久留米市野中町の肝臓内科・血管内科・消化器内科・乳腺内科です。電話:0942-33-5006
最近も糖質制限を勧める新聞記事などが見受けられるために、糖質制限食の危険性に警鐘を鳴らし続ける必要がありそうです。
当院に、過去に糖質制限(4ヶ月〜8年の期間)をした経験のある方が、2016年9月までに29名受診されました。2例は既に公開し「動脈硬化の未来塾(29)、 (46) 」、関連記事「動脈硬化の未来塾(39)、 (28)、 (9) 」も掲載していますが、今回も新たに2例を掲載します。
症例1:46歳 男性 糖質制限食 8年で脳梗塞を来した症例
2016年5月下旬の8カ所の血管エコー所見
食習慣点数=246点
経過:
考察:
上記の8カ所の血管エコー所見にて・・A-max=0.81mm F-max=0.58mm S-max=1.15mm C-max=1.38mm 私の脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=1 (0〜4)で一見安全域みたいに見えます。 私の基準は、血管のカーブ部、分岐部に最もプラーク堆積する場合を想定しており、それらの以外の直線的な血管(総頸動脈)を基準に設定していません。
40代の総頸動脈IMTの平均は・・集計していませんが・・経験値では 0.45±0.10mmです。 この症例の左右両側共の総頸動脈のIMT=1.38mm は同世代の人達と比べれば約3倍のプラーク堆積です。 糖質制限にも関わらずA1c値から・・血糖のコントロールが不良な状態と考えられ・・脳梗塞のリスクは充分にあったと推測可能です。
まとめ:
1)この症例は・・巷に流行の糖質制限食を8年間続け、6年目にはオリーブ油使用に傾くなど・・血管プラークを堆積させる食習慣によって・・脳梗塞を来した症例であることが強く考えられる。
2)この症例は38歳という若さで糖質制限食を開始したために・・糖質制限前のプラーク堆積が少なかったと想定され・・この症例では・・8年という長い歳月が・・脳梗塞までに必要でしたが・・50〜60歳以上の者が・・このような油もの、脂ものを制限しない糖質制限食ダイエットをすれば・・1〜3年以内に脳梗塞・心筋梗塞に・・数年後に認知症になる可能性が大になるものと考えられる。
症例2:68歳 男性 糖質制限食 10ヶ月で脳梗塞になりかけた症例
2016年9月中旬 初診時の8カ所の血管エコー所見ですが・・
家族歴;父:60歳 脳卒中で永眠
職業:医療関係者
食歴:2016年6月まで 朝はパン食:毎朝ロールパン+バター付けて。
& 毎朝牛乳コップ1杯+牛乳製ヨーグルト1個
アルコール歴:2016年6月まで・・ビール350+日本酒1.5号 6月からビール350x2
食習慣点数=363点
経過:
考察:
この症例は腹部大動脈が石灰化を伴うプラークにより、高度な腹部大動脈狭窄を認め、家族歴などからも、日頃からプラークが溜まりやすい食習慣(食習慣点数=363点)であったことがうかがえます。T-max=14.79 C-max=3.72 からも糖質制限をしないでも脳梗塞・心筋梗塞の前状態であったと思われます。
一連の経緯を鑑みれば、糖質制限食ダイエットが脳梗塞直前状態へ・・急速に歩を進めたことは明白です。
糖質制限食ダイエットの書籍を信じ・・それを実行したことは・・本人が医療関係者だからこそ・・医学の古い常識が・・血管プラークの把握のために・・全く役に立たないことを証明した症例と思われる。
結論:
糖質制限食ダイエットは血管プラークを急速に悪化させ、脳梗塞へのカウントダウンが加速される場合がある。
2016年9月22日 記載