脳梗塞・心筋梗塞の予防法

糖質制限食を続けているために、動脈硬化が急速に進行したと思われる1症例。

66歳 男性 62Kg  身長172cm BMI=21.0
5年前〜「ご飯を食べない糖質制限」を信じて実施中

家族歴. 母:40代後半で心臓弁膜症 で他界

好きな食品 牛肉・豚肉・馬肉・バラ肉・カルビ・クジラ脂身・霜降り肉・ロース肉・ヒレ肉・鶏皮・鴨肉皮・肉の脂身・ハンバーグ・ハム・サラミ・ブラベーコン・豚足・ホルモン・鳥のから揚げ・豚カツ・油炒め・・・菓子類はあまり好まない(普通)

アルコール:3日に1日程度・・ビール170cc+ウイスキー水割り1杯・・

食の好み:魚:好き  肉:大好き 野菜:好き  揚げ物:普通
運動:かなりやっている(体脂肪少ない) 食習慣点数= 205点

病歴:2005年5月に痛風+
職業:中小企業の社長

2015年7月初旬:かなり遠方から・・親しい友人の勧めにより・・8カ所の血管エコー目的で受診

結果:以下写真・・

C-max=1.18mm A-max=3.79mm F-max=3.32mm S-max=2.36mm
つまり・・頸動脈以外の血管にたっぷりとプラークの堆積を認め、脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=4 であった。

採血結果:Cr=1.17 LDL=150 TG=396 HDL=36 食前血糖=80

考察:
1)この方の・・頸動脈プラークは同世代の平均よりもかなり少なく・・頸動脈だけのエコーでは「全く問題なし」の判定が下されるでしょう・・・しかし・・・実際は・・いつ脳梗塞になってもおかしくない・・とても危険な状態なのです(以下の図)・・・・

2)Cr上昇=腎機能障害 は血管プラークが腎動脈に溜まって・・腎臓の濾す能力低下を招いたと考えられる。 したがって、糖質制限食により腎機能低下を来した可能性も考えられる。

3)今後はRAP食に変更されるので・・プラークが改善(動脈硬化が改善)すれば・・腎機能改善も期待できる。

4)血管プラークは、石灰化していないプラークが多く堆積して認められ、現在もプラークが進行中である・・と・・間違いなく推察される。

つまり、糖質制限食にて・・プラークが急速に進行中である・・と思われる。

5)TG・LDL高値は・・食事由来です。(食習慣が悪くてもLDLが正常である場合も多いですが)・・RAP食(Google検索下さい)にすると・・LDL,TG共に低下しますが・・LDLやTGが高値のままの場合もあり・・・それは体質ですから・・全く心配ご無用です。

6)LDLとHDLの比:L/H比>3 ですが、あくまでもL/H>3は悪い食習慣の結果です。 

L/H比が高い人に・・自分の食習慣を見直すような指導を行うのが、正しいL/H比の活用方法です。L/H比は単なる結果ですので・・決して・・食事指導無く・・薬(クレストール、リピトール、リバロ、等々のスタチン剤)で下げましょう・・という話にはならないと思います。

処方薬であるエパデールSなどのEPA製剤、ロトリガなど(EPA+DHA製剤)は決して、中性脂肪:TGを下げるためではありませんが・・プラーク堆積の可能性を考えれば服用は利益になります。・・RAP食しながらですが・・ (備考:RAP食とはプラーク減少を目的とし、食品の口への摂取制限・摂取推奨・を具体的に定めた食事法)

なお、RAP食へ舵取りした6ヶ月後に・・L/H比が下がらなくても・・高くても・・・悩むことは全くありません。

しかし・・ L/H比が低くて・・安心してもいけません・・

当院データで検討しました・・脂質改善薬を未服用で、脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=4であった、50歳以上の患者さん867人の集計データですが・・390人(45.0%)の人はL/H比が2.0以下でした。 一方、・・283人(32.6%)の人はL/H比が2.5以上と高値でした。

同様に・・脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=0または1であった、50歳以上の患者さん733人の集計データですが、・・・411人(56.1%)の人はL/H比が2.0以下でした。 一方、・・163人(22.2%)の人はL/H比が2.5以上でした。

つまり・・
動脈硬化がかなり進んでいる人でも・・・、45%の人は・・L/H比が2.0以下と低く・・・

動脈硬化があまり進行していない人でも、22%はL/H比が2.5以上と高いのです。・・・・・こんな不確かな数字に身を任せられますか?・・・

L/H比に一喜一憂は厳禁です・・8カ所の血管エコーという科学の目があればですが・・・

 

結論:
1)糖質制限食していて・・頸動脈エコー検査で異常なしだから・・・と・・安心してはいけません。・・決して安心させてはいけません。

2)現代は、血管病にやられっぱなしの・・戦いの最中・・・戦国時代さながらの状況です・・・信じる相手を間違えると・・とんでもないこと(寝たきりなど)になりますよ。

この症例のプラーク悪化の背景:
1)2010年から糖質制限食をやっている・・・ご飯を食べないので・・痩せるので・・豚カツなど・・肉や脂・油いため・揚げ物を意識して沢山食べていた・・・。 幸いにも肉は好きだし・・・

2)外食などで・・牛ステーキ:週に3回以上・・焼肉:週に2回…・・豚カツ:週に2回・・・など・・食していた!
肉を食べても太らないので・・・調子に乗って・・食べられたのでしょう・

私のつぶやき:
「医師が書いている糖質制限食を勧める書籍」を信じ・・・A1c低下や体重減少・・さらに体脂肪率低下・・に価値観を求める人達は・・その結果に心酔し・・ でも・・血管プラーク(動脈硬化)は粛々と進行し・・血管病で倒れれば・・会社は倒産。。。 家族と従業員・その家族の境遇は・・どんな状況になるでしょう・・・引き返すのは今ですが・・・

そのような人の・・目を覚ましてあげられるのは・・このサイトの理解者だけです。---この症例の人・・も親しい友人に勧められて・・半信半疑で来院。

このページはそんな説得の際に・・図をコピーしてご説明下さい。
明瞭な写真と正確なデータで示された・真実は・・・親しい人を・・魔界から呼び戻す力を・・充分に持っています。

書籍の「糖質制限食」が危険である・・という・・科学的データに基づいた理由・・・他のページでもご覧いただけます。

(参照1)  (参照2)  (参照3)

 

 

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