脳梗塞・心筋梗塞の予防法

当院での2023年1月からの新患連続11症例の詳細---その4

はじめに
プラークを計画的に治せる医療がこの世に存在するという事を、視覚を根拠として知っていただくために、動脈硬化の未来塾148)に掲載した症例の詳細を提示いたします。

今回は、症例4です。

「今回の掲載に関連して、開示すべき「利益相反」関係にある企業はありません」

<症例4: RAP 食によるプラーク退縮治療の結果(4.5ヶ月後)>

写真1を供覧

<エコー写真の専門的な解説>
初診時の腹部大動脈のプラークは、非常に低エコーで、内部の密度が非常に高いことを意味します。すなわち、プラークが現在進行形で増大中の所見に矛盾しない。

つまり、スタチン服用中にも関わらず、プラークは増大中であると推察されます。

4.5ヶ月後の同部のプラークは等エコー(グレイ調)となり、マクロファージによるプラーク貪食のおかげで、プラーク内部の密度が低下していることを意味する所見です。

写真2を供覧

<エコー写真の専門的な解説>
初診時の左内頸動脈のプラークは、全体的に等エコーで、内部に密度が高いことを意味する低エコー部分を認めプラークが現在進行形で増大中の所見と思われる。

4ヶ月半後の同部のプラークは等エコー(グレイ調)となり、マクロファージによるプラーク貪食のおかげで、プラーク内部の密度が低下していることを伺わせる所見です。

症例4の詳細

59歳 男性  住居:九州地方

<主訴> 心臓バイパス手術を受けているので、血管プラーク肥厚が心配

<現病歴>
2008年12月 胸の違和感を感じる様になる
2009年12月 狭心症があり精査し―心臓バイパスOP(関西地方の大学)を受ける
退院以降の処方薬:ジルチアゼム(100)1.1×+バイアスピリン(100)1.1× のみ
         (LDL高くないのでスタチン処方なし)
2022年5月上旬  TC=182 LDL=97 TG=111 HDL=63
2022年7月上旬 〜 ロスバスタチン (2.5)1T,1x 開始
         (LDLを70以下に下げようとのことで)
2022年11月上旬 〜 軽い“うつ症状”出現、(スタチン開始から4ヶ月後)
デパス+パキシルの短期服用で改善。
2022年12月上旬  デパス+パキシルの服薬中止。

2023年1月下旬 知人の紹介で当院受診

<2023年1月下旬 当院受診>
○現在の服薬:
・ジルチアゼム(100)1.1×
・バイアスピリン(100)1.1×
・ロスバスタチン(2.5)1T,1x

体重75.0Kg BMI=22.6 BP=132/86 P=79(整)

○現在の症状:眠りが浅い

<初診時の8カ所の血管エコー>
右頸動脈分岐部IMT=1.16 mm
右総頸動脈IMT=0.56 mm
左内頸動脈IMT=2.42 mm---C-max
左総頸動脈IMT=0.72 mm
右鎖骨下動脈横断IMT=1.08 mm---S-max
腹部大動脈IMT= 3.00 mm---A-max
右大腿動脈IMT=0.41
左大腿動脈IMT=0.58--F-max

脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=4(0〜4)

<食習慣>
食習慣点数=345点 (200点以下が好ましい)
高点数の背景:
「脂質の多い菓子類、脂質の多い魚&肉類、揚げた菓子類、揚げ物なども好き」

<食の好み>
甘いもの:普通、肉類:好き、野菜:好き、揚げ物:好き魚:好き

<生活習慣>
●タバコ:喫煙歴(+:20〜59歳:2-3本/d) 2ヶ月前から禁煙中。
●酒類:ビール700cc/d
●炭酸水 普通の500ccを---週に2回摂取
●ナッツ類:ミックスナッツなど : つまみ100g/m2
●パンにマーガリン--週に1回
●納豆:普通サイズ--週に2パック
●ヨーグルト:100g--週に1個
●玄米食:月に1回(無農薬かどうか不明)
●鯖缶―月に1回
●ノルウエーの塩鯖―月に1〜2回
●菓子パン、味付きパン:月に1個
●生玉ネギ(スライス)食:月に3-4個
●牛乳―180ccを 月に2回

サプリメント:摂取(-)

<治療>
○服薬
・ジルチアゼム(100)1.1×---継続
・バイアスピリン(100)1.1×---継続
ロスバスタチン (2.5)1,1x-→中止
・イコサペント酸エチル粒状カプセル(900)1,1x---現処方に追加で開始
・ラックビー微粒N,2g,2x---現処方に追加で開始

○RAP食指導
  <治療結果>4ヶ月半後の変化 (写真1&2)
○プラークの変化
・腹部大動脈IMT=3.002.69 mm(4.5ヶ月でのプラーク退縮―写真1
・左内頸動脈IMT=2.422.31 mm(4.5ヶ月でのプラーク退縮―写真2

<この症例での考察・教訓>

1. LDLを眺めていても、病魔を察知することはできない!
●LDLが低くても、心筋梗塞の一歩手前までになっていた
●LDLを更に70以下まで下げようとスタチンを服用しても、プラークは改善された形跡が見られない。むしろ、プラーク進展中の所見あり(プラークの内部エコー所見から)。
スタチン服用4ヶ月目に、うつ症状出現し、服薬で改善も、眠りが浅くスッキリしない。

・スタチン剤の効果は、LDLではなく、視覚で確認されなければならない。

2. 本症例の心臓バイパス手術に至る動脈硬化進行に関与した生活食習慣は?

●犯人がLDLではないことは確かです。
  高血圧(―)、糖尿病(―)、中肉中背 です。

●食の好み:肉類:好き、揚げ物:好き、魚:好き 食習慣点数≧200
真犯人は食の好み & 何気ない生活習慣の中に必ずいるはずです。
正解のヒントは私の書籍(第4刷、第5刷)&私のホームページをくまなくお読みください。

「ご注意:第5刷では第4刷に5カ所の修正を行いました。RAP食の進化に伴い、私の書籍はバージョンアップ中です。動脈硬化という犯行の犯人は一人ではありません。
多くの共犯者とその協力者がいて、その一人一人を容疑者としてリストアップし、特定するには数年の裏付け捜査が必要です。ソフトウエアのバージョンアップ同様に、書籍のバージョンアップにご理解ください。
なお、より新しいRAP食の情報を得たい場合は、現時点での最新版(第5刷)のご購入をお勧めいたします。

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<参考資料>
以下の表は動脈硬化の未来塾 148)に掲載の、症例一覧(表4)です。
今回の症例は Case No 4) です。

<--レオナルド・ダ・ヴィンチ-->

“ 視覚は数学の様々な部門を支配する。視覚による知識は最も確実なものだ ”

“ ちっぽけな確実さは、大きな嘘に勝る ”

2024年8月15日 記載
真島消化器クリニック
真島康雄

 


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