久留米市野中町の肝臓内科・血管内科・消化器内科・乳腺内科です。電話:0942-33-5006
動脈硬化の原因はコレステロール・・この歴史的な常識が長く続いているために、コレステロールが少ないから良い食品・・良い油は多く摂取しても差し支えない・・・等々。
具体的には・・魚の脂や・・・オリーブオイルなどの油は健康にプラスになる油だから・・・多めに摂取しましょう・・・などが、現代の医学的見解である。
しかし、コレステロール0で脂質100%であるオリーブ油の頻回摂取で、急速にプラークが進行した症例(動脈硬化の未来塾 54))や、魚の脂の頻回・多食によって、急速にプラークが進行した症例(動脈硬化の未来塾 86))など、
全ての脂や油の・・過度の摂取はプラークを急速に悪化させ得る・・という事実が存在する。
今回、脂質含有が極めて多い食品(コレステロール含有0)であるピーナッツの頻回・過食によって、プラークが急速に肥厚したと思われる症例を経験したので供覧する。
「今回の症例呈示に関連して、開示すべき「利益相反」関係にある企業はありません」
症例 39歳 男性
(写真1)
<主訴>
2ヶ月に1回程度起こる胸の圧迫感(1分程度)&HDL高値
従兄弟が52歳で心筋梗塞に・・自分も心配
<現病歴>
LDL=113 TG=43 HDL=102(↑) TC=217(やや↑) 脂質異常症を認める
食習慣点数=826点 肉と揚げ物が大好き。
8カ所の血管エコーでは、脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=1(0〜4)
<治療>
<経過>
(写真2)
(写真3)
かなり長期のブランクがあったので・・・・サービス検査として・・8カ所の血エコーを施行。
(定期受診の場合は、退縮させるべき血管プラークを中心にフォローします)
<3回目の血管エコー結果>
(図1)
<考察>
1. 「16時間断食ダイエット」法を調べてみると・・確かに・・「絶食の時間帯でも・ナッツ類は食べていい」ことになっています。
でも・・よく調べてみると・・・ナッツ類を食べていい・・らしいですが・・・16時間の断食中の・・ナッツの食べ方も各人・・色々です。
ナッツのカロリーは高いので・・控えめに食べる方や・・職場に片手に乗る以上のナッツを持参される方・・などなど・・。
おそらく・・糖質=有害 のイメージが強烈なので・・脂質=無害 と思いがちなのでしょう。
(テレビなどで・・低糖質のコマーシャルは連日流れても・・・低脂質のコマーシャルは・・・ほとんど流れない)
・・今回の症例は・・・毎日ピーナッツ100〜200gを1年半も摂取していたのですから・・
・・ピーナッツだけで1日に脂質を47〜94g(カロリーで572kcl〜1144kcl)も摂取していました。
ちなみにピーナッツ1粒の重さは約1g (脂質0.47g)・・・10粒で・・脂質 4.7gもあります。
他に・・アーモンド100g中の脂質は49g・・・ピーナッツとほぼ同じです・・重さも1粒で約1g(脂質0.49g)・・
○○や△△が含まれているから・・・「いい食品」なので・・・と・・・栄養学的な・・軽い考えで・・・
アーモンドやクルミなどのナッツ類を・・・多く食べ過ぎないように!・・・細心の注意が必要です。
「16時間断食法」が・・オートファジー・・・ノーベル賞・・・若返り・・等々・・魅力的な言葉に惹かれ・・・「16時間断食法」の約束事が伝わらず・・・・一人歩きしているかもしれません。
「空腹」こそ最強のクスリ 著者の青木 厚 先生によれば・・・
「血糖を上げないもので、200kcalまでであれば、断食時間中に食べても構いません。特にナッツは不飽和脂肪酸やビタミン、ミネラルも豊富なのでお勧め」との取材記事がありました。(2023/2/28 LEE ホームページ)
ピーナッツのカロリーは100gで572kcalですから・・・
200kcalはピーナッツだと35g(35個)に相当・・・脂質は=16.45g(35 x 0.47)・・・多いですね
2.RAP 食における1日の脂質摂取量(推奨量)は、まだ暫定値ですが・・老人で20〜25g程度(昭和35年頃の日本人の平均:脂質摂取量は25g)、若者で25〜30g程度・・・と考えています(2023/5/30現在)
本症例のプラーク悪化は・・明らかに、脂質摂取過多が主な原因だと思われます。
(図2)
ここで注目すべきは・・・・・ピーナッツのコレステロール含有は0gですから(図2)
・・コレステロールは・・・血管プラークの構成成分ではない・・ということです。
また、オリーブオイルやエゴマ油のコレステロール含有は0g(図3)・・・なのに・・オリーブオイルやエゴマ油を頻回に多く摂取すると・・・・・
プラークが急速に肥厚します(動脈硬化の未来塾 76)) (動脈硬化の未来塾 48))・・つまり・・
そのような場合も・・プラークの構成成分は・・コレステロールではなく・・・脂質(脂肪)なのです。
(図3)
3. 本症例を、動脈硬化の指標として・・頸動脈エコーのみでフォローしていたら・・3回目の受診では・・・ピーナッツ過食の弊害にも気付けず・・
「プラークは特に問題ないので・・今のままの食習慣でも構わないでしょう」
・・などと・・・お話ししていたに違いありません。
右鎖骨下動脈の観察の有用性は、すでに報告済みです。
「脳梗塞、冠動脈疾患の予知における右鎖骨下動脈および頸動脈の内膜中膜肥厚計測の有用性」 超音波医学 2008年35巻 P:545−552
<まとめ>
→「ナッツ類には、良質な油が含有されているから・「健康にいい=良質食品」
これは間違いです。
人間は“欲深い生き物”です・・・そんなことを言われると・・・心理学上・・・
過剰な摂取に・・必ず・・走ります・・・そうすると・・・・
ナッツ類でも・・・即刻・・「プラークが肥厚する=悪質食品」・・となります。
→血管プラークの増減の視覚的な観察結果こそが・・・オートファジーの良悪(機能しているかどうか)・・・を科学的・臨床的に検証できる・・唯一の方法です。
→血管プラークが増悪しながら・・オートファジーで若返ることは・・絶対ありえません。なぜなら・・「人は血管と共に老いる」・・・この医学的事実は覆せませんので・・。
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<つぶやき>
そもそも、糖質制限ダイエットもそうですが・・ダイエットは・・人体の・・単なる見かけの改善・・・には貢献しますが・・・
ダイエットは・・・ヒトの血管病・・・特に・・脳梗塞・心筋梗塞・などの健康の安全管理の方法としては・・・不適で・・むしろ・・ダイエットを達成した安心感から・・油断が生じます
特に・・酒類や脂質を制限しない糖質制限ダイエットは・・極めて危険です。
(動脈硬化の未来塾 39))
2023年6月6日 記載
真島消化器クリニック
真島康雄