで、自分なりにこの貴重な生データを、薬をなるべく飲みたくない側から解析してみます。(以下パネル)
スタチンが、冠動脈の病態へ直接関与しているかどうかを検討しました。
重篤な心臓の状態(心筋梗塞例+心血管死例)の発生率を検討すると、スタチン群が非スタチン群の5倍も多く発生し、統計学的には有意差はありませんが、有意の傾向にあります(p<0.1)。
つまり、症例を増やして同じ試験を続行すれば、重篤な心血管疾患の発生率がスタチン服用群で有意に増加する可能性があります。
次に、冠動脈や脳動脈への直接的なスタチンの影響を探るために、心筋ダメージも影響するうっ血性心不全(要入院)を除外して検討しました。(以下のパネル)
また、脳動脈のプラーク進展によると考えられる脳卒中例も加えました。
心血管死1人=狭心症1人と計算しても、
スタチン群、非スタチン群で、イベントの発生率に有意差はありません。
さらに、イベントの障害の重さに差をつけて検討してみます。(以下パネル)
以下、
うっ血性心不全(要入院)を除外したパネルに、重症度に応じて表のように加点して点数化しました、
両群間に全く差がありません。
そこで、今回の論文の総合結果の表(パネル:原著A)を、上記のような重み付けをして、表を改変すると、以下のパネルになります。
心不全(要入院)を加えた複合の一次ポイントのトータルで検討しても、有意差は無くなります。
重症度を加味して検定すると、スタチン服用の有益性がなくなります。
つまり、MUSASDHI-AMI試験の結果を別の観点から再検証すると、心筋梗塞後にスタチンを服用いただくための、絶対的なスタチンの有益性は存在しません。
そこで、以下の別の見解も必要かと思われます。
備考:不安定狭心症=心筋梗塞に移行しやすい狭心症の状態。
心筋梗塞=心血管死に移行しやすい状態。
=不安定狭心症の症状がなく、突然発症する場合もある。
付録:
同時期に、MUSAHI-PCI(急性冠症候群患者や安定狭心症患者にPCI(冠動脈インターベンション)を行なった患者に対して、スタチン療法の効果が検討された。
MUSAHI-PCIの結果:(日老医誌 2009:46:26-28 より引用)
○65歳以下では、スタチン療法によるイベント抑制効果(p=0.0195)が認められた。
●65歳以上では、スタチン療法によるイベント抑制効果(p=0.198)は認められない。
以上がMUSASHI-AMI試験・MUSASHI-PCI試験の結果です。
論文の結論とは、「客観的なデータ:事実」を基に、著者らの考えを踏まえた主張です。 同じ「客観的なデータ:事実」を基にした、別の見解による結論もありかと思います。
私は、弁護士ではありませんが、
生データを、T-max で得られた新知見で検証すると、以下の2点の解釈に誤りがあることを発見しました。
○特に、魚(EPA+DHA)摂取の影響の大規模疫学調査では、魚の摂取し過ぎは突然死が非常に多く発生している事実を無視して結論を出されていました。
「青魚が健康にいい食材」という先入観から、貴重な国家レベルの疫学調査結果から得られた突然死の数を考慮せず、誤った結論に導いた論文が存在します(動脈硬化の未来塾-94))。
○また、「塩分が健康被害の大きな原因」とする昔ながらの迷信を信じるあまり、データの解釈を誤った医学常識も存在します。塩分よりも、過剰な脂質が健康被害の黒幕であることを、過去の統計データは物語っていました。(動脈硬化の未来塾-32))。
当院のT-maxから得られたデータは、疫学調査の結論を再検証させる『原動力であり羅針盤』でもあります。
・・・・つぶやき・・・
○ただし、もっとより良い未来を目指すなら、
今回のMUSASHI-AMIで、スタチン群と非スタチン群では、重篤な心疾患の発生率に差がなく、むしろスタチン群に多い傾向が認められたことを倫理委員会で説明すれば、
今後の臨床試験に、プラークを減らせる脂質制限をベースとした食事療法(RAP食)+非スタチン群の介入試験が認められる可能性はまだ残されています。
その際に、頸動脈max-IMT(ラーク最大肥厚部位の高さ)の退縮を確認できれば、最高の介入試験になり得ます。結果は充分予測可能です。日本発の医学の進歩になり得ます。
○微生物が産生する物質と同じ成分の薬やサプリは・・長期に服用したくない・・生物が敵を倒すために作っている物質だから
青カビからペニシリンが発見されましたが、その青カビ(Penicillium citrinum)から遠藤氏は、1973年8月にコンパクチン(スタチンの原型)を発見しました(本人取材記事より)。
また、1979年2月に遠藤氏は紅麹からモナコリンK(ロスバスタチン)を発見し、特許出願。
スタチン薬とは、
青カビや紅麹などが、他の微生物の生命維持装置を損傷させる目的で作り出した生物兵器です。
それを、たまたま人間が発見して、薬と称して、人へ長期間投与しているのが現状です。
これらのスタチン物質は、
HMG-CoA還元酵素を阻害し、LDLの合成を妨害するのでLDLは確実に低下します。
でも、プラークはむしろ悪化します。 (動脈硬化の未来塾 52))
(動脈硬化の未来塾 128)) (動脈硬化の未来塾 130))
青カビなどの放線菌などはペニシリンや多くの抗生物質、抗がん物質・スタチン・プベルル酸なども産生しますが、・・それは・・人間のためではなく・・生存競争相手の微生物を攻撃・弱らせるためのものです・・基本的には生物毒なのです。
この地球上に生息するほとんどの生き物は、同じ基本構造で成り立っていますので、これらの微生物が作る毒物を継続して使用するのは、危険であることなど・・
医学の知識が無くても理解できます。
医学の知識が無くても、道理で考えれば・・・
*生きていて、自ら増殖する病原菌には→殺す目的の抗生物質で対抗するのは有効。
*生きていて、自ら増殖するがん細胞には→殺す目的の抗がん剤で対抗するのは有効。
*生きていない、ゴミ(プラーク)には→殺しても死なない相手に、微生物の産生物を使用しても無効。(ドン・キホーテが風車に槍を突き立て、痛い目に合う話と同じ)
スタチンを長期に服用すると、上述の理屈からして、細胞の活性が低下し、細胞膜が損傷を受け、老化・認知症・糖尿病や心不全が早く生じてしまうと思うのですが・・・。
皆様はどう思われますか?
<--レオナルド・ダ・ヴィンチ-->
“ ちっぽけな確実さは、大きな嘘に勝る ”
“ 視覚は数学の様々な部門を支配する。視覚による知識は最も確実なものだ ”
2024年8月6日 記載
真島消化器クリニック
真島康雄