Dr.真島康雄のバラの診察室

クリニックの「バラ庭」の歴史

1997年、当時の自宅(現クリニック)南側が開発にかかり、自宅の雑木の庭(20坪)が死にたえると思い、駐車場にもなるからと60坪の土地を購入。でも、本屋さんで柳生博氏の雑木林の書籍「風景を作る人 柳生博」の内容に強く感銘を受け、新緑と紅葉に包まれ、ブットレアを生垣にした雑木&宿根草の花園・・のイメージの庭にしようと決意し、45坪のすり鉢構造の庭舞台を自分で設計。
下は、22年前(1998年2月17日)の工事中の風景。 

中学・高校時代は当時流行していたサボテン栽培に没頭。実生、接木から3畳ほどの手作り温室まで作成するなど、自他共に認める園芸少年でした。

1998年10月にはメグスリノキ、ヤマモミジ、ツリバナ、アオモジ、シラキなどの平地でも紅葉が美しい樹木を吟味して植栽。紅葉と新緑が美しい雑木林とブットレアの庭が完成。(下写真)

そして、1999年春〜初夏にかけては近所の子供達が、庭周りで乱舞する蝶をつかまえに度々やってくるほどになりました。

バラは嫌いでした。
1995年頃から雑誌ビズは購入して愛読していましたが、バラの記事には全く興味がなく、ページを開けることさえありませんでした。
なぜなら、「バラには虫がつきやすく、病気に弱くて消毒しないと育てられない代物」。「棘があるから仏壇に供えてはいけない。」などと、もっぱらの常識になっていて、子供が扱える植物ではない・・つまり、子供心に「好ましからざる花」との印象が大でしたから。

でも、1999年春・・平田ナーセリーで、スタンダード仕立てのブルー系の現代バラ“ショッキング・ブルー” が目に留まり、その香りが花屋さんで嗅いでいた「寂しい感じの酸っぱいバラの香り」ではなく、なんとなく「心地よい、いい香り」だったので購入。
でも、蕾の7割はしおれて開花しませんでした。

鉢をひっくり返して調べても根腐れはなく、この現象は何?・・購入したナーセリーで質問しても原因不明でしたが、観察を続けていると、小さなバラゾウムシ(正式には和名:クロケシツブチョッキリ)が原因であることに気付きました。当時はインターネットもなく、情報は書籍のみですが、その書籍ですら、被害の状況を簡単に記述してあるだけで、すぐに殺虫薬の散布の話に移ります。

また、バラの病害虫の専門書には「施設ではほとんど発生を見ない」とも記載されており、バラゾウムシは薬で死に絶えているのか、毒薬の匂いで近寄りたくないのでしょう。

蕾がしおれる原因がはっきりしたので、「病気に強く、香りがいいバラ」との情報に惹かれ、1999年の夏にイングリッシュローズのカタログを取り寄せたところ、普通の現代バラでは感じられないエレガントな姿に興味があり、最初は8鉢ほどの鉢バラを購入、その中に“ヘリテージ”がありましたが・・・その香りの素晴らしさに脳が完全に魅了されてしまったのを、今でもはっきり覚えています。

思案の末、1999年秋から冬にかけて、2000年ビズ・ガーデン大賞への応募に向けて庭の大改造に着手しました。

その結果、2000年春の庭の写真を応募し、2000年12月号でビズ・ガーデン大賞を受賞致しました。

 

 

以下は・・イングリッシュローズを主体にした庭への模様替えを決断して、半年後の庭の風景です

 

 

 

 

イングリッシュローズに関しては、カタログがボロボロになるまで勉強して、バラの全てを知ったつもりでいました。

でも、ガーデン大賞の副賞でいただいた夫婦での「英国庭園巡りのツアーへの招待」で訪れた英国で、脳がクラクラするようなカルチャーショックを受けました。

2001年は運良く、全英で日本文化紹介事業「英国における日本年Japan 2001」が5〜6月に行われており、私たちのツアーには特別の計らいがあった模様で、満開のオールドローズの秘密の花園を貸し切り状態で散策できました。ティータイムへのご招待があったそうですが、私の頭は別世界に迷い込んだみたいに・・バラと、名札と、香りのチェック&ノートに筆記で忙しく・・忘れられない時間を過ごせました。

特に作業小屋への、古びた塀の・・すこし開いていたドアをはいると・・風の動きがなく、濃厚なバラの香りに全身が包まれました。“シーガル”も“カザンリク”も格別の香りがありました。
この作業小屋の空間は、ビズのエルシングホール特集号でも紹介されたことがなく、この庭をプロヂュースしたピータービールス氏の書籍にも、調べ得た範囲では紹介ありませんでした。

「バラは見上げるバラが素晴らしい」 イングリッシュローズの開発者であるデビッド・オースチン氏の言葉ですが、・・・日本の桜もバラ科の花・・・桜も見上げる桜が素晴らしい・・ことは、言うまでもありません。・・・オールドローズの葉は山桜の葉に似ており、花びらが散りゆく姿も同じです。

クリニックのバラ庭に影響を与えたバラの書籍達。特に、ピーター・ビールス氏やデビッド・オースチン氏の書籍はバイブル的存在。原書の4−5冊はロンドン市内とケンブリッジの大きな本屋で2001年のツアーで買い求めたものです。

特に、PETER BEALS 氏の「CLASSIC ROSES」(上段中央)の書籍は、ターシャ・テューダーの愛読本ですが、彼女はデビッド・オースチンのイングリッシュローズも褒め称えています。

デビッド・オースチン氏は、書籍の中で、イングリッシュローズの作出にあたり、動機として「農薬散布が不必要な病気に強いバラで、しかもオールドローズのエレガントさを残した、四季咲きで、香りが素晴らしいバラ」を作りたかった・・と、述べています。

実際に、イングリッシュローズは「うどんこ病」に強いので、農薬は全く必要ありません。

2001年秋 紅葉は手前から ブルーベリー、ヤマモミジ(黄色)、メグスリノキ(赤)

モテスフォント・アビーやエルシングホールなどで体感した香りが忘れられず、つるバラの代表格として選んだオールドローズの“ポールズ・ヒマラヤン・ムスク” を小屋の屋根に這わせました。
(2012年に、にっくき鉄砲虫被害で枯れました。)

ちなみに、屋根には「どこでもネット」(「バラの診察室」書籍参照)を張り巡らしています。

2021年の庭で紹介した“ポールズ・ヒマラヤン・ムスク”は再チャレンジの株。

毎日、キジバトやスズメの姿に癒されています。餌台は猫のジャンプ力以上の高台に設置。キジバトは地面を歩く習性があり、道路で目ざとい猫の被害にあうことも・・。

  • 2005年4月11日 NHK の「素敵にガーデニングライフ」で庭が放映されました。
    (石澤アナウンサー.担当)
  • 2010年5月 「Dr 真島のバラの診察室」出版

  • 2012年5月13日 東日本大震災のチャリティー・オープンガーデンを開催。当時の庭の様子。
    (初めてのオープンガーデンでした。現在、オープンガーデンは行なっていません)
  • 2012年4月 「完全オーガニック バラ栽培」出版
  • 2016年4月 「バラのお悩み解決帖」出版… 虫害予防&テッポウムシ被害防御の決定版

2010年11月末 待合室からの視界。

  • 経験では、太陽光が葉に当たり、その反射光が目の網膜へ当たる角度が・・120度となる場合、最も紅葉が映えます。
  • 待合室から見る白木は、朝日でも120度、夕陽でも120度の角度になり、鮮やかな色に染まります。

  • 今の所、毎年の雪化粧が1日くらい見られますが・・いつの日か、雪が積もらなくなるかも・・・

次回は、バラのオーガニック栽培(微生物や虫が嫌がる代物や殺菌剤や殺虫剤などの毒物を散布しない方法)が、本当に私以外でも実践可能かどうか、夢みたいなバラ庭は誰にでもできるという、その実例をご紹介いたします。

2021年6月21日 記載
真島消化器クリニック
真島康雄

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