久留米市野中町の肝臓内科・血管内科・消化器内科・乳腺内科です。電話:0942-33-5006
2007年10月 53歳の女性の頸動脈を観たところ、C-max=1.8mm
S-max= 2.4mm と、年齢より動脈硬化が進んでいました。体重62Kg。
当時は「血管プラークの堆積予防にLDLをとにかく下げよう・・」「悪玉コレステロール:LDLは低いほどよい」とする考えが主流でした。
この方もLDLが高く血管プラークが堆積しているので、コレステロールの合成を抑えてコレステロールを下げる薬のリピトール(5)1,1xを開始し、詳しく食生活の指導をしました。
2ヶ月後にGOTが100以上に上昇してリピトール(5)1,1xを止めました。
同時にEPA製剤のエパデールS(900)2,2xを開始しました。
2008年11月には、LDL高値のままでプラークの改善が認められ、2009年5月からコレステロール吸収阻害剤のゼチーア(10)1,1xを開始。これも副作用(湿疹)のために6ヶ月で中止。エパデールS(900)2,2xは継続。体重62Kg。
2010年5月には、頸動脈プラーク= 1.3mm まで改善。この時、LDL=212 と高値のまま。体重65Kgと体重増加。
もし私が血管プラークを見ることが出来ない医師だったら・・・患者さんに大きな恐怖を与えたことでしょう。
2011年2月には、頸動脈プラーク= 1.2mm まで改善。しかしこの時、LDL=153 と高値のまま。体重65Kg。
2012年2月には、頸動脈プラーク= 1.0mm まで改善。この時、LDL=178 と高値のまま。体重66Kgと更に増加。
LDLが高いまま、そして体重も増えたのに血管プラークが改善したのです。
「LDLを下げないと血管プラークが改善しない!」・・と信じていませんか?
それは間違いです。
この症例や、このサイトに登場するプラークの改善例を見れば、{LDLの呪い}から解放されるでしょう。
このサイトの別のページ(参照1)の表をご覧下さい。
ご覧のように、T-max(参照2)が高い人も、低い人も、LDLの平均値は同じですし、肥満度(BMI)の値も同じです。
つまり、LDLや体重などは、動脈硬化の大きな危険因子ではない・といえます。
(ただし、この60歳以上のデータを男女別に検討すると、女性ではT-maxが高い人はLDLがやや高い傾向にありました。男性ではT-maxとLDLの関係は全く認められませんでした。)
LDLの悪玉説は疫学調査を拠り所にしていますが、T-maxとLDLの関係のデータこそがより科学的・直接的であることをご理解下さい。
また、T-maxと食習慣点数は大いに関係がありますので、大きな危険因子である食習慣(参照3)の質を変えれば、LDLや体重が増加しても血管プラークを改善させられる可能性があるわけです。
今回の症例は、その可能性を臨床症例で実際に証明したことになります。
1)LDLが高いままでも・体重が増えても血管プラークは改善しうる
(摂取カロリーではなく、飲酒・食習慣のきめ細かな質の改善が必須条件)
2)HDLが低下しても、血管プラークは改善しうる
3)エパデールS(EPAs製剤)がプラークの改善にプラスに働いているでしょう。継続服用が必要です
4)「A1cが低下した」「高血圧が安定した」「野菜を食べている」「運動している」「タバコを止めた」「塩分を制限している」「体重を落とした」「LDLが下がった」「HDL上がった」これらが治療の目標ではありません。動脈硬化関連疾患の治療の目標はプラークの改善なのです。
5)血管プラークをリアルに定期的に直視できれば,コレステロール低下薬の使用の必要性がより科学的になり、使用期間を短縮できるなど、医療費の節約になります。
脳梗塞・心筋梗塞になりたくない方、再発をしたくない方、認知症になりたくない方、肩こり・頭痛・めまい・いびき・胸の圧迫感・などなど(参照4)・ございましたら・・・ご相談下さい。
また、コレステロール低下薬を服用しているから・・と「安心している人」
A1cが下がったから・・と「安心している人」
血圧が安定した・・と「安心している人」
どうして自分が??という気の毒な結果になる前に、特にご相談下さい。