脳梗塞・心筋梗塞の予防法

“野菜のごった煮”摂取開始により、頸動脈プラーク・Cr・A1cが改善したと思われる1例。

現在は、様々な理由にて、食事を外食か宅配弁当で済ませる男性が多数おられます。

今回、8カ所の動脈すべての場所に、極めて危険なレベルのプラークが存在し、当時のRAP食を3年9ヶ月も指導するも、食事は外食や定期宅配の弁当に頼って生活されているためにプラークは退縮せず、むしろ悪化中であった77歳の男性の方で

心機一転・・クリニック推奨の、味噌味の“野菜のごった煮“をご自身で料理し、毎日2回(朝、夕)通常の食事に追加して食べ続けたところ、難治のプラークが継続的に改善し、1年後には明らかな退縮を認めた1症例を経験した。 

この症例は、さらに糖尿病・腎機能低下・高血圧などの症状も改善し、極めて有益な情報を含んでいると思われるので、今回ご報告いたします。

「今回の症例呈示に関連して、開示すべき「利益相反」関係にある企業はありません」

症例 77歳 男性
(写真1)

<現病歴>
2017年12月初旬 市の健診で、色々指摘された。A1c=6.4 Cr=1.16 ・・・禁酒開始
LDL=159 TG=174 HDL=45

2018年1月中旬 当院受診(初診)
 BP=142/72 LDL=162 TG=193 HDL=36 Cr=1.04
8カ所の血管エコー所見:(IMT=プラークの厚さ)
腹部大動脈IMT=4.71 mm---A-max
右鎖骨下動脈IMT=3.33 mm---S-max
右頸動脈分岐部IMT=2.19 mm
右総頸動脈IMT=2.20 mm
左頸動脈分岐部IMT=3.24 mm (写真1)----C-max
左総頸動脈IMT=3.06 mm(写真1)
右大腿動脈IMT=3.66 mm----F-max
左大腿動脈IMT=3.34 mm
*脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=4 (0〜4)
T-max=A-max+S-max+C-max+F-max=14.94 mm

<治療>
・初診時より、動脈硬化治療に関して
1.エパデールS(900)2P、2x開始
2.ラックビー微粒N,2g,2x開始
3.RAP食指導

<プラークの経過>
2021年10月初旬 血管エコー
右総頸動脈IMT=2.87 mm ---悪化
左頸動脈分岐部IMT=3.47 mm (写真1)---悪化
左総頸動脈IMT=3.10 mm(写真1)---やや悪化

2022年10月中旬  血管エコー
右総頸動脈IMT=2.45 mm ---改善
左頸動脈分岐部IMT=2.61 mm (写真1)---改善
左総頸動脈IMT=2.23 mm(写真1)--- 改善

<臨床経過> (図1参照)

<考察>
・RAP食を指導しても、なかなか実行できなければプラークは改善することなく、時間とともに悪化するのが常です。この方は、現役時代は仕事中心で活躍されていた方ですが、奥様の体調が急に悪化したために、食事は外食や宅配弁当に頼り、酒類の断酒は実行されたのですが、RAP食の諸々に関して、ほとんど守れない状況でした。

・そのような状況で、2020年5月から、当院推奨の高品質トコロテンを、1日260g摂取(朝130g+夕130g)で摂取開始し、4ヶ月後にはプラークが改善しましたが、8ヶ月後にはプラークが悪化に転じました。(図1)

・高品質のトコロテンを食べてはみたものの、断酒は継続しているものの、その他のRAP食をほとんど守れていない状況でしたので、当院受診から3年9ヶ月経過した時点(2021年10月)では、プラークの退縮は認められず、むしろプラークは進展しています。(写真1)

・2021年10月 受診者へ配布している当院資料の中で、味噌味の・・“野菜のごった煮の資料”を参考に、自分で毎日料理して、1日に2度、毎日のお弁当などはそのままに、“野菜のごった煮”を追加で食べ続けたところ、プラークが退縮し始め、1年後には明らかなプラークの退縮を確認できました。(写真1)

・RAP食において、積極的に摂取すべき食物のトップ2は、“高品質のトコロテン”& “味噌味の野菜のごった煮”であり、いずれも1日2回以上(ベストは3回)の摂取が望ましい。

・2021年10月以降のプラーク退縮に関して、それまで摂取していた脂肪0ヨーグルト60gの毎日摂取を中止して、普通のプレーンヨーグルト30gの隔日摂取に変更したのも、プラーク退縮に好影響だったと思われます。(図1)(動脈硬化の未来塾 122))

経験(血管プラークの増減の観察)上、ヨーグルト摂取を完全offにすると、プラーク改善がストップあるいはプラークが悪化し、プレーンヨーグルト30g/隔日摂取開始でプラークが改善しだす症例を多数経験しています。 

腸内環境に対する最適のヨーグルト摂取量は、非常に微妙なので注意を要すると思われる。
(プレーンヨーグルトは、牛乳製でも、豆乳製でも不問)

注)RAP食では、多くの症例の結果から、乳製品の脂肪0ヨーグルトは30g/日でもNGです。

・プラーク悪化に伴って低下した腎機能(Cr)も、プラーク退縮に伴い改善した。(図1)

・初診から、1年9ヶ月後には、A1c=8.8 と、糖尿病が悪化し・・薬物治療にても・・1年以上も安定しなかったA1c=6.0が、薬物治療はそのままで、野菜のごった煮を毎日2回食した以降は、プラーク退縮と共に、A1c =5.6 までに改善した。(図1)

・受診時の血圧に関して、初診時は142/72 と、やや高めであったが、不完全なRAPであっても、しばらくは血圧低下傾向にあったものの、プラークが最悪レベルに肥厚した2021年10月には血圧が130/78まで上昇した。 その後の1年で写真のごとくプラークが退縮すると、血圧も110/40に低下。(図1)

血圧の最低血圧が、最低レベルまでに低下したことは、心臓への負荷がかなり軽減しているものと考えられます。

・“味噌味の野菜のごった煮”が、プラーク退縮に大きく貢献したことは間違いがなく、野菜の食物繊維が腸内細菌叢へ好影響を与えたためと考えられるが、“味噌”中の成分が腸内細菌叢へ好影響を及ぼしている可能性も否定できない。なお、味噌の投入は、煮込み途中に行います。

<結論>
・プラーク治療目的なら・・“味噌味の野菜ごった煮”の・・ 1日に2回以上の摂取が・・非常に効果的である。(ベストは1日3回摂取)

・腎機能(Cr)改善や、糖尿病の治療、高血圧治療目的での食事療法においても、“味噌味の野菜ごった煮”の1日2〜3回摂取は、特別に推奨されるべきである。

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<つぶやき>
2011年7月 大学時代から親しかった同級生A君が「血管を見てほしい」とやってきた。
左頸動脈に2.9 mmのプラークがあり、当時の食事指導でなんとか・・2014年12月には2.4 mmまで退縮し、喜んで帰っていった。
その後・・受診が途絶え・・約8年後・・2023年3月…A 君が最近・・永眠したとの知らせ・・。 コロナ禍で詳細が全く不明・・・・・悪化に転じたプラークによる脳・心血管病では・・と・・頭をよぎるも・・今となっては、ご冥福をお祈りするのみ。

最近、コロナ禍の落ち着きとともに、数年ぶりの受診が急増中。
でも・・・プラークが悪化している場合と、プラークが更に退縮している場合があります。

1. プラークが悪化しているケースの特徴。
a)当院推奨の高品質トコロテンを食べていない。
b)昔ながらのヨーグルト摂取量(1日に60g〜100g〜200g)
c)脂肪0ヨーグルトを・・まだ食べている(1日30g以上)
d)当院のホームページをほとんど〜たまにしか閲覧していない。

a)〜d)を診察前に問診して、1個でも該当すれば・・・残念ながら・・経験上・・90%程度の確率でプラークは悪化しています。・・診察前にそのようにお話しし・・・結果が外れた記憶がほとんどありません。 

該当する方は、(血管エコー・実例研究 29))を詳細に閲覧いただき、今日からでもご自分の食習慣を見直してください。

動脈硬化(プラーク)を継続して退縮させ、それを維持するのは・・人によっては・・性格によるのかもしれませんが・・定期的なエコー検査をうけない場合・・極めて難しい・・と、感じるこの頃です。

プラーク治療の・・奥は深く・・経験上・・RAP食を・・「単なる脂質制限」・・との理解で・・自分なりに突っ走ると・・一旦プラークが改善したとしても・・多くの場合・・プラークが悪化することになります。

プラークが退縮した人も・・油断は禁物で、定期的な血管エコーが・・本当に必要です。

でも、この“つぶやき“は・・このページを閲覧しない人には届かない・・・・。

2023年3月14日 記載
真島消化器クリニック
真島康雄

 


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