久留米市野中町の肝臓内科・血管内科・消化器内科・乳腺内科です。電話:0942-33-5006
日本で、コールドウエル B. エセルスティンDrの書籍(翻訳本:「血管をよみがえらせる食事」)が出版され、冠動脈血流の改善画像が大きくアピールされ、多くの方が購読され、すべての症例がそのような著効になるような印象を受けられているかもしれません。
そこで、エセルスティン氏の代表的な論文などから、その食事療法や治療方針や治療結果などを探ることにしました。(翻訳:Google 翻訳 )
その前に、エセルスティン医師とオーニッシュ医師は、2011年のCNNの番組で、クリントン元大統領の食事療法に影響を与えた2人の一人として紹介されています。

今回は、エセルスティン氏に関する記事となります。
(オーニッシュDr開発のスタチンなどの薬を使わないライフスタイル変更の治療法と、氏の特筆すべき業績は次回以降に掲載。RAP食は、Ornish 式治療法に近いですから、その研究結果は大いに参考になるでしょう。)
今回ご紹介するのは、エセルスティン Drの書籍の骨格となる論文です。
1. Esselstyn CB Jr, Ellis SG, Medendorp SV, Crowe TD. A strategy to arrest and reverse coronary artery disease: a 5-year longitudinal study of a single physician’s practice. J Fam Pract. 1995;41: 560-568.
論文タイトル:
『 冠動脈疾患を阻止し、改善するための戦略: 一人の医師の診療に関する5年間の縦断的研究 』



著効例の1例
5年間の、かなりの低脂質食&コレステロール低下薬でLDLは197mg/dl→65 mg/dlと低下、冠動脈の狭窄率が30%改善。


コールドウエル B. エセルスティンDrの論文に関して、
論文のポイント:
1)スタチン剤も使う低脂質食(5年間)による冠動脈狭窄の治療によって、
25カ所の病変の内、5カ所は悪化(20%)、14カ所が不変(56%)であり、明らかな冠動脈プラーク退縮と考えられる病変は僅か24%であった。
この結果は、初期のRAP食(スタチンも併用)による治療結果に非常に似ている。(動脈硬化の未来塾 148))
2)対象の11人全員が、試験開始前の過去8年間に、冠動脈イベントを経験していた(11人で合計37件のイベント発生)。
したがって、研究期間中の5年間に冠動脈イベントを1件も発症しなかったことは、冠動脈疾患の進行を阻止したことになる。
3)実は、対象の22人中の1名は、5年目の血管造影検査直後に、心室性不整脈で死亡。
ただし、血管造影所見では病変部の狭窄は退縮していた。剖検でも心筋梗塞の所見はなかった。
( 3)の記事はCleveland clinic journal of medicine Vol. 67 ・ No 8 2000 より )

エセルスティン医師の考え方を、もう少し詳しく知るために、氏の他の論文の著述を調べてみました。
以下のパネルはクリーブランド クリニック ジャーナルへの寄稿文です。

誌上において、エセルスティン Drの考えや主張が述べられています。

エセルスティン医師の考え、治療法(論文記載)をまとめると
1. 植物ベースの低脂肪食(カロリーの10%未満を脂質から摂取)と設定されているが、実際の脂質摂取量は不明。
おそらく、当時の米国の冠動脈疾患を有する患者の1日のカロリー摂取量は1700〜1800Kcal(他の論文から)程度であり、Ornish 医師のスタチン剤を使わない同様の試験の脂質摂取量と設定は同じなので、
1日の脂質摂取量は、
1年目は平均で13g/日、5年目は17g/日 程度であろうと推察されます。
卵、肉、魚、鶏肉、乳製品、植物オイルは禁止ですから、この食事療法は各種のサプリメント摂取が必要になるなど、ハードルがかなり高いと思われます。
ちなみに、昭和21年の日本人の脂質摂取量の平均は約15gです。
13〜17gの脂質摂取では、栄養失調になりかねません。
実は、初期のRAP食では、痩せすぎて困るケースが少なくありませんでした。
2. 食事療法の効果は、本(翻訳本)のタイトルほどの効果は認められていない。(結果を参照)
初期のRAP食の効果と同様で、臨床医として満足できる結果ではない。
確かに、各種の動脈硬化による諸症状は改善、あるいは症状の進行停止は望めるかもしれないが、安心できる程度のプラーク退縮効果は出ていない。
3. 脂質低下薬を用いない低脂質食が、冠動脈狭窄を改善させるか?という比較試験を行った論文(Ornish ら 1990 Lancet )の結果(プラークは退縮する)を追認した論文となった。
4. エセルスティン医師は、クリーブランド クリニックのジャーナル(Vol. 67 ・ No 8 2000)誌上で、『テレビなどは高脂肪食を積極的に宣伝しており、流行のダイエットなどは、脂肪やたんぱく質を増やすことで減量と健康増進を約束していたりする・・・これらは、有害な食品環境だ』と述べています。このご意見には大いに賛成です。
5. 総コレステロールが150mg/dl 未満になるように、スタチン剤などは使用するスタンス。
*******私の感想*********
・低脂質食(1日13〜17g程度の脂質摂取)や薬でTCを150以下に下げても、25カ所の病変(プラーク)の内、血管造影所見上では5カ所(20%)は悪化、14カ所(56%)は不変、6カ所(24%)が退縮であった。
この成績は、初期のRAP食(スタチン剤を許容し、脂質摂取低減を主体とするRAP食)の成績にほぼ同じ。(動脈硬化の未来塾 148)) あまり、いい成績ではありません。
・プラークの原因は、TCやLDL増加によるマクロファージの泡沫細胞化であり、TCやLDLが減ればプラークが小さくなる・・・これは、従来の動脈硬化のメカニズムを踏襲した考え。
考察として、食事や薬でLDLを下げれば、泡沫細胞の密度が上昇しないかもしれないが、減るメカニズムの説明がなされていない。
・脱脂乳と無脂肪ヨーグルトは許容していますが、RAP食では少量でもNG食品です。
・医学ジャーナルで述べている“流行のダイエットなど“とは何でしょうか? 日本では今でも流行しています。
この部分の著述には大賛成です。
・エセルスティン医師は、食事療法でTCが150以下に低下しない場合は、スタチンなどのコレステロール低下薬を使用するというスタンスですが、スタチンは副作用も多く、使う必要はないと思います。
(Ornish医師も、低脂質食でライフスタイルを変更するならば、スタチンは不必要だと述べています)
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次回からは、プラントベースの低脂質食を骨格としたライフスタイルの変更が、冠動脈狭窄などの動脈硬化を改善させるということを、比較試験で証明した米国のオーニッシュ医師の業績を紹介します。
多くの人に元気と希望を与えるOrnish Drの業績の数々を4回に分けて掲載予定です。
2024年9月29日
真島消化器クリニック
真島康雄