脳梗塞・心筋梗塞の予防法

当院における久しぶりの受診(7年以上)の症例、血管プラークは? -その2

はじめに
ガンの研究では、ガンの早期発見・早期治療のために、ガンの自然史に関する研究は数多く存在しますが、頸動脈プラーク(max-IMT)を5年以上に渡って経過を追えた研究・報告はかなり少ない。

しかも、血管の8カ所を同日に観察し、7年以上経過後にも8カ所の血管エコーでそれぞれの血管プラークの経過を観察しうる状況は、今後も想定し難く、そういう意味では学術上極めて稀少性の高い事実確認の情報かと思われます。

今回は、8カ所の血管エコーを受けて、8〜9年ぶりに再受診された3例に関して、血管プラークの変化をご報告いたします。

「今回の掲載に関連して、開示すべき「利益相反」関係にある企業はありません」

 

『症例4. 提示』

症例4 68歳 男性・・・脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=4(0〜4)でした。

2014年12月診察時点の食習慣、他:
食習慣点数=215点
甘いもの=大好き、肉=好き、野菜=好き、魚=好き、揚げ物=好き、酒類=好き
BMI=20.0 父:84歳で脳梗塞

久しぶりに受診の9年2ヶ月後はどうなったでしょう。

コメント:
○腹部大動脈の特にプラークを認めなかった部位に、プラークが4.48mmも堆積。
プラークの状態から、最近の数年間に増大したプラークと思われる。

○右頸動脈の石灰化は肥厚し、一部の内膜が破壊され空洞化(石灰化の下部まで血流が侵入)している。
ただし、この現象は珍しくなく、経験上では危険性は感じられない。

教訓:
○LDLが94と低く、健診では太鼓判を押されていたかもしれない。
消化器科でも、循環器科でも腹部大動脈はエコー検査の際に、チェックされるべき部位である。
(実際、腹部大動脈瘤の早期発見の意味もあり、心エコーや腹部エコーの際にチェックされている場合も多いが、内部のプラークを詳細に観察されているかは定かではない)

○食習慣点数が415点と高値であったので、油断するとプラークがたまりやすい食習慣であることの自覚が足りなかった。

○プラークは進行していますが、まだ高血圧は指摘されていません。
血圧測定は動脈硬化の早期診断には向いていません。血管エコーが必要です。

『症例5. 提示』
症例5 49歳 女性・・・脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=0(0〜4)でした。

2015年8月 時点の食習慣、他:
食習慣点数=145点
甘いもの=普通、肉=普通、野菜=大好き、魚=大好き、揚げ物=好き、酒類=普段は飲まない
BMI=19.7 母:58歳で脳梗塞に、後遺症なし

久しぶりに受診の8年6ヶ月後はどうなったでしょう。

コメント:
○右大腿動脈の部位が最もプラークの堆積スピードが速いが、頸動脈のプラークの進行はほとんど認められない。

○もしスタチン剤を服用していれば、LDLは低下していたとしても、もっとプラークは進行していたかもしれません。

教訓:
脳梗塞リスクレベル=0 であったので、「今までの食習慣で構いません」とお話ししていましたが、8年経過して脳梗塞リスクレベル=1(0〜4)になりました。これからは注意が必要です。

脳梗塞リスクレベル=0であっても、40代であっても、4年後には8カ所の血管エコーを受けた方が良さそうです。

○プラークは進行していますが、まだ高血圧を指摘されていません。
血圧測定は動脈硬化の早期診断には向いていないようです。血管エコーが必要です。

頸動脈プラークの進展速度が遅いからといって、そのことが全身の、特に脳や心臓の血管の進展スピードが遅いとは限らない。頸動脈以外の動脈プラークも観察すべきである。

『症例6. 提示』
症例6 56歳女性・・・脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=2(0〜4)でした。

2016年6月 初診時点の食習慣、他:
食習慣点数=947点
甘いもの=大好き、肉=大好き、野菜=好き、魚=好き、揚げ物=大好き、酒類=大好き
BMI=24.1 母:78歳で脳梗塞

久しぶりに受診の9年6ヶ月後はどうなったでしょう。

コメント:
8年間で、IMT=1.14mm程度→IMTが2.48 mmと2倍以上に肥厚。
ただし、頸動脈プラークは8年間で1.31→1.72mm と僅かの肥厚にとどまっていた。

この症例は、8年の間、LDL=161→-------→150とやや高めで推移も、プラーク肥厚の原因は生活習慣にあると思われた。

教訓:
脳梗塞リスクレベル=2 でも、8年もすれば、さらに進行した脳梗塞リスクレベル=2(0〜4)に。

○最初の受診での食習慣への注意・指導がなければ、今までの食習慣から、恐らく脳梗塞リスクレベル=4まで進行していたはずです。

○プラークは進行していますが、まだ高血圧は指摘されていません。
血圧測定は動脈硬化の早期診断には向いてないようです。高血圧の原因はプラークですから、
 今後・・高血圧へ移行するかもしれません。

『プラーク(動脈壁肥厚=動脈硬化)の原因が高血圧』=『天動説』ではなく、『高血圧の原因がプラーク(動脈壁肥厚=動脈硬化)』=『地動説』なのです。

頸動脈プラークの進展速度が遅いからといって、そのことが全身の、特に脳や心臓の血管の進展スピードが遅いとは限らない。頸動脈以外の動脈プラークも観察すべきである。

 

今回のまとめ
○長期の動脈プラークの観察において、臨床的には総頸動脈の内膜・中膜肥厚(IMT)の進展具合をもって、動脈硬化の進展具合として評価することはできない

7年以上の長期観察では、総頸動脈IMTはさほど変化せず、他の部位(動脈の屈曲部や分岐部など)にダイナミックにプラーク(IMT)が肥厚する症例がほとんどである。

○初診において、脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=0〜1であっても、4年以上の無血管エコー状態では危険である。

 

***** つぶやき ******

『視覚的な動脈硬化の早期診断が重要・・・動脈硬化(プラーク)は治せる病気だから』

○『プラークが減る』とは?・・世の中が?・・なのか・・私が?なのか・・

2回目の診察以降に、処方いただいている地元の先生のコメントをいただくことがあります。

しかし、『プラークが明らかに0.20〜0.40mm退縮していても、プラーク退縮へのコメントではなく、LDLがRAP食で30も低下したことへの感謝と驚きの感想』をいただくことがあります。

思わず・・「エッ・・そこですか?」・・と、つぶやく・・のでした。

つい最近、関東から来院いただいた患者さんによると、2カ所のクリニック・1カ所の大病院の循環器科の担当医は、口を揃えて「一度できたプラークは減ることはない」と、おっしゃったそうです。

ですから、
実は、共診いただいている担当の先生は「プラークの退縮の所見を、現実として信じていただけていない」かもしれません。
あるいは、『プラークが減る事よりも、LDLが低下することが極めて重要』と、お考えなのでしょう。

皆様は、どう思われますか?

一方で、
患者さんの受け止め方でも、地元の患者さんで、私の書籍をご存知ではない患者さんの場合、
『プラークが0.20mmも減りましたよ! よかったですねー』と、話しかけても・・浮かぬ顔で・・
『先生、LDLが上がっていましたよ・・・心配です・・いいんでしょうか』との反応が返って来ます。

そんな時は、天動説の時代の過去にタイムスリップして、
『天動説の価値観をお持ちの方に、地動説での測量結果』を説明しているような感じとなり、心が折れる思いがします。

現代の動脈硬化に関する世界標準の医学は『天動説』を採用しています。
私の動脈硬化理論が『地動説』であるという説明は
(動脈硬化の未来塾 13)) (動脈硬化の未来塾 7))を参照ください。

動脈硬化仮説の世界標準:「医学の常識」が変わらない限り、

かかりつけのDrに「プラーク退縮よりもLDL低下に感謝され」

一般の患者さんには『プラークが退縮してもLDLが低下しないので不安がられる』のでしょう。

実は・・『プラークこそが動脈硬化の根本原因-であり・・その原因が食・生活習慣』=地動説
なのです・・・。
(動脈硬化の未来塾 7))

<注意>
頸動脈プラークによる中等度以上の狭窄があるにも関わらず、コレステロールを下げるお薬(スタチン剤)のみを処方され、EPAやEPA+DHA製剤などの比較的安全に服用できる抗血小板効果がある薬(いわゆる血液サラサラ薬)を処方されていない場合が多々あります。

現代医学の学説(天動説)が真実ならば、理屈上はスタチン剤の単独処方は正しいのですが、その学説が間違っていれば、そのようなスタチン剤だけの処方で、頸動脈プラーク(1.8mm以上)を経過観察していただくことは非常に危険であると言わざるを得ません。

もし、スタチン剤がプラークを減少させるなら・・・スタチン剤を頻繁に処方しておられる先生方が、口を揃えて「一度できたプラークは減ることはない」と、おっしゃるはずがありません。

脳梗塞・心筋梗塞を予防するにはプラークを減少させる必要があるのです。
スタチン剤だけで、「LDLが下がっているから・・」と・・・決して安心してはいけません。

<--レオナルド・ダ・ヴィンチ-->

“ ちっぽけな確実さは、大きな嘘に勝る ”

“ 視覚は数学の様々な部門を支配する。視覚による知識は最も確実なものだ ”

2024年7月21日 記載
真島消化器クリニック
真島康雄

 


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