脳梗塞・心筋梗塞の予防法

当院での2023年1月からの新患連続11症例の詳細---その2

はじめに
プラークを計画的に治せる医療が存在するという事を、視覚を根拠として知っていただくために、動脈硬化の未来塾148)に掲載した症例の詳細を提示いたします。

今回は、症例2です。

「今回の掲載に関連して、開示すべき「利益相反」関係にある企業はありません」

<症例2: RAP 食によるプラーク退縮治療の結果(4ヶ月後)>
写真1〜2を供覧

症例2の詳細

症例64歳 男性  住居:九州地方

<主訴>:
腹部大動脈瘤を指摘された

<家族歴>
父:71歳:くも膜下出血で手術 腹部大動脈瘤+。老衰で他界(83歳)。
母:誤嚥性肺炎で他界(83歳)

<現病歴>:
2015年5月 腹部大動脈瘤(前後径=3.1cm)を指摘される
(2020年まで腹部大動脈瘤=3.1cmは不変)
2019年9月 頭部MRI=脳動脈瘤(1mm程度)の指摘あり
 アトルバスタチン(5)1T, 1x/日―服用開始
2020年12月 腹部大動脈瘤(前後径=3.1cm:5年間増大なし)
2021年12月 腹部大動脈瘤が増大(前後径3.2cm:1年で1mm増大)
2022年1月 高血圧にてアムロジピンOD(2.5)1T 開始
2022年10月 腹部大動脈瘤が増大(前後径3.5cm:1年で3mm増大)
 LDL=135 TG=172 HDL=60 L/H比=2.25
2022年11月初旬 アトルバスタチン(5)1T 服用中止(動脈瘤増大にて本人希望) 2022年11月初旬 頭部MRI=脳動脈瘤:著変無し
2022年12月下旬 LDL=161 TG=162 HDL=54 L/H比=2.98
2023年1月初旬 当院受診
 服薬:アムロジピンOD(2.5)1T,1x中
 体重55.5Kg BMI=21.7 BP=134/82 P=64(整)
 症状:睡眠時無呼吸(40歳から)こむら返り(50歳から、時々+)

<初診時の8カ所の血管エコー>
右頸動脈分岐部IMT=1.07 mm---C-max
右総頸動脈IMT=0.61 mm
左頸動脈分岐部IMT=0.94 mm
左総頸動脈IMT=0.46 mm
右鎖骨下動脈IMT=1.69 mm---S-max
腹部大動脈瘤(前後径)= 3.6 cm
右腸骨動脈IMT=5.05 mm(部分解離+)
左腸骨動脈IMT=8.09 mm---A-max
右大腿動脈IMT=1.58 mm 左大腿動脈IMT=1.70 mm ---F-max
 脳梗塞・心筋梗塞リスクレベル=4(0〜4)

<食習慣点数>
363点

<食の好み>
甘いもの:大好き、肉類:普通、野菜:嫌い、揚げ物:大好き、魚:普通

<食歴>
○タバコ:20〜50歳まで40本/日、その後0本/d
○酒類:飲まない
○菓子パン:1〜2個/日---20年間
○黒にんにくor 生にんにく----週に4回…50〜60歳の10年間摂取
○飲むヨーグルト各種を毎日摂取(1日合計で150cc)----50〜60歳の10年間
○豆乳ヨーグルト300gを、週に3回摂取----50〜60歳の10年間
○ホエイプロテイン 200cc 1/週 で摂取―2〜3年間

サプリメント:
○エビオス錠、亜鉛錠

<治療>
○服薬を開始
・イコサペント酸エチル粒状カプセル(900)2,2x---開始
・ラックビー微粒N,2g,2x---開始

○RAP食指導(菓子パンを禁止、他)

<治療結果>
○プラークの変化
・右大腿動脈IMT=1.58→1.33 mm(4ヶ月でのプラーク退縮―写真1
・左腸骨動脈IMT=8.09→7.47 mm(4ヶ月でのプラーク退縮―写真2
腹部大動脈瘤(前後径)= 3.6→3.5 cm

○身体的変化
・血圧 134/82→110/56
・LDL 161→131 (「紅麹」の服用なし)

<この症例での教訓>
1)スタチン剤では動脈硬化(動脈瘤、プラークなど)の進行を防げない。
・スタチン剤を服用開始後に腹部大動脈瘤が増大
・スタチン剤を服用開始後に、血圧上昇にて降圧剤が開始となる。

スタチン剤の効果は、LDLではなく、視覚で確認されなければならない。

2)本症例の動脈硬化進行に関与した可能性のある食習慣として、
・50歳までの喫煙40本/d、
・50歳〜60歳までの各種ヨーグルト
・豆乳ヨーグルトの過剰摂取(乳酸菌の過剰摂取)
・50歳〜60歳までの黒にんにくor 生ニンニクの摂取

・若年〜64歳(現在)までの菓子パン摂取(毎日1-2個/日)などが考えられる。

・50歳〜の健康意識への高まりが、逆に動脈硬化を普通以上に進行させてしまった可能性がある。

------理由は、『動脈硬化の未来塾』の各項目を参照ください----

****つぶやき****

○最近、サプリの「紅麹」服用によって、死亡あるいは重篤な健康被害に遭われた症例が多く報告されました。 LDL神話を信じ、健康に注意していたために・・・逆に被害に遭われました。

「紅麹」服用の動機は明らかです。
パッケージの文言につられ、LDLをサプリで下げたいと願うからです。

それもそのはず、一般住民・会社の健診ではLDLが高ければ食習慣の変更や服薬を指導され、LDLを下げるように求められます。(サプリでLDLが下がるなら・・と、考えるのは自然です)

「紅麹」調べてみました。

ある総説「(健康維持・補完代替医療素材としての紅麹)西谷真人、稲垣 雅 日本補完医療学会誌 第6巻 第2号 2009年6月」によれば

「 スタチンは、遠藤 章 博士が1973年に青カビからスタチンの原型であるコンパクチンを発見。1979年には紅麹から2番目のスタチン「ロスバスタチン(モナコリンK)」を発見した・・・」と、記載あり。

ですから、「紅麹」には天然スタチンが含まれているそうです。

その天然スタチンですが、紅麹の常用量だと、医薬品のスタチンの常用量の1/5程度の量に相当するだろうと言われています。

ですから、スタチン剤で副作用が出る人は、「紅麹」サプリであっても、同様の副作用が出る可能性があります。**天然成分が有益**という迷信は崩壊しました。

私のLDLは平均よりかなり高値です。
ですから、同じ体質の方が被害に遭われていると思うと、身内の不幸のように感じられます。

お亡くなりになった5名(報道による)、入院された100名以上の方は、この10年間のある時期に、保健師やDrにスタチン剤の服用を勧められ、「薬には抵抗があるので・・」、「サプリなら・・」との思いで・・何らかの体調不良にも関わらず・・「紅麹」を継続して頑張って服用されたのかもしれません。

○スタチンによる動脈硬化治療の現況
2004年以降の2重盲検試験である臨床試験N Engl J Med 2008; 359:529-533 (大規模臨床試験 ENHANCE 試験:米国)では、薬の効果の評価として、継時的な血管エコー(視覚)所見での確認が採用されました。

結果として、
LDLをスタチン剤や、エゼチミブ(コレステロール吸収阻害剤)で強力に下げても、 **** スタチン剤では、プラークは減らない ***ことが確認できました。 動脈硬化の未来塾 42)

超一流雑誌に掲載された二重盲検(被験者が何を服用したのか、主治医や検査者、被験者も知らない状態)による大規模な臨床試験で、

スタチン剤ではプラークが減らない(エコー=視覚による確認)のに、どうして脳梗塞や心筋梗塞が予防できるのでしょう? この際、目を覚ましましょう。

世界のスタチン市場規模は、2022年は149億米国ドル(2兆2350億円)とされ、今後の予測では、2028年までに181億ドルに達すると予測されています。

でも、そこにはダークな部分も存在します。
www.jstage.jst.go.jp > article > jln > _pdf > -char

もしこのタイミングで、RAP食ベースの「EPAあるいはEPA+DHA製剤」+ラックビー の服用による、大規模な二重盲検試験を行えば、

その結果(:LDLを下げなくてもプラークは退縮する)を受けて、スタチンの存在意義の拠り所であるRossの学説(動脈硬化のプラーク肥厚に関するメカニズム)が間違いであることを立証可能です。

そうなれば、
スタチン薬は副作用もあり、悪いイメージもあり、『EPA製剤』、『EPA+DHA製剤』の日本発の医薬が、スタチン薬の世界市場を丸ごといただくことが可能になります

そして、医学の新たな進歩にも貢献するでしょう。

幸い、2007年から17年間かけた動脈硬化治療の予備試験は完了しています。
夢は持ち続けましょう。

<参考資料>
以下の表は動脈硬化の未来塾 148)に掲載の、症例一覧(表4)です。

- レオナルド・ダ・ヴィンチ -

“ 視覚は数学の様々な部門を支配する。視覚による知識は最も確実なものだ ”

“ ちっぽけな確実さは、大きな嘘に勝る ”

2024年4月2日記載
真島消化器クリニック
真島康雄

 


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